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114.友達3

「そうね。もう一度ローラン王子殿下と婚約できたら、そんなうれしいことはないけど……、正直に言って、それはとても難しいことなの。二人とも分かると思うけど。国王陛下が認めてくださらないわ。どうやったら私たちのことを認めてくださるのか、私には想像もつかないし……」


 私がそう言って頭を抱えると、いつの間にか、イザベルとステイシーが私の隣りにいた。


「確かに、一度大々的に婚約不成立となってしまったから、もう一度婚約するのは敷居が高いわね」


 ステイシーが腕組みしながら言った。


 私がコクコクと頷いていると、イザベルが言った。


「私もどうすれば国王陛下が二人の婚約を認めてくださるのか、想像がつかないわ。せっかく二人とも想いあっているのだから、なんとか上手くいくといいのだけど……」


「難しいわねー……」


 三人で頭をうな垂れる。


 しばらくそのままの体勢で、何かいい方法はないか、考えてみるが、全く思いつかない。

 

 すると、ステイシーが口を開いた。


「王宮の中で、いろいろ聞いてみましょうか。国王陛下がどういう場合に、認めてくださるのか?」


「え、それって、どうやって聞くの?」


 思わず私が聞き返すと、ステイシーは「分からないけど」と笑った。

 私も笑って言った。


「そんな風に言ってくれただけで、うれしいよ。期待はしないけど、もし何か気づいたことがあったら、是非教えてね」


 それまで黙っていたイザベルが、思いつめたように言った。


「一つあるわ!」


「え?」


 私とステイシーが、同時にイザベルの顔を見る。


「ヴィオラ様よ。……国王陛下の3番目の側妃のヴィオラ様は、ずっと病気で寝込まれているらしいという噂よ。限られた女官しか詳しいことは分からないけど、ここのところ公式行事も出てらっしゃらないし、病気というのは本当なのじゃないかと思うの」


 その言葉にステイシーも同意した。


「私もその噂は聞いたわ! 確かに、先日のオレリア王女殿下のお誕生日会のときも欠席されていたわね。あのときは、ヴィオラ様は他にご予定があるという話だったけど、お誕生日会なんて前から分かっている予定なのに、変だなとは思ったのよ」


 ふぅん。

 ヴィオラ様は確か、エミリー王女殿下を産んだお妃様だったと記憶しているけど、ご体調が優れないのか……。

 でも、そのことと今回のことはどう繋がるのだろう?


 私には意味が分からないので聞いてみた。


「イザベル。それで、そのヴィオラ様がどう関係あるの? 言っている意味がまだよく分からなくて……」


 イザベルは私の手を取って、力強く言った。


「リジー。リジーが黒猫に変えられたエミリー王女を元の姿に戻したことを覚えていない? あの時は私もステイシーも、目の前で起こったことが信じられなくて本当に驚いたけれど、多分、リジーにはきっとそういう能力があるのよ。もしかしたら、リジーは自分でも気づいていないかもしれないけど、あの場に居合わせた私は、そう確信しているの」


「う、うん」


 私がなんとか頷くと、イザベルは続けた。


「あの時、国王陛下が、ローラン王子殿下との婚約をご褒美としてくださったでしょ? だから、同じように、今度はヴィオラ様をお助けすれば、またローラン王子殿下との婚約をご褒美としてくださるんじゃないかしら?」


「確かにそうね。それならもう一度婚約できるわね」


 ステイシーもイザベルに同意する。

 私は二人に尋ねた。


「ちょ、ちょっと待って。……まず、ヴィオラ様がご病気かどうかも分からないでしょう? それに、もしご病気なんだとしても、お医者様が診られているから、私なんかが出る幕が無いと思うけど……。王家の侍医はとても優秀だし、私はそもそも医者ではないし」


 すると、ステイシーが言った。


「もしご病気なら、そうかもしれないけど。もしも、もしもよ。エミリー王女殿下のように黒猫とかに変えられてしまっていて、実はヴィオラ様が行方不明だったりするかもしれないわよ。それなら、リジーの出番はあるわね!」


「いや、ちょっと待って。それはさすがに、想像力が逞しすぎるというか、無いと思うわ」


 私が笑うと、ステイシーは「本気なのに……」と頬を膨らませた。

 イザベルが真顔で言う。


「リジー。冗談じゃないの。ステイシーが言ったこともあり得ると思っているわ。……私、王宮で噂を聞いたんだけど、王族には魔女からいろいろと呪いをかけられているみたいで、ヴィオラ様にも呪いがかけられている、と聞いたことがあるの」


「え? それは本当なの?」


 私が驚くと、イザベルは真剣な顔をして頷いた。それからステイシーに向かって話す。


「だから、まずは、私とステイシーでヴィオラ様のことを探ってみない? 何か分かるかもしれないから」


 すると、ステイシーも頷いた。


「分かったわ。ヴィオラ様のことを怪しまれないように探ってみる」


「二人とも、あんまり無茶なことはしないでね」


 私が心配になってそう言うと、イザベルもステイシーも「大丈夫。そんな無茶なことはしないから」と笑った。


 イザベルとステイシーは「これから側妃のヴィオラ様のことをいろいろと聞き出すわ」と息巻いているが、正直に言うと、仮に何か分かったとしても、私が出る幕は無いと思う。

 そもそも私はヴィオラ様と、ほぼ話したことがない。お顔を何度か拝見した程度だ。

 しかも、今の私は自由に王宮に出入りできるわけでもない。

 だから、イザベルとステイシーが考えてくれた、その作戦は、難しいと思う。


 でも、二人がせっかく私のことを思って言ってくれているので、あんまり否定するのも違う気がする。

 なので、一応、ヴィオラ様の秘密を探るお願いをすることにした。


「これがうまくいって、また国王陛下から、ローラン王子殿下との婚約をご褒美にいただけるといいわね」


 イザベルとステイシーはすっかりその気になっている。


 私はまだ、どうやったらうまくいくのか正解が見えていないが、一応、うんと頷いた。


 それからすぐに、二人が女官の任務に戻る時間となった。

 二人は、何か分かったことがあればすぐに私に連絡してくれる、と言って、それぞれの持ち場へと戻って行った。

 私も部屋を出て迎えの馬車に乗り込み、帰宅の途についた。

ありがとうございました。

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