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37.協力

「どうしてって言われても、見えるからだよ」


 ローランが笑顔で答える。


 ん?見える?何が?


「何が見えるの?」


 意味がわからなくて尋ねると、ローランはニコニコしながら答えてくれた。


「だから、リジーの魔力が見えるんだ。水属性だということは一目瞭然だよ。リジーは僕の魔力が見えないの?」


 え?私の魔力が見える?どこに?

 水属性だと書いてあるの?

 ローランの魔力は……どれだろう?


 私は、目の前のローランを透視してみようとしたが、できなかった。

 ローランの魔力らしいものは何も見えない。


「ローラン、私にはローランの魔力が見えないわ……」


 そう言うと、ローランは意外そうな顔をした。


「え?リジーには見えないの?どうしてなんだろう……」


 うーん。魔力ってどういう風に見えるものなのか。


「あ!!」


 私は初めて魔導士様に出会った時のことを思い出した。

 確か、バルドー女官長に連れられて行ったとき、魔導士様は私の頭の先から足の先まで順に手のひらをかざしていた。まるで私のことをスキャンしているようだった。


「手をかざしたら、見えるのかも!」


 そう思って、今度はローランに手をかざしてみた。

 魔導士様みたいに頭の先から順に手をかざしているが、特に何も見えない。


「リジー、何してるの?」

 ローランが笑う。


「え?何って。ローランの魔力をスキャンしようとしてるのよ。魔導士様も私にこうやってたし」


 私は真剣にやってるのに、ローランは笑いが収まらないようだ。大笑いしている。


「もう!ダメだよ。ローラン、じっとしてくれなきゃ」


 私の手は、まだローランのお腹くらいだ。このまま、足の先までかざしたい。


 ローランは、ひぃひぃ言いながら、まだ笑っている。


 もう、笑うなんてひどい!


 私がローランのことをじろりと睨んで、手を外すと、ローランは笑うのをやめた。でも、目の端に涙が溜まってる。


 ローラン、泣くほど笑うってどういうこと?!


「ごめんごめん。リジー。……リジーがそうやると、とてもくすぐったかったから、つい笑っちゃった」


「へ?!」


 くすぐったいの?!


 私がビックリしていると、ローランはようやく落ち着いたようだ。


「すごく、くすぐっかったよ。リジーが真剣だから我慢しようとしたんだけど、耐えられなかった」


 ローランはそう言いながら、私の頭を撫でた。

「リジー、可愛い」とニコニコ微笑んで。


 ローランは時々、こうして私の頭を撫でる。

 同い年なんだけどな。ローランは私のことを年下だと思っている節がある。

 どっちかというと、私は元アラフォーだから、精神年齢は私の方がかなり年上なのに。


 でも、撫でられるのは気持ちいいので、ローランの好きにさせる。


 私はローランの魔力スキャンを諦めて、尋ねた。


「ねぇ、ローランは、私が昨日ラウル王子殿下とかアラン王子殿下にかけていた魔法も見えたの?」


「うん、見えた。いつもより強力だったね。あんな強い魔法が使えるなんて、さすがリジーだと思ったよ!」


「!!」


 そうなんだ!!

 ローランには昨日の私の魔法も見えてたんだ!


 昨日の魔力は強かったのか……。

 いつもより頑張って念じたからなぁ。 


 あ!

 だから、ローランはいつも私のことを信頼してくれてたんだ。


 ローランが垣間見せる、私への絶対的な信頼感の理由が分かった。

 確かに、見えるなら信頼するね。


 私がひとり納得していると、

「もしかしたら、リジーにもこうしたら見えるかな?」

 ローランはぶつぶつと呟きながら、ソファに座った。

 そして、私を手招きする。


「リジー、来て。ここに座って」


 ローランは足を広げてソファに深く座っている。どうやらその間に、私が座れということらしい。

 両手を大きく広げ、待ち構えている。


 恥ずかしいので、ローランの近くまで行って躊躇していると、「何を恥ずかしがってるの?」とローランに手を取られた。そのままストンと、ローランの前に座らされる。


 ちょうど私の背中をローランに預ける形となった。

 ローランにバックハグされた状態で、2人ソファに座る。いわゆる二人羽織だ。


 心臓の音がバクバクする。

 ローランの心臓の音と私の心臓の音が共鳴している。

 ドキドキが止まらない。


 ローランは稀に見る美形男子だ。そんな素敵イケメンにこんなことされたら、誰だってこうなるはず。


 心臓の音に気を取られて何も考えられない。

 顔が真っ赤になっている自覚はあった。


 ローランは、私の気も知らないで、後ろから私の右手を持った。


「リジー、この状態で何か魔法を使ってみて」


 耳元にローランの息がかかる。


「ひゃっ!」


 咄嗟にのけぞって、変な声を出してしまった。


「ほら、リジー。動かないで」


 強い力で、ローランに後ろから抱き締められる。

 密着している背中が熱い。


 心臓の音は激しさを増すばかりだ。


「さ、リジー。何か魔法を使ってみてよ」


 ローランに促され、覚悟を決めた。

 この状態は恥ずかしすぎて、もう耐えられない。


 これ以上もたもたしていたら、私が恥ずかしさで死んでしまう。


 さっさと終わらせなくては。


 目を閉じて意識を魔力に集中した。

 そして目を開ける。

 私は、キッチンのまな板の上に置いたままだったハーブを見つめ、テーブルの上のお皿に移動するよう念じた。


「え?!」


 私の右手の先から、青緑色のような光がぼんやりと見える。


 魔法が発動して、ハーブが移動した。


 右手の先に見えていた光が消える。


「……今の?」


 私が呆然としていると、ローランがバックハグを解いて隣りに座った。

 そして顔を覗き込んできて、頷いている。


 ローランも、私が見えたことが分かったのだろう。


「見えた? 今のがリジーの魔力だよ」


 ニコニコしながら、また私の頭を撫でている。


「うん、見えた!青緑色みたいな光が、私の手から」


 私は思わず自分の右手を見た。

 それから、ゆっくりとローランの方を向く。


「すごい!ローラン、凄いよ。……でも、どうして?」


「リジーの魔力が見えるように、魔法をかけたんだよ」


 あぁ、そういうことか。

 それは自分ひとりでは出来ないことだ。


「ねぇ、リジー。僕たちの婚約指輪を見てごらん」

ありがとうございました。

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