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31.新生活

ここから、第二章が始まります。

 ローランはあっさりと国王陛下に許可を取り、私たちは私の部屋で生活を共にすることになった。

 婚約者同士だけど、これでは完全に新婚生活だ。


 部屋が広かったので、私のベッドの横にローランのベッドを並べて置き、奥の衣装部屋にはローランの衣装も運び込まれた。


 ローラン付きの侍従や護衛の騎士たちはそのままだが、私の部屋の中でのローランのお世話は、基本的にイザベルたちにお願いする。


 やっぱり女性の部屋に、そう簡単にローラン以外の男性には入られたくない。


 イザベルやステイシーは、ローランが私の部屋で生活をすると聞いて最初は驚いたらしいが、私には

「やっぱりね。リジーは溺愛されているから」と妙に納得してみせた。


 いや、溺愛とかそんなんじゃないから。

 どっちかというと、私は、ローランにとっての虫除けというか、お守りみたいなものなんだけど…。


 でも、それを説明するには、魔法のことも話すことになるので、さすがに話せない。

 素直に受け取れないが、2人にはローランに溺愛されている、ということにしておく。


 ただ、なんとなくだけど、ローランの呪いを解くにはイザベルとステイシーの協力が必要なのではないかと思っていた。

 だって、以前、黒猫の呪いを解いたときも、2人がいたから解けたのだ。

 きっと一緒にいるとうまくいきそうな気がする。

 

 だけど…。

 あの黒猫のことも、まだいまいちどうして、あんなことが起こったのか分かっていない。

 いや、エミリー王女が魔女の呪いにかかっていたのはそうだろう。

 だとしても、だ。

 じゃ、どうして頭を撫でたら解呪されたの?

 もやもやする。

 何をすればどうなるのか、因果関係がよくわからないから、何をしたらいいのかが分からない。


 魔女のことを訊いても、突っ込んだことを訊いた途端みんな口を噤んでしまう。

 きっとみんな何かを隠している。

 でも、それは自分で何とかしろ、と言われているような気もしている。


 結局、一朝一夕に解決する問題ではないということだ。

 それはそうだ。9年間もローランが抱えている問題だ。

 私たちに残された時間は3年。

 この3年の間に、なんとかしなくては…。


 私はローランに、解呪してみせる、と言い切ってみせたけど……

 本当に私に出来るのだろうか。

 その役割は私なのだろうか。


 そこまで考えて……、

 もう逃げ出せないことは理解しているから、

 不安に押しつぶされそうな気持ちに蓋をして、考えることを放棄した。


 ◇◇◇


 妃教育が始まった。

 宰相やローランに聞いていたとおり、殺人的な忙しさだ。

 毎日朝から夕方まで、昼休憩を挟んで8時間、マナー、語学、地理、歴史、作詩、裁縫などを叩き込まれる。

 座学以外にも、体幹を鍛える体操やダンスの授業もあり、思い切り体を動かした後の座学はへとへとで正直頭に入らないが、マンツーマン指導で気を抜くこともできない。

 

 前世の学校は楽勝だったな…。

 前世も詰め込み教育だと言われていたが、ここまで詰め込まれなかった……。

 

 人生をやり直せたのはうれしいが、こんなに真剣に勉強し続けないといけなくなるのは想定外だった…。

 前世でしっかり勉強してこなかったから、二度目の人生では勉強させられているのかも…。


 そんなことを無駄に考えながら、苦笑する。


 でも、目の前にやらないといけないことがいっぱいあるおかげで、不安な気持ちにならなくて済むのは正直ありがたいかもしれない。


 妃教育がすべて終わると、いったん自室に戻り、イザベルやステイシー、シモーヌとお茶をしながら会話する。ローランの言ったとおり、いい話し相手になってもらっている。

 お互いの情報共有をしつつ、くだらない話を言い合う。

 このひとときが今の私の癒しだ。


 だいたい1時間くらい自室で休憩した後は、魔導士様の部屋へ行く。

 今度は魔法の勉強だ。

 魔法については、実はだいぶ上手くなった。

 物を動かすのは、お手の物だ。

 人前で魔法を使うと大騒ぎになることが簡単に想像できるので人前ではやらないが、物質に対して何か目に見える変化を起こすことはたいてい出来るようになった。


 でも、呪いとか、目に見えないものをどうにかする、というのは、まだよく分からない…。

 呪いの刻印が薄くなれ、というのは、自分のできる精一杯の強さで日々念じているが、残念ながら今のところ変化はみられない。


 そして、魔法の勉強が終わると、食堂へ行く。

 ローランと食堂で合流し、2人で一緒に夕食を食べる。

 お互いに、今日一日何があったのかを話す。


 初めて知ったのだが、ローランは日中、ほぼ戦闘訓練をしているらしい。

 乗馬、水泳、格闘技、槍や剣の練習、マラソンなどで一日の大半を過ごし、あとは、私と同様に教師について勉強を教えてもらっているとのことだった。

 だから、ローランの身体はあんなに鍛えられているのだ。

 ローランの細マッチョな身体は素晴らしいので、この先もずっと維持してもらいたいと、密かに思っている。


 それにしても、ローランと話していて感心するのは、15歳と思えないほど知識が身についているうえに、頭の回転が早く、思考の柔軟性が高いことだ。

 コミュニケーション能力だって高い。

 私は元アラフォーの15歳なので、普通の15歳よりその辺は出来る方だと思うが、ローランには適わないと思う時がよくある。

 さすが幼い頃より英才教育を受けている賜物なのだろう。


 食堂での食事を終えると、2人で私の部屋に戻る。

 私は食事を終えるとクタクタですぐに眠くなってしまうが、ローランは読書をしたり何か書き物をしたりしているし、時々自分の部屋に戻ることもある。


 食後、少し休んだ後は、イザベルたちが植物油と精油を混ぜて作った特製のオイルを使って、私にマッサージをしてくれるのが日課だ。

 これがなにより至福の時間なのだ!!

 これがあるから、毎日の妃教育を頑張れるといっても過言ではない!


 オイルは私の体調などをみながら、何を混ぜるか日々変えているらしい。

 いい香りに包まれて、3人がかりで優しくマッサージしてもらうと、いつもいつの間にか眠ってしまう。

 

 翌朝気づくと、きちんと寝間着に着替えているので、マッサージが終わった後に着替えさせてもらっているようだ。

 残念ながら、マッサージの途中で必ず眠りに落ちてしまうので、どのくらいマッサージをしてくれているのか、いつ着替えさせてくれているのかは全く分からないが。


 こんな感じで、私の王宮での新生活が始まった。


ありがとうございました。

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