八十七 ドミニカ、マリアちゃんと飛竜 編 7〈マリアちゃん側のお話〉
ドミニカ視点に戻ります
露店でレイミィを見失って、しばらくの間探してみたが全く見当たらない…。
レイミィは儂の使徒であるから、少なからず近くにいたら分かるはずなんじゃが…?
もしや…認識阻害でもされておるのか…?まさか…な…。
仕方がない。レイミィには悪いが、もう儂は先に行くとする
儂としては、早くこの場を去りたいのじゃ
もうすでに、ドワーフと勘違いされて話しかけられたた回数が二桁いきそうなんじゃぁ…もう嫌じゃぁ…
「あの…」
ほれぇ、また来たぁ!!
「…えっ!?」
もう逃げるのじゃぁー!!
…という訳で、ドワーフ村から少し離れた場所まで進み
その後、再び天使に戻り…空へ飛び立つ
ふぅ…。飛ぶ事自体は嫌いでは無いが、魔力を消費し続けるのは辛いのぅ…
魔力の大幅消費は、精神的に疲れるからの…
まぁ儂ら天使は軽い休憩でそれなりに魔力は回復するし、眠れば急速に回復するからあまり苦でもないんじゃが
しばらく飛んでいると、行く先に複数の物体が見えてきた。
このまま行けば、もうすぐ飛竜の谷に着く所じゃったんじゃが…
それに…この辺りは飛竜の縄張りでもあるはず…。普通なら近寄らぬ…おかしいのぅ
…あれは、鳥か?
…いや、あれは…魔女鳥じゃな
所謂、鳥女…ハーピィと言われる魔物。
上半身が人族の女、下半身が鳥の姿をした魔物じゃ
性格は獰猛かつ残虐。そして群れる
ふむ…数が多い。これは…群れじゃな
数は…およそ、二十匹位か
さて、このまま行くと儂と鉢合わせになる
こやつらは、魔物の癖に魔法を使うんじゃよな…
少々、面倒臭いのぅ
でも、殺るしかない…か。ハーピィは残虐で獲物をいたぶり遊ぶ習性があるらしいしのぅ
どの道、このまま放置も出来ん。しっかり処理しとくとするかのぅ
このまま、一気に突っ込んで不意討ちと行く!
魔力を背中の翼に送る…。足腰を魔力強化するのと同じように…
これで、推進力が上がる。
ハンマーを手に持ち、空気抵抗を減らすように構え
そして、そのまま一気に突っ込む
まだ気付いてないハーピィ達の懐に飛び込み、柄の底を突き出す
「ふんっ!」
まず一匹。勢いを利用して柄の底で胴体を貫き
「次っ!!」
さらに、近くに居たもう一匹を即座にハンマーを振り叩き潰す
さて、…っ!?
儂は、慌ててその場から離れる
さっきまで儂の居た場所に、ハーピィ達の風刃が数発飛んで行く
反応が、予想より早い…!?
…群れにリーダーが居るのか…?
周りのハーピィ達を、警戒しつつリーダーを探して見回す
一匹…他のハーピィ達より後ろに鳥の部分が紫色の変わったハーピィが居る。普通のハーピィは鳥の部分は茶色じゃ。
あれは…ハーピィリーダーじゃ。特殊個体ではない。群れを作る魔物の中で一番強い個体は変質してその群れのリーダーへと変わる。多少は強く賢くなるが、特殊個体とかと比べると大したことはないのじゃ。
とは言っても、群れを操る事自体が脅威ではあるのじゃが…
さて…どうするか…。
「ギュイィィィー!!」
ハーピィリーダーが一声上げると、ハーピィ達が一斉に儂から距離を取り始めた…
どうやらハーピィリーダーから、儂から距離を取りつつバラけて囲む様に指示が出されたようじゃ
…個々が距離を取って離れておる
これじゃ…ハンマーで相手取るにも一匹づつしか殺れんな…。…ぬぅっ!?
しかも、儂が不用意に動くとハーピィ達が風刃で遠距離攻撃を一斉に仕掛けてくる…厄介じゃ
仕方ない奥の手を……ぬ?
…なんじゃ?あれは…空を覆うほどの数…あれは飛竜か?
その先頭に居る、青い飛竜が口を開き火炎球を吹く。
儂から一番離れた位置に居り、他のハーピィに守られて慢心しているハーピィリーダーの後ろから巨大で真っ赤な球体が襲う
「ギィ?ギャアァァァ!?!?」
…あっ。ハーピィリーダーが真っ赤な球体に呑まれた。
見事に消し炭である…。あれは飛竜の火球ブレスか?
そして…それを皮切りに、飛竜達が一斉に急降下してハーピィの群れに襲いかかる。
…ハーピィ達は噛み千切られ、引き千切られ、焼き殺され…すぐに蹂躙されてしまった。
そして、今度は…
…ふむ。儂?飛竜に囲まれて居るよ。
うーむ…。数えても…百から面倒になるのぅ
儂を囲む飛竜達をだけを見ても、数十と常に監視されておる
この数だと、警備とかでは無さそうじゃ
もしや…儂が来るのがバレていたのか?
