九十八 宝箱の中身…
恵の視点
身構えながら、部屋の中を確認する…
ただっ広い部屋には何もいない
「…何もない?」
ぽつりと呟きながら、部屋へと入る
いや、真ん中に大きめな宝箱が無造作に置かれてる
「宝箱?」
私はその宝箱に近寄る。少し豪華な宝箱…
これ、ボス討伐報酬?
「…あ~なるほど~」
後から入ってきたデューナが宝箱を見て勝手に納得する。と、宝箱を蹴り飛ばす
吹き飛ぶ宝箱。
「んぉわぁぁぁー」
吹き飛ぶ宝箱から悲鳴?が聞こえてくる
宝箱が転がり止まると、中から少女が転がり出てきた
…出てきた少女は、少し左右に揺れながら周りを見回し欠伸をする
「……ふぁー…だれぇ?」
ふわふわした白い髪に巻き角の少女。まるで羊の様な少女だ
「いきなり蹴るとかぁ…酷い人はぁ…」
ブツブツと、呟いてる
「なに~してるん~ですかね~?ベル~」
そんな少女を、デューナが怖い笑顔で迎えうつ。
……私は理解不能。
「あ…アスちゃんー。でも、蹴るのは酷いよぉ…」
「相変わらず~ですね~。ベル~」
デューナの怖い笑顔を、特に気にする様子も無いふわふわ少女
そして、その様子に隣で呆れるデューナ
…この様子……慣れてる?
「でぇ、アスちゃんなにしてるのぉー?」
ふわふわ少女は首を傾げる。いやいや、こっちが聞きたい。
…まって、アスって誰?
「はぁ~全く~」
少女の目線の先のデューナが、ため息を吐いてから話そうとする…が
ふわふわ少女は、まぁ…どうでもいっかぁと欠伸して
から、眠そうに舟を漕ぎ始める
自分で聞いといて…
…そして、完全に放置されてる私…。アス…ってだれ?
ちなみに、このふわふわ少女…いや、ベルとかいう奴は
見た目は私より幼い。ぱっと見、幼女。…あまり大差ない?おいこら、どこ見てる
…特徴的なのは、髪とその角
ふわふわの白い髪に、側頭部から一本づつ巻き角が生えている。
そして、瞳が真っ黒で中心が細めの金色。
後は…小さな翼がある。
正直、こんな種族は知らない。可能性があるとしたら…
私がじーっと見ていると、ふわふわ少女は鋭い視線を私に向ける
「で、これはぁー?」
私を指差して、デューナに問うベル
若干、指先が私に向けたまま魔力を放ってる…
なんか、敵意が剥き出しなんだけど…?
「双子さんの~片方~ですよ~。無害です~」
にこにこ笑顔で答えるデューナ。って、なにその説明…?おかしくない?
「なるほどぉー…ふむぅ」
デューナの返答を聞くと、ベルはすぐに敵意を消し
ゆっくりと私の周りを回りながら、私をじろじろと見始める
「ほーぅほぅ…ほぅほぅ。なるほどねぇ…ベルちゃんです。よろしくぅ」
急に、フレンドリーになるふわふわ少女。ニコっと笑うと手を差し出す。
あ、握手か…。ニコニコしてるし…
「よ、よろしく…。」
いきなり態度が変わるとか、すっごく反応に困るんだけど…
「で~、ベルちゃんは~?何を~してたの~?」
ニコニコしてるふわふわ少女…ベルに、痺れを切らしたデューナが質問する
「うぅん?」
その質問を聞き、ベルは真顔になる
そして、うーん…と考え始める
「………えっと…ねー…。黒ドリルにぃ、ダンジョン作れって…言われたぁ…?」
うぅーんと、面倒くさげに呟くベル。…黒ドリル?
