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36.手当3

「料理は確かに好きだし、ローランに振る舞いたい気持ちはあるけど、食材が何があるか分からないと迂闊にはできないわ」


 少し考えて私がそう言うと、シモーヌが笑った。


「王宮の品揃えを舐めたらダメよ。食材は何でも揃ってる。外国のものだってあるんだから。何でもあるわよ。でも、そうね。確か今日は、いい仔羊肉が入っているって話してたかも」


 ふぅん。仔羊か……。

 さすがにそれは、前世では料理したことがない。


 でも、だからちょっと使ってみたいかも。

 ハーブとパン粉で焼いたら、なんとかなりそう。


 よし、決めた!

 今日は料理を作ることにしよう。


「シモーヌ、欲しい食材を書いてみるから、それをここに持ってこれる?」


 そして、私は料理を想像しながら、欲しい食材をメモする。

 メインが仔羊の香草焼きとして、スープとサラダと副菜がほしい。

 副菜は、じゃがいもをローズマリーと一緒にホクホクに仕上げてみよう。

 スープとサラダはどうしようかな。どちらもハーブを活かしたい。昨日分けてもらったハーブを見ながら、考える。

 パンは、料理長がつくったものを分けてもらおう。


 メニューを考えながらメモしているうちに、心がウキウキしてきた。


 実は、私の部屋には石窯もある。

 この国ではキッチンに石窯は標準装備らしく、ミニキッチンを頼んだら石窯も設置されたのだ。

 そういえば我が家にも石窯はあったけれど、私は調理場に入ったことがなかったので実際に使ったことはなかった。家ではパンを焼くときに石窯を使っていたようだが、オーブンとしても十分使えるはずだ。

 仔羊の香草焼きとじゃがいもは、石窯を使って焼いてみよう。


 欲しい食材を書いたメモをシモーヌに渡す。

 ちょうど私のヘアメイクが終わったので、シモーヌたちはメモを持って調理場へと向かった。


 今日の私は料理をしやすいように髪をアップにしてもらった。ドレスの上からエプロンを着る。


 しばらくすると、食材を持ってシモーヌたちが戻って来た。

 私はお礼を言って、シモーヌたちには下がってもらうことにする。

「後は、私とローランの2人で楽しみたい」と伝えると、とてもいい笑顔で皆部屋を出ていった。


 持ってきてもらった食材はどれも新鮮だった。

 仔羊肉もとてもきれいなピンク色をしているし、レタスもシャキシャキだ。

 新鮮な食材を前にして、心が躍る。

 前世によく見ていた料理番組のテーマソングを鼻歌で歌いながら料理の下ごしらえをしていると、いつの間にかローランが私の隣に立っていた。


「あ、ローラン!おかえり!! いつの間に戻ってたの?!気づかなくてごめんね」


 扉の開く音に気づかなかったー。

 いきなりローランが横にいるとか、心臓に悪い。


「ただいま。ふふふ、少し前だよ。リジーがとても楽しそうにしてたから、声をかけられなかった。歌ってたのは何て歌?」


 ローランはにこにこと笑っている。

 

「やだ、聞いてたの?恥ずかしい」


 鼻歌を聞かれるとか、穴があったら入りたい……。


 私が黙り込んでしまったのを見て、ローランが話題を変えてくれた。


「リジー、それは何をやってるの?」


その言葉で我に返る。


「あ、スープを作ろうと思って、野菜を切ってたの。ほら、私がゆっくり寝てたせいで、お昼ご飯、まだ食べてないでしょ?」

「うん、確かにお腹すいたな。僕も何か手伝えることある?」

「ある!パン粉を作りたいの。そこにあるパンを粉々にしてほしいんだけど……」


 ローランと一緒に料理をするのは楽しかった。

 前世ではいつも1人で料理をした。それはそれで、良い気分転換になるからよかったのだが、2人で料理することがこんなに楽しいとは知らなかった。


 今つくろうとしている料理はどれも簡単なものだったが、それでも2人で料理すると、あっという間にできた。

 石窯も初めて使ったが、我ながらうまく焼けた。


「わぁ、リジー、美味しそうにできたね!」

「ローランが手伝ってくれたからだよ!」


 2人で一緒につくったスープ、サラダ、仔羊の香草焼き、ホクホクポテトを前にして、達成感が心地よかった。


「さぁ、食べよう! いただきます」

「いただきます」


 そう言って、同時に食べる。


「リジー、凄いよ!とても美味しい! うちの料理長がつくる料理より美味しくできたんじゃない?」


 ローランはいつもちょっと褒め過ぎる。

 でも、悪い気はしない。


「それは、さすがにないよ。料理長のほうが上手。だけど、たまには、こうやって2人で作って食べるのもいいね」


 私がそう言うと、ローランがとびきりの笑顔を見せた。


「リジーは本当になんでもできる!! 昨日だってそうだ。リジーがみてくれた兄上たちは3人とも熱が下がったって。先ほど父上に呼ばれて、リジーにお礼をしたい、と言ってたよ」


 え?!

 昨日の王子殿下たち、3人とも熱が下がったの?


 私がビックリして黙っていると、ローランが続けた。


「リジーが倒れるくらい回復魔法を使ってくれたから、3人とも治ったんだね。父上にもそう伝えたんだ。本当にリジーのおかげだよ」


 ローランは私の魔法使いとしての能力を絶賛してくれているが、素直に自分の力だと言えないところが辛い。

 たまたまかもしれないし、ハーブティーがよかったのかもしれないし、もしかしたら私の魔法が効いたのかもしれない。


 でも、ローランだけならまだしも、国王陛下にまで私の魔法の効果だと思われたのは、ちょっとマズイ。


 これは、早急にもっと魔法の勉強をして、目に見えない物に対する魔法の効果を確認できるようにしなくては。


 昨日だって、魔法をかけたつもりではあるけど、すぐに熱が下がらなかったから分からなかった。


 国王陛下とは昨日の約束が延期になったばかりだから、きっと近いうちに私は呼ばれる筈だ。


 その時に魔法のことを色々突っ込まれたとして、分かっていることならいくらでも言えるけど、分かっていない現象を軽々しく伝えるわけにはいかない。


 確かに私は水属性で、回復や治療に効果を発揮するらしいんだけど……。


 あれ?そういえば、どうしてローランは私が水属性だって知っているのだろう。

 確か私が言う前に、ローランは知っていた。

 

 ふと疑問に思ったので、訊いてみた。


「ねぇ、ローラン。どうして私が水属性だって知ったの?」


 

ありがとうございました。

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