…キングやクイーンと対話で何とかなると思っとたんじゃが…。うむぅ…
どうするか…。儂としても無茶だけはしたくないしのぅ
儂が悩んでいると、先ほどハーピィリーダーを焼いた青い飛竜が儂の前に現れる
…こやつワイバーンキングか!?
他の飛竜は、濃い茶色の飛竜だけ。全部ワイバーンじゃ
ふむ…?青い飛竜王が儂を睨んでおる
“貴様はこれの仲間か?”
青い飛竜王は、足の爪で掴んでいる亡骸を儂に見せる
…ぬ?
儂はそのボロボロの遺体をじーっと見る
ボロボロの灰色のローブ…中心に龍のマーク…
それは、龍神教のシンボル…
「…なぜ、飛竜の谷に龍神教が…?」
儂がポロっと呟くと、青い飛竜王の視線が鋭くなる
おおっと、飛竜達も殺意が増し増しになっとておる
「待て待て、儂はそいつらと関係はない。」
儂の言葉に、飛竜王からの殺気は緩くなる。…視線は鋭いままじゃが…
「それに…お主なら多少分かるじゃろ?儂と戦うとどうなるか…?」
流石に飛竜王含む飛竜達に出し惜しみなぞ、出来んからな開幕から本気で行くぞ?
“…巣でクイーンが待っている”
飛竜王は、儂から視線を外すと背を向けて来た方向へと飛び立つ
他の飛竜達も、飛竜王に続く
…つまり、儂に巣に来いと言うことか?
まぁ、キングよりクイーンに話を聞きたいからのぅ
立場的にクイーンの方が上だから、話すならクイーンなのじゃよ
…それにしても、飛竜の谷に龍神教?
ふむ…。訳がわからん
奴ら何をしておったんじゃ?
飛竜達に、魔族も人族も関係ないし
まして、この谷から出ることも滅多にないはずじゃ
儂は、考えながら飛竜の後を追う
…ふむ。谷の広い場所に一匹の赤い飛竜がじっとこちらを見ている
その場に、青い飛竜王はその横に降りる
残りの飛竜達は周りの高台に…。その光景は圧巻じゃな
儂?勿論、二匹の所に降りる
「よっと…」
さて、マリアにも出てきてもらうか。
儂は、異空間に手を突っ込みマリアを取り出す
…いきなり取り出されたマリア、ポカーンって顔をしておるな
「…え?ここどこ?」
マリアはキョロキョロと周りを見てから、正面の二匹の飛竜に視線が行く
そして、赤い飛竜の女王の近くに歩いて行く
「どうしたの?なんで、悲しそうなお顔してるの…?」
飛竜の女王は、マリアの言葉を聞いて顔をマリアに向ける
…儂には飛竜の表情なんか分からんのだが…?
“クイーンに余り近寄るでない!!”
おっと、飛竜王がお怒りじゃ!?
“よしなさい。あなた…。”
“むぅ…”
おふっ。尻に敷かれておる…。
飛竜王が、笑った儂を涙目で睨みつけておるし…
…いや、だからって儂を睨むな。
“どうやら、この子には古龍様の守護があるようですね”
優しい瞳でマリアを見ていた、飛竜の女王は儂に語りかける
「うん?守護じゃと…?」
確かに、きゅうは古龍種じゃ
じゃが…きゅうはヒカリの従魔らしいし、マリアを守護する理由が分からんのじゃが…?
マリアは、ヒカリに可愛がられておるのは知っておるが…じゃからなのか?
龍及び竜は強さで、その地位を得る。
しかし…その龍種の始祖である古龍だけは、全ての龍及び竜の頂きに存在する
それは産まれて間もない赤子でも…
つまり…きゅうの守護を受けるマリアは龍及び竜種に敵対される事は絶対に無いのである
“つまり…この子とこの方はあれとは関係ないのです。あなた、分かりました?”
飛竜の女王が横目で、飛竜王を睨む
“う…むぅ…”
飛竜王はしょぼんと顔を俯せる
“それに…”
飛竜の女王はチラッと儂を見る
今の儂は天使のままじゃ。魔力も抑えてない
普通に考えたら敵対はせんはずじゃ
まぁ、儂としても…この数の飛竜を相手取るのは大変じゃし、面倒じゃから戦闘は無しで頼みたいが…のぅ
しかし、やるつもりならやれん事も無い…。
「ドミニカさん!必要ない戦いは駄目だよ!!」
…ぬ?マリアが儂に怒っておる…?
もしや、殺気でも出ておったか?
「すまぬ。そんな気は無いのじゃ」
儂が、殺気を抑えるとマリアが笑顔になる
“…手を出さなくて正解だった。お主の言う通りだった、クイーンよ…”
“…えぇ。もし出していたら、あなた死んでいましたよ…”
飛竜王と飛竜の女王、そして周りの飛竜達は儂の一瞬の殺気に冷や汗を流していた…