「…ですか~なるほど~…」
一瞬、真顔になるデューナ。しかし、すぐに元の笑顔に戻る
…黒ドリル?…訳分からん…。私だけ理解できない…
「あとねぇー。ここから先は、まだ作ってないよぅー?まだ、中途半端だしぃー」
悪意の無い表情で言うベル
けど、その一言で私は固まる。じゃあ、姉さんは何処に…
そんな私を横目に放置して、デューナはベルと話を続ける
「と言うことは~コアは~この下に~?」
デューナの言葉に、こくんと頷くベル
「そうだよー。このダンジョンねぇ。お宝も、罠も、お部屋も、まだ作ってないしねぇ。」
言いながら、懐から鍵の様な物を取り出すベル
「はい、鍵。あとの事はぁ、お願いねぇ。ベルちゃんは少し疲れたぁ…抱っこぉ」
…何故か、私の元へやってくるベル
私は鍵を受け取り、隣のデューナへ渡す
「早くぅ…抱っこぉ…」
「……えぇ…。」
困惑する私は、仕方なくデューナを横目で見る
デューナは、黒い笑顔でベルを見てる。あぁ…なるほど…。
多分、あっちに催促しても無駄だと理解して、こっちに催促してるみたいだ…
…仕方なく、抱っこする私。
「わーぃ…zzz…」
速攻で…寝たぁ!?!?
…すやすやと眠るベル。
デューナは、呆れた表情でベルを見つめてる
「後は~全部~任せる気~ですか~?ベル~。」
「…うにゅん…zzz…」
寝言で答えてるし…。
「………」
無言でベルの頬を、指先でぐりぐりするデューナ
「zzz…うにゅー…」
おぉ、顔を背けて抵抗してる…。けど、無言のデューナはぐりぐりを止める様子はない
しばらく…ベルの頬をぐりぐりしてから、私に顔を向けるデューナ
「…はぁ~。コアルームに~行きますよ~」
デューナの言葉が終わると、同時に足下に魔法陣が浮かび上がる
そして、瞬時に視界が変わる…
転移か…。
転移先は、真ん中に大きな球体が浮いてる部屋。
…あれ?その球体より、さらに奥……なにかある…?
「ワタシは~コアを~確認~してますね~」
デューナは、真ん中の球体に手を当て魔力を流し込んでる
…私は、コア?よりも奥の物が気になる
ダンジョンコア?を確認してるデューナを無視して、私は奥の物体を確認しに向かう事にする。
部屋の奥にあったのは…石像の様な物…?
…いや、砕かれた像か?…いや、女神像みたいだ。
名は…えーと……ふれ…あ・りー…ど…フレア・リード?
創造神…フレア・リード…
…あの女神の…神像…?なんでこんな所に?
しかも、この女神像なんで砕かれてるんだろう…?
……?
……うっ!?
な、なにか寒気が……
砕けた女神像から視界を離し、真横を見る…
………振り向いた先で、触れるギリギリの距離で…それは私をじっくりと見ている。
「……ッ!?」
あまりの気配のなさ、異質な感じに私は言葉を失う
私は冷や汗をかきながらも、それを確認する。いや視線を逸らしたくても体も頭も全く動かない…
かろうじて動くのは視線…。要は瞳
ぱっと見…それは、黄金色の髪の長い女性。長さは地面に当たるか当たらないか位の長さ
そして、肉体は人形の様な不要な物がない完璧に整っていて
瞳は宝石の様に、キラキラと金色に光輝いている。
ただ、その瞳は…人の……いや、生物の瞳とは明らかに違うのだけは分かる…。そう…生物の瞳ではない。生気を感じないのだから…
見れば見るほど、分かる異質…
そして、なにより…背中に翼。片翼だけど…。私と同じ感じの翼が…右側にだけ…四つもある。左側には一つも無い。
後は…頭の上に、左半分の輪っかもある。
……なにこれ…天…使?
「………。」
私の体をじっくりと見終わると、それは目だけを静かに動かして今度は私の瞳をじっくりと見る
「……。」
それと、目を合わせる…。いや、無理矢理合わされてる
私は恐怖を再び感じる…。
これは…勝てない。いや、なにもできない
「……………隙間もない…。」
少し…残念そうに呟くと、目を逸らしそれは私から少し離れる。
離れた事に、ほっとする私…。うん、安心してる
そんな私を放置し、それは
私がいる位置とは違う所へと向き、じっとその方向を見る
「………きた。」
すると、その場所の空間が割れるように開く
「やっと、入れた!!…まだ居るか!?」
その割れ目から少女が飛び出してくる
そして、周りを一通り見回す
「……ちっ、居ねぇ。くそっ遅かったか…」
その少女は、舌打ちすると今度は私を見る
「ん?…拘束されてるな」
そして、トコトコと私の方に向かって歩いてくる
……あれ?さっきの天使みたいなのは?…居ない
「…僕の力の裏を掻きやがる…ほんと厄介だな…」
歩きながら少女はチラッと、私の視線の先を見て呟いた
それは、さっきまで天使みたいなのが居た所。
「っと、動いて良いぞ。ほれ」
私の前に来た少女が、指をぱちんと鳴らす
さっきまで、身動き一つ出来なかった体が動く…。本当に…なんだっ
「あっ…」
…気を抜くと同時に、ベルが私の腕の中からするりと落下する
「…んにゅ…んぁっ!?!?おじりぃぃいだあぁぁぁいぃぃぃ」
お尻から落下したベルが、地面をのたうち回る
…私が手を離した訳じゃないからな?違うからな?
