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12.顔合わせ

 翌日、ローラン王子殿下との顔合わせのために、正装に着替えた。

 女官教育は、私だけ午前休暇をもらっている。


 イザベルとステイシーは今頃頑張っているはずだ。

 昨日は動揺して、ろくにアリス様たちの働きを覚えることができなかった。

 今日も休んだから、一人だけどんどん遅れてしまうな…。

 

 休んだ女官教育のことを未練がましく考えながら化粧台に座っていると、「リジー様、できました!」と声がした。

 私のヘアメイクが終わったみたいだ。


 意識を戻して、目の前の鏡に映る自分を見る。

 メイドのアンが「私たちの集大成をお見せします」と鼻息荒く宣言していたが、集大成、凄すぎる!

 これでは別人だ。素晴らしい出来栄えなんて、そんな生ぬるいものではない。完全に別人が出来上がっていた!

 アン、ありがとう!

 これなら美男美女の王族相手でも、気後れしないでやっていけそうだ!


 緑色の目が普段の倍の大きさに見えるし、肌の気になる部分もきれいに隠れて、艶々の陶器肌になっている。

 髪型だって、ゆるくウェーブをかけて高めの位置でハーフアップにしたポニーテールがとても可愛い。

 まったく、いったいどんな魔法だよ、これ!

 アンたち、めちゃくちゃ凄いな!

 私も早くこういう風にできるようになりたい!


 鏡の中に映る自分をマジマジと見ていると、背後から「リジー、可愛いよ」と声がした。父と母だ!2人とも非常に満足そうだ。


 史上最高に綺麗になった私は、両親と一緒に王宮へ向かう。

 正門の前で馬車を降りると、先日も私たちを案内してくれた第一騎士団副団長のパトリック様が迎えに来てくれた。知っている騎士様が来てくれたことで緊張感が和らぎ、思わず笑顔になる。

「ハリス子爵ご夫妻とご令嬢、お迎えに参りました。さぁ、どうぞこちらへ」

 騎士様のきびきびした無駄のない動きに惚れ惚れと見入ってしまった。

 ああ、やっぱりかっこいい。


 騎士様の広い背中だけを一心に見つめ歩いていると、あっというまに顔合わせの場である「天使の間」へ辿り着いた。

 部屋の中をぐるりと見回す。

 巨大なシャンデリアがまず目につくが、天井や壁に天使たちの絵が描かれていて、とても幻想的な部屋だ。

 中央に置かれたテーブルセットは巨大で、20人位は余裕で座れるのではないかと思う。


「国王陛下が入られます」

 王家の侍従長だと挨拶してきた初老の男性が、私たちに告げた。

 一瞬にして、部屋が緊張に包まれる。

 そこへ、国王陛下と側妃のメラニー妃殿下、ローラン王子殿下が、別の騎士様に先導されて仲良く部屋に入ってこられた。

 私たちは最上位の礼をとる。


「顔をあげよ。今日は私的な席だから、そのような気遣いはいらぬ」

国王陛下に促され、顔をあげた。

 

 国王陛下たちがこちらに歩み寄り、握手を求めてこられた。それぞれ順番に、挨拶と名前を名乗り、握手の手を2回振る。

 ひととおり挨拶を終えた後、国王陛下たちがテーブルについた。


 それを見て、私たちもテーブルにつく。同じテーブルにつくなんて恐れ多いが、テーブルが巨大で国王陛下たちと距離があるのが救いだ。

 侍従と女官がてきぱきとお茶の準備をする様子をただ黙って見る。


 そして、はっと気づいた。

 皆がテーブルについたとき、この光景は既視感があると思っていたが、ああ、前世のお見合いだ。

 若い男女とそれぞれの両親が、テーブルに向かい合って座っている。

 私たちの間に立つ侍従長が仲人というところか。侍従長ではなく女官長のほうが、この場合仲人っぽさがより出たような気もする。


 私は前世ではお見合いをする機会がなかったから、これが私の初お見合いだ。

 もちろん前世のお見合いとは全然違うけど、なんとなくそう思うことで落ち着いてきた。


 お茶の準備が整うと、国王陛下が口を開いた。

「ハリス子爵とご夫人、此度は突然の申し出で悪かったね。私のかわいい末娘のエミリーをご令嬢に助けていただき、心より感謝している。御礼に、我が息子ローランとの婚姻を通じてより親しくと考えたのだが、それで足りるだろうか」


父が答えた。

「滅相も御座いません。国王陛下、勿体ないお言葉、有難く頂戴いたします。こちらこそ、ふつつかな娘でございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます」


「そうか。それでは、今後の具体的なことについては改めて連絡するようにしよう。それでいいかな?」

「はい、陛下の指示に従います」


 あ、せっかくもの凄く化けたけど、もうこれで終わりなのかな?

 顔合わせって、本当に顔を合わせただけで終わりなんだ…。


 国王陛下と父との話は一瞬で片が付いたので、その呆気なさに呆然とする。


 すると、それまで黙っていたローラン王子殿下が国王陛下に向かって口を開いた。

「父上、それではいいですか?」


 いままで緊張していたのと、結婚相手だという気恥ずかしさで、ローラン王子殿下の顔をまともに見られなかったが、この言葉をきっかけに王子殿下の顔をじっくりと観察する。


 うわ、想像以上の美形だ!

 王族は美男美女だと分かってはいたが、想像を超えてきた!

 息を呑むほど美しいとは、ローラン王子殿下のことを言うのだと思う。

 凛々しい眼差しが印象的だが、瞳の色はヘイゼルグリーンで、私の瞳の色と似ているのがちょっとうれしい。

 端正な顔立ちに金髪が似合っていて、どこからどう見ても王子様だ。


 自分の貧弱なボキャブラリーでは、ローラン王子殿下の美しさが表現できない。

 とにかく美形!それしか言えない。

 そんな希代の美形王子様が私に向かって声をかけた。


「リジー、薔薇が綺麗な庭園を見せたいから、一緒にきて」






ありがとうございました。

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