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107.捜索

 翌日、早速グリージョとタミアさんの捜索を開始する。

 我が家では、グリージョには地下室で生活してもらうことにしたので、グリージョに会いに地下室へ入った。


 実は昨日、グリージョと生活するにあたって、ノーム様から注意事項を伝えられていた。

 グリージョは、普段地底に住んでいて日光が苦手なので、日光の当たらない部屋に住まわせてほしいということと、一日三回パンと水を与えてほしいということ。

 後は、ほったらかしにしておいても大丈夫。名前を呼んで待てば、勝手に来てくれるとのことだった。


 だから、私は朝食のパンを一かけらと水筒を持って、地下室の真ん中辺りで立って待っている。

「グリージョ」

 呼んでみるが、物音一つしない。


 我が家の地下室は貯蔵庫として使っていて、ワインや食料など様々なものが置かれている。その上に、かなり広い。

 正直言って、どこにグリージョがいるのか、まったく分からない。

 グリージョの身長は、僅か3センチメートルほどしかないし、全身真っ黒なんだから。


「グリージョ、どこ?」


 もう一度小声で呼びかけてみる。地下室に、私の声が小さく反響した。


 その時、黒い影が目の前を横切った。


「あ!」


 薄暗い地下室の中では、よく分からない。確かに今、黒い影が横切った気がするのに……。

 

 そう思っていると、耳元で「ピィ」と聞こえた。この声は、グリージョの声だ。


「グリージョ! ……ん?どこ?」


 声はするけど、姿は見えない。私がキョロキョロしていると、トコトコと私の右腕の上を歩くグリージョが見えた。


「あれ?グリージョ! ……もしかして、私の肩に乗ってた?」


 グリージョは、私の言葉に「ピィ」と反応した。なんとなく「そうだよ」と答えてくれている気がする。


「グリージョ、会えてよかった! まずはご飯にしよっか」


 地下室の奥に小さな丸椅子があったので、私はそれに座る。すると、棚の上に乗ったグリージョとちょうど目が合う高さになった。


 水筒の水を持ってきた小さなお皿に入れる。グリージョは、それを屈んで器用に飲んだ。

 パンは米粒ほどに小さくちぎって、グリージョに渡す。グリージョは食べるのが早いから、次々にちぎって渡した。


 グリージョの食事がひと段落ついたら、作戦会議だ。


「どうやって、タミアさんを探す? ……っていうか、その前にグリージョはタミアさんのこと、知らないよね? まぁ、私も知らないんだけど……」


 この意思疎通もおぼつかないグリージョと、まだ一度も会ったことがないタミアさんをどうやって探せばいいのか、いきなり途方に暮れた。


 それでも、私が知っている知識をグリージョにペラペラ喋ってみることにする。


「タミアさんには、双子の妹でハミアさんという人がいるの。そのハミアさんには、私はとてもお世話になったのよ。私が大好きな人なの。双子というくらいだから似ているんじゃないかと思うんだけどね。ハミアさんは、見た目はお婆さんなのよ。それでね、……」


 グリージョはおとなしく、私の長い話を最後まで聞いてくれた。


「……という感じなんだけど、どうやって探そうか?」


 私がタミアさんについて知っている限りのことを言い終わると、グリージョは「ピィ」と言って、いきなり棚の上を歩き始める。

 トコトコ歩いているが、意外と速い。


 私は急いで、グリージョについていく。


 グリージョは地下室の奥まで進んだ。

 いままで気づかなかったが、かべに小さな穴が開いている。

 グリージョは迷わず、その中に入って行った。


「え?待って!グリージョ?」


 私がその穴に向かって声をかけたが、反応はない。穴を覗いてみても真っ暗で何も見えない。


 穴の奥には何があるんだろう?


 気になったので、ランタンを持ってきて、穴の奥が見えるようにかざした。


 すると、その穴からは道がどこまでも続いているように見えた。


 グリージョは、この道をまっすぐ進んで行ったんだわ。


 ここからは、どうすることもできない。

 グリージョに任せるしかない。私は、昼食後にまたパンと水を持って様子を見に来ることに決め、自分の部屋へと戻った。


 部屋に戻ってしばらくすると、玄関のほうが騒がしいことに気づいた。


 誰か出かけるのかしら?


 玄関ホールへ様子を見に行くと、ちょうど父が出掛けるところだった。


 玄関には王宮からの使いの者が、父を待っている。


 父は私を見つけると、私に向かって言った。


「ああ、リジー。いまから国王陛下のところへ行ってくるよ。昨日、ローラン王子殿下から話もあったし、悪いようにはしないから安心しなさい」


「お父様、ありがとうございます。お帰りをお待ちしております。お気をつけて」 


 私は父の手を取り、挨拶をした。


 国王陛下は、どんな話を父にするつもりなのか。


 分からないから、父を見送りながらドキドキが止まらなかった。


「ねぇ、リジー。少しお話しましょうか」


 父を乗せた馬車が見えなくなると、母が声をかけてきた。


「はい」と頷き、二人で応接室へ入る。

 アンが素早く、お茶の用意をしてくれた。


 母が早速口を開く。


「リジーは知っていたかしら? いま、ナディエディータ王国には8人王子様がいらっしゃるけど、ローラン王子殿下以外の7人の王子様には全て婚約者がいらっしゃるのよ」


「それは本当ですか? 知りませんでした」


「仕方ないわ。領地に行っていた、この1年足らずの間に、バタバタと婚約されたのだそうよ。私も聞いて驚いたわ。それぞれの婚約式が盛大に行われたんだそうよ。リジーの時のようにね」


 そこまで話すと、母はお茶を口にした。


 へぇ、そうだったんだ。ローラン以外全員婚約したなんて、知らなかった。

 つまり、ローランの下のノア王子殿下まで婚約されたということか。

 それにしても、すごく急な気がするけど、何かあったのかな。


 私が黙っていると、母が話を続けた。


「王族の皆様はどうやら結婚を急いでいらっしゃるようなのよ。婚約されている王子様のうち、すでに成人されている王子様たちは、来月、合同で結婚式をあげられるらしいわよ」


「来月に全員ですか?」


 私が驚いて聞き返すと、母は「そうみたいよ」と頷いた。

 

ありがとうございました。

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