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13.顔合わせ2

 国王陛下とメラニー妃殿下、私の両親に見送られて、ローラン王子殿下と私は王宮の薔薇園を散策することになった。

 私としても、今日の場があんな一瞬だけで終わるのは嫌だったので、ローラン王子殿下のお誘いは有難い。

 せっかく史上最高の私に仕上げてもらったのだ。少しでも長くこの姿で過ごしたい。

 

 ◇◇◇


「リジー、薔薇園までは少し遠いから、馬に乗っていこうと思うんだけど」

 王宮の回廊を黙って歩いていたが、ローラン王子殿下の発した言葉が私を喜ばせた。


 馬!!

 久しぶりに馬に乗れる!うれしい!


 我が家の領地が辺鄙な場所にあり、子供の頃から騎士の兄とよく乗馬をして遊んでいたので乗馬には自信がある。

 ただ、いつも領地では自分の愛馬に跨っていた。

 王宮の馬は大丈夫だろうか。

 なんとなく、王族所有の馬は気品があって落ち着いているイメージがあるので、大丈夫な気はするが…。

 

 心配になったので、一応念のため確認する。

「ローラン王子殿下。私、馬に乗るのは大好きです。ただ、初めての馬を乗りこなせるか心配ですので、出来ましたら、おとなしく乗りやすい馬だといいのですが」

「!!」


 なぜかローラン王子殿下が驚いている。

 王族の女性の方は、もしかしたら馬に乗られないのかもしれない。

 でも、貴族の女性は結構乗馬する人が多いと思う。

 我が家のように、王都から離れた辺鄙な領地であればなおさら。


「…たぶん気性が荒い馬ではなかったと思うから大丈夫だと思うよ。ちょっと待って。二頭用意するから」

「お願いします」

 

 ローラン王子殿下が侍従に指示して、馬を二頭用意してくれた。

 私の乗る馬には、ドレスを着て乗れるように、サイドサドルがセットされている。サイドサドルを使えば、馬に跨らず横乗りで乗ることができるので、ドレスでも問題ない。

 私は慣れた手つきで馬に乗って、右手に鞭を持ち、鞭と踵で馬に合図した。


 私の様子をじっと見ていたローラン王子殿下は、感心したような口調で言った。

「へぇ、器用なんだね。それじゃ、行こうか。私の後についてきて」


 ローラン王子殿下が馬を走らせる。

 その乗馬姿は、非常に様になっていた。


 ただ、惜しいことにローラン王子殿下は鹿毛の馬に跨っている。

 これがもし白馬だったら、絵本から飛び出した白馬の王子様そのものだったのに。

 先程の侍従、どうせなら白馬を用意して欲しかった!

 リアル白馬の王子様、見たかったー!


 仕方ないので、鹿毛の馬を頭の中で白馬に変換して、改めてローラン王子殿下の乗馬姿を見る。

 うん、素敵!


 ひとり頭の中で、白馬に乗った王子様に変換して満足していると

「リジー、薔薇園に着いたよ」

と声が聞こえた。


 近い!!もっと遠くてもいいのに!!

 もっと乗馬楽しみたかったー!


 王宮の広大な庭園を横切って雑木林を抜けると、すぐ着いた。馬でわずか5分くらいだ。


 騎士の銅像の前で馬を降りる。銅像には馬をつなぐ金具が付いていた。

 いつの間にか私たちの護衛として付いてきていた騎士様に、二頭の馬を預ける。


「あそこのベンチに座って少し話そうか」

 ローラン王子殿下が、ローズガゼボにあるベンチを指さした。

「はい」

 思わず笑顔になってしまう。


 馬に乗ったことで私を包んでいた変な緊張感は、すっかり吹き飛んでいた。

 今は馬に乗れた喜びとローラン王子殿下の美しすぎる乗馬姿を堪能したことで、高揚感に浸っていた。


 よく考えてみれば、ローラン王子殿下とはまだまともに話せていないが、一緒に馬に乗っただけで親近感も湧いている。

 前世でいうところの、ツーリング仲間みたいなものだろうか。


 2人並んでベンチに腰掛けた。ローラン王子殿下が優しく話しかけてくれる。

「リジー、今回の結婚で不安なことや心配なことがあれば教えて欲しいんだけど」


「不安や心配…ですか」

 少し考えて、前から気になっていたことを訊いてみた。

「ローラン王子殿下は、私への褒美として結婚、なんて嫌じゃないのですか?なんだか、とても申し訳ない気がしています」


「ああ、それね…」

 ローラン王子殿下は、ぽんと手を打った。

「その質問に答える前に、先に2人で約束したいんだけどいい?」

「約束…ですか?」

「そう。約束!」


 ローラン王子殿下がじっと私の目を見つめてくる。

 何か大事な約束があるのだろう。

 覚悟を決めて、私も目を見ながら頷いた。

 それを見て満足そうに、ローラン王子殿下が言った。


「僕たちはこれから結婚するのだし同い年だから、敬語は禁止。僕のことも、ローランと呼んで。王子殿下とかはダメ。それが約束!」

「…。わかっ…た。ローラン…」


「合格!じゃ、さっきの質問に答えるね。まず、僕の結婚に大切なことは、皆の期待に応えられるかどうかなんだ。リジーのことは父上が本当に感謝していたし、父が望む結婚なんだ。僕にとっては本望だよ」

「…そうなんだ…。でも、好きな人とか、いるんじゃないの?」


「好きな人?リジーはいるの?」

 質問に質問で返された。まぁ、いいか。

 私は…少し考える。

 騎士様のことを好きだと思ったけど、あれはアイドルが好き、というのと同じ感情だから、恋愛の好きとは違う。

「私は好きな人はいないわ」

「そっか。僕も好きな人はいないよ。リジーこそ、褒美が僕との結婚だと言われて嫌じゃなかった?」


 うわ、どうしよう。

 私の今世での人生目標が「言いたいことを我慢しない」なので、ここは正直に話してしまおう。


「正直に言うとね、嫌だった…。気を悪くしないでね。ローランが嫌とかじゃなくて、王家に嫁ぐことが不安で…。でも、それも昨日、友人と話してるうちに楽しみになったから、今は嫌じゃないよ」


「そうなんだ。今が嫌じゃないのなら、よかった。僕とリジーは相性がいいはずなんだ。だって、リジーは水属性でしょ?僕は結婚相手に水属性がいいって思っていたから、父上から王子の1人をリジーの結婚相手にするってきいたときに、自分から立候補したんだよ」



ありがとうございました。

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