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106.再スタート4

 ノーム様の話に違和感を覚えたので、私は疑問に思ったことをノーム様にきいてみる。 


「私が呪いを解いたのは、エミリー王女殿下と、エリック様と、そしてローランだけです。王妃様や王子様、王女様が皆、同時に死ぬような呪いがあることは今初めて知ったのですが、それはどなたが解かれたのでしょうか?」


「ああ、それはね。エリックとローランの呪いを両方とも解ければ、国王以外の王族にかけられた呪いは全て解けるようになっていたんじゃよ」


 ノーム様が優しく諭すように教えてくれた。


 ふぅん。エリック様とローランにかけられた呪いが両方とも解ければ、他の呪いも解けるようになっていたんだ。あの刻印が何かあったのかな?

 そして、その呪いというのが、タミアさんが死ぬと、国王陛下以外の王族が皆死ぬという、なんとも恐ろしいものだったのか。

 だけど、今それが無くなったから、タミアさんが死んでも問題ないということ?

 というか、今度は、タミアさんが死なないと、国王陛下が死んじゃうという呪いがかけられている、ということだもんね?

 ううん、話がややこしい。

 でも、人の死がかかっているんだから、しっかり理解したい。だけど、正しく理解できているのか自信がない。


 私が、自分の頭を整理しようと一生懸命考えていると、ローランがノーム様に聞いた。


「つまり、父上は魔女を殺そうと必死で捜索しているということですね?」


「そういうことじゃ」


 ノーム様の言葉に、私は思わず大きい声が出てしまった。


「ええ! それって、もしかして王都で戦争が始まったりするのでしょうか?」 


「無いとは言い切れんな」


 ノーム様は穏やかに言った。


 私は、ウンディーネ様ならローランの時のように呪いを解く薬を作ることができるのでは、と思ったので聞いてみた。


「えっと……、国王陛下にかけられた呪いを解くことって、タミアさんが死ぬ以外にはできないのでしょうか? ……その、何か別の手段で解けるということはないのでしょうか?」


 ノーム様は、シルフ様と目配せしてから、私に言った。


「我々妖精には無理じゃ。……でも、呪いをかけたタミアなら、解くことができるかもしれないな……」


 そうなんだ。

 それなら、タミアさんに会ってみたい。

 誰かが死なないとダメなんて、そういうのは嫌だ。

 タミアさんがハミアさんの双子のお姉様なのであれば、もしかしたら話せば分かってもらえるかもしれないし。

 そういえば、以前、一面だけで人を判断してはいけない、と妖精の皆さんも忠告してくれた。

 ローランに死の呪いをかけた怖い魔女だから怖いけど、それでも戦争になるくらいなら勇気を出して会いに行った方がいい。


「シルフ様。私、一度、そのタミアさんに会ってみたいのですけど、会うことはできないでしょうか? シルフ様なら居場所を知っているんじゃないですか?」


 シルフ様は、私の言葉を聞いて、思いっきりしかめっ面をした。


「ええ? 何言っているの? リジーが会ったって無駄だよ。どうせすぐに追い返されるだけだから」


 私は、シルフ様の手を握っていた。


「無駄でもいいんです。とにかく会えたらそれでいいですから」


 ノーム様が私に優しく話し掛けた。


「リジー、そんなにタミアに会ってみたいと思うのは、何か理由があるのかい?」


「戦争を止めたいので、国王陛下にかけられている呪いの解き方を教えてもらいたいからです。タミアさんの双子の妹のハミアさんにはとてもお世話になりましたので、もしかしたら分かっていただけるかもしれないと思いまして……」


 私がそう言うと、シルフ様は「そんな甘いもんじゃないよ……」とブツブツ横で言った。


 ノーム様は少し考えてから、私に向かって言った。


「リジーが、ローランたちにかけられていた呪いを解いたのなら、もしかしたら、国王の呪いも解くことができるかもしれないなぁ。試してみる価値はあるじゃろ。誰もタミアの行方は分からないし、シルフもワシも知らないが……。もしかしたら、この子と一緒に探せば、そのうち行方を掴めるかもしれないなぁ」


 そして、指笛をピューと吹いた。


 すると、どこからか、高さ3cmぐらいの真っ黒な生き物がトコトコとやってきた。この生き物は初めて見る。宇宙人だろうか? 見た目は人間と同じようだともいえるが、頭が極端に大きくて二頭身くらいだ。その大きな頭には、大きな丸い目が2つついていて、ぎょろりとこちらを見ている。全部が真っ黒なので、白目がやけに目立つ。


「この子の名前はグリージョ。地底に住んでいる。タミアの屋敷はバリアで守られているので誰もその場所を知らないが、さすがに地底まではバリアが届いていないから、グリージョなら探せるだろう」


 私は、グリージョを手のひらに乗せた。こちらを見上げる大きな瞳が、どことなくレオを彷彿とさせた。


「グリージョ。初めまして。私はリジーよ。一緒にタミアさんを探してくれる?」


 すると、グリージョはにこりと笑った。真っ黒な顔に白い歯が眩しく光る。


 ノーム様が言った。


「この子は言葉は喋れないが、リジーの言うことは分かっている。一緒に暮らすうちに、意思疎通もできるようになるじゃろ」


 いつの間にか、ローランが私の隣りにきて、私の手のひらの上に座るグリージョのことを覗き込んでいた。シルフ様も同じように興味津々だ。


「へぇ。かわいいですね。初めまして。僕はローランです」


 ローランもグリージョに挨拶をすると、グリージョは「ピィ」と返した。


 ノーム様が私に言った。


「ワシが手伝えるのはこれくらいじゃ。ワシはここから離れることができん。せっかく来てくれたのに、すまないね」


「いえ。グリージョを紹介していただけたので、タミアさんと会えそうな気がします。それに、国王陛下とタミアさんのこともよく分かりました。急に来たのに、快くいろいろ教えていただき、本当にありがとうございました」


 私がノーム様にお礼を伝えると、シルフ様が立ち上がって言った。


「リジー。それじゃ、帰りましょう。家まで送るわね。ノーム、突然来て悪かったわね。ありがとう」


 私は、シルフ様の言葉に頷きながら、グリージョをポケットに入れ、立ち上がった。

 ローランが私に声をかける。


「リジー。あまり無理しちゃダメだよ。危ないことはしないように」


 私はローランに向かって「大丈夫だよ」と言ったが、その声は、シルフ様が起こした強風によってかき消された。

ありがとうございました。

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