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11.授業3

今日3回目の投稿です。よろしくお願いします。

 翌朝、王宮の馬の目部屋で待機していると、私の担当女官のアリス様がやってきた。

 今日からはイザベルとステイシーと別れて、アリス様に付いて女官のお勉強をするのだ。

「アリスお姉様、おはようございます」

「おはよう、リジー。では、さっそくマルゴット王女殿下のところに行くからついてきてね。マルゴット王女殿下はとてもお優しいから何も心配する必要はないわ。それに、王女殿下のお世話は私達がするから、あなたはただ横で見ていればいいの」

 アリス様が気さくに話しかけてくれるので、少し緊張が解れた。


 マルゴット王女殿下は第1王女で、年齢は19歳。確か近いうちに外国の王族に嫁がれると聞いている。

 マルゴット王女殿下に付いている女官は5名いて、そのうちの一人がアリス様ということだった。


「ここが、マルゴット王女殿下のお部屋よ」

 アリスお姉様はそう言うと、扉をノックした。「アリスです。失礼いたします」

 中から「どうぞ」と声がきこえたので、部屋の中に入る。

「!!」

 天蓋付きの大型ベッドの上に腰かけ、こちらを見ていたマルゴット王女殿下の美貌に圧倒された。腰まで伸びた艶やかな茶色い髪が印象的で、大きな青い瞳に吸い込まれる。

 こんなに美しい人がいるのか・・・。


「マルゴット王女殿下、こちらは女官見習いのリジーです。今日からしばらく、私について女官の勉強をしますので、どうぞよろしくお願いします」

 アリス様が私のことを紹介してくれたので、気を取り直して自己紹介する。

「はじめまして。マルゴット王女殿下。私は女官見習いのリジー・ハリスです。ご迷惑をおかけしないようにしますので、どうぞよろしくお願いします」

「はじめまして。リジー。あなたとは、先日謁見の間で会ったわね。正装とお仕着せだと雰囲気が違うから、同じ人だとは気づかなかったわ」

 にっこり笑って、マルゴット王女殿下が手を出してきた。慌てて王女殿下の手を取り握手する。


「そういえば、リジーは私の義妹になるのでしょ。ローランと婚約すると聞いたけど」

 マルゴット王女殿下の爆弾発言に、アリス様が反応する。

「え?リジー、あなた、そうなの?」

 気付けば、他の女官たちも私達のもとにやってきて、全員が私のことを見る。


「・・・いや・・・あの・・・そういうご褒美を国王陛下が・・・という話はききましたが・・・」

 私がしどろもどろに何とか言葉を発すると、マルゴット王女殿下が「おめでとう」と拍手をし、つられて女官たちも口々に「おめでとう」と言いながら拍手してくれた。皆ニコニコ微笑んで私を見る。

 どうすればいいのか分からず、思わず下を向いてしまった。もうこれ以上は何を話したらいいか分からない。

 はぁ・・・どうしよう。


 それからマルゴット王女殿下の支度を女官たちがテキパキとお世話していたが、全然頭に入らないまま午前中を終えアリス様と別れた。


 ◇◇◇


 馬の目部屋でイザベルとステイシーと合流し、3人で昼食をとるため食堂へと向かう。

「リジー、顔色悪いけど、大丈夫?体調が悪いの?」

 ステイシーが心配そうに私の顔を覗き込んできた。ステイシーの優しい態度に、それまで抑えていた感情が我慢できなくなった。思わず大きな声が出てしまう。

「ステイシー、イザベルも!聞いてくれる?・・・もう、私どうしよう」


 気付いたら、涙が流れている。次々に涙が溢れて止まらない。

「どうしたの?リジー?大丈夫?リジーはここで座ってて」

 食堂の人目につかない席に私を座らせて、2人が食事の準備をしてくれている。

 その間も私は泣き続けた。


 昼食の準備が整うと、イザベルが私にオレンジジュースを飲ませてくれた。少し気分が落ち着く。

「ありがとう、イザベル。もう大丈夫。・・・2人とも私の話を聞いてくれる?」

 2人は真剣な顔で私の目を見て頷いた。


「昨日、国王陛下から書状がきてね、先日の褒美にローラン王子殿下と私の結婚を許可する、って書いてあったの。でも、そんな褒美なんて私いらない。けど、家族は大喜びだし、今だって、マルゴット王女殿下やお姉様方にすごくお祝いされて。もうどうしたらいいのか分からないの」

「リジーはローラン王子殿下が嫌なの?」

「ううん。ローラン王子殿下のことをそもそも知らないから」

「リジーはあまり結婚のことを考えてなかったから、家を出るのが不安なんじゃない?」

「・・・うん、それはあるかもしれない」


 イザベルが言う。

「リジーは結婚を少し難しく考えすぎなのかもしれないよ。ローラン王子殿下は私たちと同じ15歳だし、意外と話してみたら気が合うかもしれない。確かに王族に嫁ぐのは大変そうだけど、王子様は8人もいらっしゃるのだし、そんなに負担ではないはずよ」


 ステイシーも続ける。

「そうよ。ローラン王子殿下は7番目でしょ。大変なことは6番目までの王子様たちが請け負われるはずだから、気楽に過ごせるわ」


「そうかな?」

 2人の話にすっかりそんな気がしてきた。

 私が元気を取り戻した様子を見て、2人が軽口を叩き合う。

「リジーがローラン王子殿下なら、私はエリック王子殿下を狙おうかな?」

「私はアラン王子殿下を狙うわ」

「そしたら皆姉妹になるね」

「皆で王族になるのって、楽しそうね」


 2人の話をききながら、本当に3人とも王族になれたらいいのに、と本気で思い、そんな自分に笑ってしまった。

 さっきまであんなにローラン王子殿下との結婚を嫌だと思っていたくせに。


「3人一緒に王族になれるなら、ちょっと楽しみになってきた。ステイシー、イザベル、ありがとう!」

 本当に持つべきものは友だ。


「ローラン王子殿下は成人まであと3年あるけど、エリック王子殿下はあと1年だから、私の方が先に結婚しちゃうかもね」

とどや顔をしてきたステイシーがおかしくて、3人で大笑いした。




ありがとうございました。

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