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110.捜索4

110話になりました。物語も佳境に入っています。なんとか最後まで書ききりたいと思っています。

読んでいただいたり、ブックマークをしていただいたり、評価していただいたり、感想を書いていただいたり、本当にありがとうございます。励みになります。

 馬車はすぐに王宮へ着いた。

 馬車を降りると、以前登城したときに私を案内してくれた第一騎士団副団長のパトリック様が待っていた。

 あれから、もう1年がたつ。

 前にお会いしたのはローランと婚約するときだった。

 懐かしいな。


「パトリック様、ご無沙汰しております。私のことを覚えていらっしゃいますか? 以前もこのように案内していただきました」


 私が声を掛けると、パトリック様も覚えてくれているようだ。


「ハリス子爵のご令嬢、ご無沙汰しております。しっかりと覚えております。さぁ、まいりましょう」


 そう言って、きびきびと私を案内してくれた。


 パトリック様に付いて、王宮の長い回廊を歩く。

 見覚えのある豪華な装飾は、どれも懐かしい。働いている女官たちを見つけると、思わず目がいってしまう。知り合いも何人かいるはずだ。


 私がきょろきょろしていると、あっという間に目的の部屋へと着いた。

 パトリック様の案内で部屋に入る。部屋の中には、まだ誰もいなかった。


「こちらにお掛けになってお待ちください。それでは私はここで失礼します」


 パトリック様は、部屋の真ん中に置かれた立派なソファセットまで私を案内した後、颯爽と去って行った。

 それからすぐに、ひとりの女官がティーセットを持って、私のところにやって来た。


「あれ?」


 女官の顔を見て、懐かしい顔にビックリした。思わず息をのんでしまった。

 間違いない、イザベルだ!

 

「イザベル!!!」


 思わず大きな声を出して立ち上がってしまった。

 すると、イザベルは手に持っていた茶器をテーブルに置いて、私をぎゅっと抱き締めてくれた。


「リジー!! 元気だったんだね」


 イザベルの目には涙が浮かんでいる。

 私も自然と涙が溢れてきた。

 イザベルの言葉に大きく頷いてから、鼻声で言った。


「イザベル、会いたかった!」


 まさかここでイザベルと会えるなんて思わなかった。

 イザベルと会えて、本当にうれしい。

 一緒に女官教育を受けていた時のこと、それからその後、ローランの婚約者となって、私の女官としてついてくれたときのことを、一気に思い出す。


 しばらく二人で抱き合って泣いた。涙がどんどん溢れ出てくるので、言葉が出なかった。


 ひとしきり泣いた後、イザベルがすっと私を抱いていた腕を離した。


「リジー。会えてうれしいわ。元気そうでよかった。リジーのこと、本当に心配だったの。でも、会わないうちに、綺麗になったんじゃない?」


 イザベルは、そう言ってにっこり微笑む。


「イザベル、心配かけちゃって、ごめんね。私は全然大丈夫だよ。イザベルも、元気そうでよかった。女官姿が板についているね。イザベルのほうが、会わないうちに、綺麗になったんじゃない?」


 私がそう言って笑うと、イザベルも笑った。


 その時、コンコンとノックする音が聞こえた。


「ローラン王子殿下が来られたわ。リジー。また今度ゆっくり話そうね」


 イザベルがそう言ったので、私は頷いてソファに座り直す。イザベルは、ローランのお茶を用意するため移動した。


「ローランです。入るよ」


 ローランが扉をゆっくりと開けて入って来ると、私の顔を見るなり言った。


「リジー、大丈夫? イザベルとは話せた?」


「話せたわ。ローラン、ありがとう! まさかここで、イザベルと会えるなんて思わなかったから。本当にうれしかった!」


 ローランの心憎い計らいのおかげで、イザベルとこうやって再会できた。

 本当に、ローラン、ありがとう!


 ローランがソファに座ると、イザベルがローランにもお茶を淹れながら言った。


「ローラン王子殿下、この度は私たちが再会する場を設けていただき、ありがとうございました。私はこれで外しますが、何かあれば仰ってください」


 その言葉に、ローランが私とイザベルに言った。


「私とリジーの話が終われば、ここにステイシーも呼ぶので、しばらく三人で話すといいよ。この部屋をそのまま使えばいいから」


「ローラン! ステイシーにも会えるの? ありがとう! しかも、三人で話せるなんて、夢みたい!」


 私は思わずソファから立ち上がってしまった。


 ローランって、なんて気遣いができる男なんだ!

 前から知ってはいたけど、改めて、ローランの素晴らしさを実感する。

 こんな素敵な気遣いをしてくれたら、ますます惚れてしまう。


 イザベルも「ローラン王子殿下、ありがとうございます」と感激しながら、部屋を出て行った。


 ローランが私に言った。


「さぁ、それじゃ、これからの話をしようか。さっさと済ませてしまわないとね。ステイシーとも早く会いたいだろう?」


「ローラン、なんてお礼を言えばいいんだろう。私。……本当にありがとう! イザベルだけじゃなく、ステイシーも会わせてくれるなんて、そんなこと考えもしなかったから。うれしい。本当にうれしいわ! ありがとう!」


 私が何度もローランにお礼を言うと、ローランは苦笑しながら言った。


「お礼はいいから。まずはグリージョに会わせてよ。連れてきてくれた?」


 その言葉に私は頷いてから、ポケットに忍ばせていたグリージョを取り出してテーブルの上に置いた。そして、グリージョに向かって言った。


「グリージョ。ローランに、地下を捜索してきた様子を見せてあげて」


 グリージョは「ピィ」と鳴いてから、テーブルをトコトコとローランの前まで進む。ローランはグリージョを手のひらに乗せて、顔の前に近づけた。


 ローランがグリージョの大きな目を見る。グリージョもローランの目を見た。

 

「おお!」


 すぐに、ローランが驚きの声をあげる。


「始まった?」


 私が聞くと、ローランは頷いた。


 グリージョの地下捜索ダイジェスト映像が、ローランの脳内で再生を始めたようだ。

 私はお茶を飲みながら、ローランとグリージョの様子を見守る。


 数分後、ローランはグリージョから目を離して、私の方を見た。その顔は明らかに興奮している。


「これは凄いね。思っていたより映像も鮮明だ。それにしても、地下からいろんな人の家に侵入できるなんて知らなかったな。これならそのうち、魔女の家も分かりそうだ」


「うん。毎日、グリージョにいろんな所に行ってもらえれば、そのうちタミアさんにも辿り着きそうな気がするわ」

ありがとうございました。

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