そんなベルを放置、無視して少女は私を見る
「…なにもされてないな?」
少女の言葉に分からないまま頷く私。下の転がってるの放置で良いのかな…?
「それなら良い…か。…っと、おおっ!?……なるほど面倒な事になってんな」
一瞬、少女の瞳が虹色に光る。と、次は私を見る。再び瞳が虹色の光を放つ
「…なるほど。っと」
「んおわぁ!?」
少女は少し考えると地面をのたうち回ってるベルを掴み、私に放り渡す
そして、私を軽く触れるとそのまま、トンっと押す
「ほれ。後は頑張れよ」
「…え?」
私の背に亀裂が現れ、私を飲み込んだ…
―――
……。空中の亀裂から、ぺっと吐き出されて落下する
「あてっ!?」
「ぴぎゅ!?!?」
…私とベルが、同時に地面に落ちる。…ベルは、おじりが二つに割れたーとか隣で騒いでる。無視
……で、ここは何処だ…?
「あっ、恵ー!?」
…隅っこで、姉さんが手を振ってる。
「ああっやば!!恵ー!!早くこっち来て!!!!」
いや、なんか姉さん慌ててる?慌ててない?
……ん?なんか地面がひかっ…
「…っ!?……あぶなぁー」
やや真剣な表情になったベルが、私の体を持ち上げると姉さんの所まで一瞬で飛び運ぶ
そして、私を姉さんの隣にぽいっと放る。
「……はぁー。面倒なぁー」
光る魔法陣を、再びやる気のない表情で見つめる
「誰ぇ?この面倒な物仕掛けたのはぁ?」
バチバチと魔法陣は起動し、魔物が召喚される
…獅子の頭、山羊の体、蛇の尻尾
特徴的な巨大な化物。
俗にいう、キマイラ…巨大なキメラである。
「……なるほどねぇ…ベルが呼ばれた理由これかぁ…」
さっきまでやる気の無かった表情をしてたベルが、真面目な表情でキマイラを睨む
…いや、キマイラを見てるんじゃない…?
ベルはキマイラの体の黒い所を見てる……?
「確かにぃ、これはアスちゃんやアモちゃんだとやばいかなぁー。それに、アモちゃんだと暴走しかねないしねぇ」
…このキマイラ、体中に黒い汚染のような染み…?みたいな物があちらこちらに見える
この世界の魔物…でもここまで異質な感じは普通しない
これは…一体…?
「これの相手はぁ、ベルちゃんがするけどぉ…あれの攻撃はぁ絶対にぃ当たんないようにねぇ?汚染されたらやばいからぁ」
のほほんとした声で言うベル。表情は真面目
「…あれ、やっぱりやばいの………あぇ?」
あっ、姉さん?どうし…膝にラフィーの頭乗せてるな…
って、違う違う。姉さんの…様子が……
「………。…現状確認…危険と判断。」
姉さんは、すっと立ち上がると
ラフィーを私に渡す。そして、キマイラを目視する。
まるで、別人の様な…雰囲気…。
……あれ?…瞳の色…銀色!?……両目とも!?!?
「……。んじゃぁ、守るのお願いねぇ」
真剣な表情で姉さんを見てたベルが、キマイラへと向き直る
「……はい」
返事を聞いたベルが、にやりと笑うと
懐?から巨大な鎌を取り出し振り回す。…うん、いきなり出した。何処から?…どうやって?ワケわからん




