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4.休日

ようやく少しだけ話が進みます。遅くてすみません。。。

 女官教育が始まって1週間が過ぎた。

 あれから私の記憶力が急に向上して・・・なんていうことは決してなく、物覚えの悪さは相変わらずだったが、二度目の人生を楽しみたい一心で、なんとかやっている。


 一番の懸念だった王宮内部の把握だが、私を心配した父と兄があれから毎日夕食の後に王宮クイズを出題してくれた。


 私の記憶力の悪さが想定以上だったようで、二人の私に対する評価はだだ下がりな気がするが、もう猫をかぶっていても仕方ない。

 覚えられないものは覚えられないし、力を貸してもらえるなら、とことん借りよう。


 ここまで家族といえど他人の力を借りたことは、前世を合わせて考えても今まで無かったことだ。

 今までは家族に出来ないことを伝えることは恥ずかしかったし、誰にも頼らずに自分だけで何でもやってきた。

 結果、自分ひとりでは出来ないことから逃げたり、簡単に諦めたりしていたような気もするが。とにかく、誰かに迷惑をかけることが一番嫌だった。


 誰かに迷惑をかけないようにやっていけば、いつの間にか「いい人」認定される。それはそれでいいじゃないかと思われるかもしれないが、私の場合はそれで前世に失敗している。夫や子供たちから、いいように使われてしまった。

 「いい人」と思われたくて何も言えない人生は繰り返さない。別に悪女になりたいわけじゃなく、自分が言いたいことを言えればそれでいい。だから、出来ないことも隠さない。まだ「恥ずかしい」という気持ちはまだ残っているけど、できるだけ自分に素直に生きようと思っている。


 そういう理由で、自分の出来なさ加減を思い切り開示し、心配した父と兄に連日協力してもらったことで、私はなんとか王宮の全ての部屋を覚えることができ、ようやく昨日バルドー女官長に合格を言い渡された。


 実はイザベルとステイシーは3日目くらいに合格していたので、そこから私ひとりだけ取り残されてしまい、女官長にも同期の2人にも随分心配をかけてしまった。

 私も毎晩、王宮の夢にうなされるぐらい頑張っていたのだけど・・・。

 ああ、本当に辛かった・・・。とにかく合格できてよかった!

 お世話になった家族にも合格を伝えたら、父や兄は喜んでくれたが、それ以上になぜかほっとしていたが。


 さて、前置きが長くなってしまったが、それ以外の女官教育は順調に進んでいる。

 ここ数日は、王女たちの身なりの世話をするために、ドレスや靴、装飾品について、様々な決まり事や流行などを学んだり、ヘアメイクについて知識と技術を学んでいる。


 こういった知識やスキルは自分にも役立つし、とても興味があるので、楽しんで取り組むことができている。やはり女性はいつだって美しくありたいのだ。


 ◇◇◇


「このドレスはどう思う?似合うかしら?」


 今日は、女官教育が始まってから初めての休日で、同期のイザベルがお茶会に招いてくれたのだ。

 メイドのアンに手伝ってもらいながら、さっそく学んだ知識をいかして自分のヘアメイクをし、ドレスに着替えた。


 女官教育が始まってからは一日の大半を地味なお仕着せで過ごしていたので、華やかな盛装で外出できるのはうれしい。自然と気分が上がる。

 髪の毛は自分で編み込みに編んでみた。意外と上手にできたように思う。


「お嬢様、なかなか上手ですね」

アンも褒めてくれたし、お母様も褒めてくれたので、なかなかの仕上がりのはずだ。

 

 イザベルの邸宅に着くと、同じくきれいに盛装したイザベルとステイシー、そしてもう一人、見知らぬ女性がいた。きっとイザベルのお姉さまに違いない。

 というのも、今日のお茶会のテーマは、現役女官のイザベルのお姉様にいろんなことを教えてもらおう、というものだからだ。


「リジー、紹介するわ。姉のシモーヌよ。私達より2歳年上で、第4王女殿下の女官を務めているの」

 シモーヌは、言われてみれば、イザベルに目元がそっくりだ。

「はじめまして。リジーです。今日は色々教えてください。よろしくお願いします」

「さ、固い挨拶は無しにして、こちらへどうぞ」


 イザベルの屋敷の庭は手入れが行き届いていて、とても素敵だった。庭園に置かれたテーブルセットに案内され、使用人たちがお茶を用意してくれる。


「リジー、王宮テスト、合格おめでとう!」

 席につくと、いの一番に言われ、ちょっと恥ずかしい。

「ありがとう。もう合格できないかと思ったわ。でも、今日はその話は無しで。お姉様にいろいろと教えていただかないと!」

 私は簡単にお礼を言って、でも、これ以上王宮テストの話を引っ張らないように、慎重に話を変える。


「お姉様、ではさっそく私から質問してもよろしいでしょうか。その、女官で王子様たちから見初められたりとかあるのでしょうか?」

 私の発言を受けて、ステイシーが待ってましたとばかり質問した。

「そうね、あるわよ。確か、第二王子の婚約者様は元女官をされていたはず」

「うわぁ、素敵~!!」

 ステイシーとイザベルの瞳が輝く。私ももちろんそういう話は嫌いじゃない。


 私たちの反応を見ながらも、残念そうにシモーヌお姉様が話を続ける。

「でも、まぁ正直に言うと、難しいわね。王子様に見初められるなんて、残念ながら滅多にないわ。お知り合いになれる機会ですら、なかなか無いもの・・・」


 私たちのように貴族出身の女官たちは、王宮で3年間務め上げることで、国王陛下の後ろ盾を得て良い結婚相手を紹介してもらうことができる。だから皆、少しでもよい縁談がもらえるようにお務めを頑張るのだが、やはり王族との結婚は難しいようだ。それはそうだろう。


 私は、前世の結婚に良い思い出がないので、結婚に対する憧れはない。

 貴族の結婚に自分の意思は関係ないと割り切っているし、与えられた相手と今度こそはうまくやりたいな、ぐらいにしか思っていない。ましてや王族との結婚なんて、そもそも考えたこともなかった。


 私の場合は、言いたいことを言える人生であれば、後は何でもいいのだから。

 そんなことをぼんやりと思いながら、カップを口につけた。

 美味しい!この紅茶はどこのだろう。後でイザベルに教えてもらおう。


 ひとりお茶を愉しむ私をよそに、ステイシーたちの恋バナは続いていた。

ありがとうございました。

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