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41.薔薇園3

 突然、ソーサーに添えていた左手の婚約指輪から閃光が走った。

 あまりの眩しさに、思わず目を閉じる。


「うわ!!何?!」


 目を閉じても、先ほどの光がチカチカする。

 物凄く強烈な光だった。

 婚約指輪に雷が落ちたのかと一瞬思ったが、外は晴れていたし建物の中にいる。だからきっと大丈夫なはずだ。

 それに、もし雷に打たれていたのなら、今頃私は死んでいる。


 え?!また、私……もしかして、死んじゃった?

 二度目の転生?


 とりあえず、目を開けて今の状況を確かめないといけない。

 でも、光のインパクトが強すぎて、怖くてなかなか目が開けられない。

 しばらく目を閉じたまま、光の残像が消えるのを待つ。


 チカチカがようやく収まったように感じたので、覚悟を決めて恐る恐る目を開けると……、 目の前に見慣れた懐かしい顔が映った。


「ローラン!?」


 なぜだか分からないが、ローランが目の前に立っていた。


「リジー!!」


 自分の名前を呼ばれて、思わずソファから立ち上がる。

 瞬間、ローランが強い力で私を抱き締めた。


「え?!……ローラン!?……本物?……」


 目の前のローランが、まだ本物かどうか分からなくて、抱き締められた腕をもがきながら解き、ローランの顔をじっと見た。

 そして、ローランの頬や身体をペタペタと触る。


「リジー、何してるの?本物だよ。ローランだって」


 ローランがニコニコと笑う。


 あれ?私、夢を見ているのかな?

 ここは天国?……やっぱり、私、死んじゃった?


 今度は自分の身体をペタペタと触ってみる。肉体は存在している。

 心臓を押さえてみた。ドクドクいっている。


「あ、私、生きてるみたい……。私、リジーだ……」


 よかった、まだ死んでなかった……

 そう思った途端、全身が脱力して膝から崩れ落ちそうになったが、すぐにローランが私を抱き締め、支えてくれた。


「リジー、大丈夫?」


 息がかかる距離でローランに顔を覗き込まれ、思わず息を止めて頷いた。

 私の顔を見て笑ったローランの笑顔を見て、目の前に突然現れた人がローラン本人だと実感した。


「わぁ、よかった!本物だ!ローラン、会いたかった!」


 私はローランの背中に両腕を回し、首元に顔を埋めた。

 ローランは優しく頭を撫でてくれる。その手が本当に心地良かった。


「リジー、僕も会いたかった!迎えに来るのが遅くなってごめんね。さぁ、帰ろう!」


「うん」と頷いてローランと手を繋ぎ、数歩歩き出したところでエリック様の声が聞こえた。


「ローラン……。どうやって、ここに入ったんだ? バリアをどうやって破った?」


 エリック様の声は細かく震えていた。


 ローランは足を止めて、エリック様に向き合う。


「エリック兄さん。どうしてこんなことをしたの?リジーは僕の婚約者だよ。婚約者を勝手に連れて行って夕食の時間になっても返さない。挙句の果てにはバリアを張るなんて、どう考えても尋常じゃない。……どうせ、兄さんはリジーが欲しくなったんだろうけど、リジーは僕のものだ。誰にも渡さないよ」


 ……ローラン!!


 私はローランの言葉を聞いて、自然と口角が上がってしまった。

 二人は真剣な話をしているのに、これでは台無しになる。

 両手で頬をしっかり押さえて、二人にはバレないようにする。


 だって、「リジーは僕のものだ。誰にも渡さないよ」なんて言われたんだもん。

 口角が上がるのは仕方ない。

 うれしすぎて、さっきから脳内リピートが止まらないのだから。


 ひとり悶えている私には目もくれず、エリック様がローランに言った。


「ローラン、お前たちの婚約には異議申し立てが殺到したと聞いている。過去に例がないくらいの異議申し立ての数だったそうだ。そこまで皆に反対されている婚約は、王家として進めるべきではない。そんなことくらいローランにだって分かるはずだ。それに、お前にはアレクシア嬢という許嫁がいるじゃないか。本当はアレクシア嬢が好きなのに、リジーと婚約を続けるのは、リジーにとっても気の毒だ」


 ん?そうだったの?


 今のエリック様の言葉で、茹っていた頭が一気に冷めた。

 ローランは何て返すんだろう。

 思わず、ローランの顔を見る。


 ローランは顔を真っ赤にして、大声で叫んだ。


「違う!違う!違う!!エリック兄さん、リジーの前で何てことを言うんだ!!リジーに誤解されてしまうじゃないか!!」


 でも、エリック様はいたって冷静に返した。


「だって、本当のことだろう? 王族は一夫多妻制が認められているから、アレクシア嬢とも結婚するつもりなのかもしれないが、それなら僕にリジーを譲ってくれてもよくないか?僕のほうがお前よりもリジーを大切にできる」


 ローランはエリック様を鋭い目つきで睨みながら、私の腕をとって背後に私を隠した。


「エリック兄さん、僕はアレクシア嬢とは何もないよ。確かに幼い頃は仲良かったけれど、ただそれだけだ。別に許嫁でもないし、最近は会ってもいない。それに、僕は一夫多妻なんて望んでいない。僕の結婚相手は、後にも先にもリジーだけだ」


 そこまで言うと、ローランはくるりと私の方を振り返った。


「ねぇ、リジー。リジーも僕と結婚してくれるよね?」


 私は間髪入れずに頷いた。


「うん。そう誓ったし、私の結婚相手はローランだよ。それは、エリック様にも伝えたわ」


「よかった。リジー、大好きだよ。僕にはリジーしかいないんだから」


 そう言って、ローランが私をぎゅっと抱き締めた。


 その様子を見て、エリック様が大声を上げる。


「ダメだ!ダメだ!お前たちの婚約については、教会に異議申し立ての再審議を要求し不成立としてもらう。そして、リジーは僕と婚約するんだ! ローランはアレクシア嬢と婚約すればいい。二人いつも一緒にいて、あんなに仲良かったじゃないか。二人がキスしているところを見たという話も聞いたぞ」


 うーん、さっきから名前が出てくるアレクシア嬢のことが気になる……。

 なんだろう、胸の奥がモヤモヤする。

 ローランは、私のことを大好きだと言ってくれるけど、それは魔女の呪いを解くかもしれないからだということは分かっている。

 それなら、エリック様と同じだし、他に女性がいるローランよりは誰も相手がいないエリック様のほうがいいのかもしれない……。


 私はローランが別の女性とキスしたという話をきいて、冷静ではいられなかった。

 私はまだ今世では一度もキスしていない……。


ありがとうございました。

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