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131.幸運の女神3

このお話の初投稿から1年が経過しました。最近はすっかり更新も遅くなってしまいましたが、1年続いたかと思うと感慨深いです。 今後は月1回くらいのペースでの更新になってしまいますが、引き続きよろしくお願いします。

「そうなのね。よかったわ」


 私はローランの言葉で、安心した。


 よかった。やはり、シルフ様が言ったとおり、ヴィオラ様は王宮に戻られてたんだ。シルフ様のいうことを信じていないわけではないけど、ローランから聞けてうれしい。

 

 でも、どうしてヴィオラ様は心変わりをされたんだろう? 王宮には戻らないと言ってたのに……。


「ねぇ、ローラン。私、ヴィオラ様と二人きりでお話がしたいのだけど、それはやっぱり難しいかしら?」


 私がそうきくと、ローランは少し考えてから答えた。


「……うーん。難しいとは思うけど、父上にきいてみるよ。……実は、今ヴィオラ様はどなたとも会いたくないと、お部屋に籠られているんだ。そりゃそうだよね。死の呪いをかける魔女に連れ去られたんだから。父上もヴィオラ様のショックが癒えるまでは期限を定めずに、いかなる人とも面会謝絶だとお触れを出した。だから今、ヴィオラ様にお会いできるのは、ヴィオラ様のお世話をしている数人だけなんだよ。僕も直接お会いすることはできない。……ただ、リジーはヴィオラ様を連れ戻した張本人だから……もしかしたら、リジーはヴィオラ様とお会いすることが許されるかもしれない。……父上にきいてみないと、わからないけどね……」


「そうなのね。わかったわ」


 それから、少しだけローランと雑談をして、通話を終えた。


 ◇◇◇


 翌日、朝食を終えて部屋でくつろいでいると、ローランから連絡があった。


「リジー、今話せるかい?」


「ええ、もちろんよ」


 私がそう答えると、ローランは一呼吸おいてから、言った。


「父上から、ヴィオラ様と面会の許可がおりたよ」


「本当? ローラン、ありがとう」


 国王陛下から面会謝絶中のヴィオラ様との対面許可を取ってくるなんて、いくら私がヴィオラ様を連れ戻したということになっているとしても、なかなか難しいはずだ。それをこんなすぐにやってのけるなんて、やっぱりローランはできる男だ。


「伝令が今日そちらに向かうので、詳しくはその者からきいてもらえばいいんだけど、とても急だけど明日王宮にきてくれる? ヴィオラ様が明日会うと仰ったらしいんだ」


「わかったわ。明日ね。特に予定はないし、まったく問題ないわ。ありがとう、ローラン」


 ローランが本当に頼もしい。


 こうなってくると、ヴィオラ様よりローランに会いたくなってくる。


「明日、ローランとも少しは会えるのかしら?」


「うん、そうだね。僕もリジーに会いたいから、予定を調整してみるよ。……それじゃ、僕は今から出かけないといけないから、また明日。リジーに久しぶりに会えることを楽しみにしているね」


 ああ、ローラン。

 やっぱり大好き。


 ローランの声は聞こえなくなったが、耳に残る余韻をかみしめる。


 僕もリジーに会いたいから……だって♡


 そのとき、誰かが部屋の扉をノックした。アンだった。


 アンは、私の顔を見るなり言った。


「リジーお嬢様、何か良いことでもあったのですか?」


「え?」


 アンの言葉に慌てて鏡を覗き込むと、そこにはニヤニヤしている私の顔が映っていた。

 思わず、緩んだ両頬を手で押さえつける。


「あ、アンこそ、どうしたの? 何かあった?」


 アンは、にっこり微笑んで言った。


「ご主人様がリジーお嬢様のことをお呼びです」


 そう言った後も、私のことをずっとニコニコしながらみている。きっと、何か勘づいているのかも……。

 なんだか恥ずかしいな……。


 私は、逃げるようにその場を離れて、父が待っている応接室へと向かった。


 応接室に入ると、父と母はソファでくつろぎながら談笑していた。でも、私の顔を見ると話を止めて「リジー、ここへ」と手招きした。

 私が座るのを見届けてから、父がごほんと咳払いして、言いにくそうに言った。


「リジー、国王陛下がお呼びだ。急な話だが、明日登城するように連絡がきた。……ただ、私も同行するべきところだが、どうしても仕事の都合がつかないんだ。国王陛下からは、急な話なのでリジーひとりでかまわないとのことなんだが……。リジーは、ひとりで行けるかい?」


「はい、お父様。大丈夫です。ひとりで登城してきます」


 私がそう答えると、父はほっとしたようだ。


「すまないね。リジー。国王陛下からどういうお話があるのかは分からないが、悪い話ではなさそうだ。私には、日を改めて時間をとるということだった。リジーはひとりで心細いだろうが、第一騎士団が案内をしてくれるので、その人の指示に従いなさい。第一騎士団の案内人がジャックだったらいいんだが……。急な話だから、そううまくもいかないだろう」


「私はお兄様のご案内だと余計に緊張しそうですので、ほかの方のほうがいいかもしれません」


 私がそう言って笑うと、父も一緒に笑った。


「そうだな、ジャックはすぐ緊張するからな。リジーより緊張して案内にならないかもしれないな」


 父と私の話が終わったのを見計らって、母が言った。


「それにしても、どうして明日なんでしょう。王子様たちの合同結婚式が迫っていて、皆バタバタしているときなのに……」


 そうだった。ローランとは、あえて合同結婚式の話に触れないようにしていたけれど、ここのところ町中この話で持ちきりだ。なんといってもローラン以外の成人の王子様が全員結婚するのだから。祝賀ムードの中で、皆浮かれているように見えるし、町のあちこちでお祝いの準備が進んでいる。


 王宮だって準備に追われて大変なはずだ。こんな大変なときに、国王陛下からお呼びがかかるなんて普通ならありえないと誰もが思うだろう。全部終わって落ち着いてからのほうがいいに決まっている。

 

 ヴィオラ様のことを両親に話した方がいいのかな……。


 そんなことを考えていると、母が言った。


「もしかしたら、ローラン王子殿下とリジーの婚約話が進むのかしら。だって、最近のローラン王子殿下のご活躍ぶりは凄いでしょ。リジーと本気で婚約を考えられていることがよく分かって、私もうれしいもの。国王陛下にお認めいただいたのかもしれないわね」


 うれしそうに言う母を父はたしなめた。


「ローラン王子殿下の活躍は素晴らしいが、それとリジーとの話は別だ。そんなことを軽々しく言うんじゃない」

ありがとうございました。

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