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14.顔合わせ3

「水属性…」

 ローランが口にした言葉を反芻する。

 水属性。

 魔導士様が私は水属性だと教えてくれた。

 でも、私は魔法について学び始めたばかりで、まだ何も分かっていない。

 水属性とは何なのか?いったい私に何ができるのだろう?

 実際にどうやって魔法を使うのか、その使い方さえ知らないというのに…。


「そんな難しい顔をしないで。リジー。僕は、土属性なんだよ。土と水は相性がすごくいいんだから」

「…」

「そうだな。僕たちは夫婦になるのだし、せっかくだから王家の秘密を教えるよ。リジーに秘密にすることなんて、これから何もなくなるしね。僕たち男性王族は全員、土属性なんだ。なぜなら、子供の頃に、土の妖精ノーム様に加護を受けるから。実は、ノーム様は王宮の地下に住んでいるんだよ」

「え?そうなの?そんな大切な秘密…、私がきいちゃっていいの?」


 そんなことは初めて知った。

 噂で王族は魔法を使える、ということは聞いたことがあるが、それだけだ。

 土の妖精ノーム様が王宮の地下に住んでいるとか、王族男性が土の妖精の加護を受けているとか、そんな大切なことを私が知っちゃってもいいものなのだろうか…。


 私が目をぱちくりさせていると、ローランはにっこり笑って訊いた。

「リジーは、誰にも言わないでしょ?」

「うん。言わない」

 私が頷くと、満足そうに話を続ける。


「だから教えたんだよ。でも、王族の秘密だからね。絶対に誰にも話さないで。約束できる?」

「うん、約束する」


 そんな大切な秘密、絶対誰にも話せない。


「よかった。じゃ、この話はこれで終わり。リジー、せっかくだから、ちょっと薔薇園を歩いてみようか」


 重苦しくなった空気を察したのか、ローランが立ち上がってそう言った。

 ああ、そうだ。私は今、薔薇園にいるんだった。

 薔薇園にいることをすっかり忘れて、目の前のローランの話に集中してしまったので、まったく薔薇を見ていなかった。


 ローランのエスコートで、ローズガゼボを出る。

「うわぁ、きれい!!」


 見渡す限り一面にカラフルな薔薇が咲き誇っていた。

 赤、ピンク、白、オレンジ、黄、紫。

 色とりどりに咲き乱れた薔薇の上を太陽の光が燦燦と降り注ぐ様は幻想的で、見惚れてしまう。


「きれいでしょ?ここは王家のプライベートな薔薇園で、王族以外は立ち入ることができないんだよ。でも、リジーはこれから王族になるんだから、特別なんだ」

 薔薇に目を奪われて立ち尽くす私を見て、ローランはいたずらに成功したような顔をした。


「王族以外は立ち入り禁止・・・。そんな大切な場所に連れてきてくれて、ありがとう」

「結婚相手をここに連れてくるのが僕の夢だったから。リジーを連れてこれてよかった」

「!!!」


 ローラン!!!

 そんなことを言ってくれるの?うれしい!!

 うれしすぎて言葉にならない。

 やばい、私、幸せすぎる…。


 私が黙ったままでいると、心配そうにローランが顔を覗き込んできた。

「リジー、少しは気に入ってくれた?」

 私は大きくぶんぶんと首を縦に振った。

「ローラン!私、とてもうれしい!こんなにうれしかったことって、今までに一度もないよ。本当にありがとう」


 頬を涙が流れていたようだ。ローランが私の頬の涙を拭ってくれる。うれし涙を流したなんて、こんなことも初めてだ。前世にもなかった。

 ローランはにっこりと微笑んで私を見ている。

 ………

 …見られていることが、徐々に気恥ずかしくなってきた。


 恥ずかしさに耐えられなくなったので、話題を変えた。

「あの、あのね、ローラン。ひとつ私から聞きたいことがあるんだけど、聞いてもいい?」

「うん、いいよ。何?」

「私って、ローランの正妃になるの?側妃になるの?」


 実は、これ前から疑問だったのだ。

 今の国王陛下には正妃様と側妃様がいらっしゃる。

 どうやって決まるのか、どっちになるのか、誰も教えてくれなかったので知りたかった。


「ああ、リジーも知っていると思うけど、もともと我が国は王族といえど一夫一妻制だったんだよ。一夫多妻は禁じられていたんだ。それを父上が教皇と話をつけて、王族のみ一夫多妻制を認めさせた。だから、一夫多妻なのは、我が国では現国王の父上だけなんだよ」

「え?そうなの?知らなかった・・・。でも、なぜ国王陛下は一夫多妻制を認めさせたの?」


「父上が女性好きというのはあるかもしれないね。ふふふ。実際、国民には女好きの国王だと思われているようだから。でも実は、僕の母上も含めて、今の側妃は3人とも魔力を持つんだ。そう。リジーと同じようにね。魔力をもつ人を王族にするために、妃にしたんだよ。側妃の中でも、特にコレット様は公爵令嬢だったからね。愛妾になんてするわけにはいかなかったんだ」

「そうなんだ」


「まぁ、でもそれは父上が一人息子だったからかな。父上に兄弟がいれば、そうはならなかったと思う。現に、僕は一夫多妻を求めていないし。他に魔法を使える女性が出てくれば、そのときは他の兄弟が結婚すればいいと思うから」


 今、さらっと大事なことを言ったよね。

「ローランは一夫多妻を求めていない」

 頭の中で考えていたつもりが、無意識に声に出てしまっていたようだ。


「そうだよ。僕は一夫多妻を求めていない。結婚相手はリジーだけでいいと思っているんだ。だから、リジーは正妃だよ」

「!!!」


 ローラン!!

 さっきから、なんて男前なの。

 もう私の胸キュンが止まらない。

 心臓が痛い。

 はっきりと「結婚相手は私だけでいい」と言われることが、こんなにうれしいなんて。

 やばい、恥ずかしい。

 いま自分の顔を見れないけど、顔が真っ赤になっている自信はあった。耳まで熱い。


 私が恥ずかしさに悶えていると、ローランが真顔で言った。

「あ、でも、第一王子のケヴィン兄さんは父上に感謝していると思うよ。一夫多妻の権利をフルにつかうんじゃないかな。兄さんの場合は、相手が魔法を使えるからとかそういうのは一切関係なく、ただの女性好きなんだ」

「…え?」


 思わずローランの言葉に吹き出してしまった。

 今度は笑うのが我慢できない。

 私が笑うと、ローランもつられて笑った。

 二人でひとしきり笑ったら、さきほどの恥ずかしさもどこかへいってしまったようだ。


 笑いを提供してくれてありがとう、ケヴィン王子殿下。

 おかげで、助かりました。

ありがとうございました。

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