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123.救出作戦3

「じゃあ、いくよ!」

 どこからか聞き慣れない声が聞こえた。


 いったい誰の声?


 キョロキョロと辺りを見回すが、ノーム様とローランの姿しか見えない。

 私が小さくなったので、見えていない人がいるのかもしれない。


 だって、自分が小さくなると世界が一変した。何もかも大きくて、不思議な気分だ。

 

 いつもとあまりにも違う世界だから、聞きなれない声の主を探すのなんて無理だろう。


 私は声の主を探すのを諦めて、目の前のグリージョを見た。

 背の高さがほぼ同じになったグリージョと目が合う。


 へー、グリージョって真っ黒だと思ってたけど、よくみると体が迷彩みたいな模様になってるんだなー。黒がグラデーションになっている。

 大きくてまん丸な瞳がとてもかわいい。


「何をキョロキョロしてるんだ。さあ、行くよ。ちゃんとついてきて。迷子にならないように」


「え?」


 グリージョが喋ってる。


 今まで「ピィ」「ピィ」としか言わなかった(鳴かなかった?)グリージョが、ハッキリと喋っていた。


 私はグリージョを見つめたまま、その場で固まってしまった。


「あんまりゆっくりもしてられないから、早く行くよ」


 もう一度グリージョが喋った。

 そして、小さな手で私の腕を掴んだ。


「……う、うん。分かった。行こう」


 その時、ローランの声が聞こえた。


「リジー、気をつけて! 危ないことは絶対しちゃダメだよ。何かあったら、すぐに連絡して!」


 ローランの顔も体も信じられないほど巨大だ。声は地響きのように聞こえるけど、ローランの声を全身に浴びるのは意外と心地いい。


「大丈夫! 無茶なことはしないから! では、いってきます!」


 私はローランに向かって精いっぱい大きな声で答えた。ローランに自分の言葉が伝わっていることを確認してから、グリージョの後について、目の前のトンネルの中に入った。


「うわ、何これ! 真っ暗で何も見えないわ!」


 トンネルをしばらく歩くと、外からの光が全く無くなり、真っ暗になって、思わず立ち止まる。


「ああ、これを飲むといいよ。暗視のポーションだ。さあ、上を向いて、口を開けて」


 私は何も見えないので、グリージョに言われるがままに、口を開けて上を向いた。


 すると、口の中に液体が注ぎ込まれる。それをごくりと飲み込んだ。


「うわ、甘い」


 すっかり飲み込んで口の中には何もないはずなのに、まだ口の中が甘ったるい。

 

 口の中から甘みを消そうともぐもぐ苦戦していると、じわじわと視界が明るくなってきた。


 そして、あっという間に太陽の光の下にいるかのように、周囲が明るくなった。


 これで何も問題ない。

 あとは、魔女のところへ行くだけだ。


「グリージョ、すごいわね! はっきり周りが見えるようになったわ。真っ暗だったのが嘘みたい。さぁ、行きましょう!」


 私の言葉にグリージョは頷くと、くるりと踵を返して歩き出した。私もグリージョの後をついて行く。


 地中の道は迷路のように入り組んでいた。途中で次々に枝分かれしている道をグリージョは迷うことなく、右へ左へと進んでいく。


 私も途中までは、一つ目の角を右に曲がって、次の角は左……と覚えながら歩いていたが、あまりにも分かれ道が多くて、道を覚えることは断念した。


 もしグリージョとはぐれたら、絶対迷子になってしまう……。


 そう確信したから、必死でグリージョについて歩いた。


 いつの間にか魔女への恐怖心は無くなっていた。


 地下の道を歩いていて、分かれ道の多さに驚いたが、それよりもっと驚いたのは、道中に出会う生き物の多さだ。アリやらミミズやらオケラやら、他にもよくわからない多くの生き物たちと出会った。


 グリージョは、道中に出会ったどの生き物とも知り合いらしく気楽に挨拶しているけど、その横で私は毎回びくんと心臓が止まりそうなほど驚いていた。


 特に、さっき会ったモグラは大きすぎて、いまだに足の震えが止まらない。

 モグラって、あんなに大きいのね。

 地下のトンネルいっぱいの大きさだった。

 天井に頭がついていたと思う。


 巨大なモグラが目の前に現れて足がすくんで動けなくなった私の横で、巨大モグラと親しげに話すグリージョを見て、グリージョが本当に頼もしかった。


 グリージョは本当に頼りになる。

 地下生活には欠かせない。


 モグラと別れた後も、グリージョはどんどん歩いていった。私は黙ってグリージョについて歩いた。


 ただ、モグラと会ってからは、どんな生き物と出会っても驚かなくなった。いつのまにか、地中のトンネルを歩くことに慣れていた。


 そんなことより、だんだん足が痛くなってきた。慣れないでこぼこ道をグリージョのペースに合わせて歩き続けるのは結構しんどい。これなら、走ってるほうがマシかもしれない。


 地中を歩くことに慣れてきた私は、考え事をする余裕がでてきた。


 私とグリージョは身長が3cmほどだ。おそらく人間の大人が1歩歩く間に、50歩くらいは歩かないといけないだろう。


 魔女の家は、我が家と王宮の間にあるはずで、人間の足なら20〜30分というところだと思う。


 ということは、いったい後どれくらい歩けば着くのだろう。


 ダメだ。考えてみたけど、想像つかない。


 歩き疲れたな。


「ねえ、グリージョ。ちょっと休憩しない? 疲れちゃった……」


 私が大きめの声で言ったのに、グリージョは聞こえないふりだ。何の反応もしてくれず、ずんずんと進んでいく。


 グリージョ、ひどい。ちょっと休憩させてくれたら、それでいいのに。


「瞬間移動できたらな……」


 自分でそう言ってみて、ハッとした。


 待って。私、瞬間移動の魔法を使えるようになってたんだ。遠くへの移動は無理だけど、ここから魔女の家なら移動できるはず。


「グリージョ! 私、魔女の家まで瞬間移動できるから、私に捕まってよ」


 グリージョに向かってそう言うと、今度はグリージョがくるりと振り返って言った。


「残念。着いたよ。もっと早く言ってくれたらよかったのに……」


「え?」


 よく見ると、グリージョは小さなドアの前に立っていた。

 ドアの大きさは今の私たちが通れるくらいなので、高さ5cmくらいだろうか。


 グリージョは迷わず、そのドアを開けた。

ありがとうございました。

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