八十一 ドミニカ、マリアちゃんと飛竜 編 〈マリアちゃん側のお話〉
ドミニカ視点
ヒカリ達が王都から出発して、数日ほど過ぎた…ある日…
どうも、大量の書類に埋もれてるドミニカじゃ
ここは王都の冒険者ギルド総本部、ギルドマスターの部屋
毎日毎日、大量の書類とにらめっこ…。いい加減飽きたのぅ…体を動かしたいのじゃぁ…
「ダメですよ。ドミニカ様、まだまだ目を通してない書類ありますから」
「次はこちらです」
うへぇ…二人の秘書…いや、二人のサブマスターが次々と書類を机に並べてくる…
のぅ…ちっとは休ませてくれんか…?
この二人、儂に全く休憩くれんのじゃ…酷くない?
ちなみに、この二人。名はレーンとラーン。
見た目の特徴は金髪のセミロングで、常に目を閉じている女性。物静かな雰囲気を出しておる
そして、帝都と聖都にも二人と同じ見た目の奴らが居る。名は帝都の方がリーン、聖都の方がルーン。
実は、見た目がそっくりな四つ子なのじゃが
性格までそっくりで、四人揃うと誰が誰か混乱するレベルじゃ…。
しかも、わざと入れ替わったりする茶目っ気まである。なにより、儂に対してやたらと厳しい…
「「ドミニカ様!!」」
むぅ…手が止まってるのを見られたか…。
続きをやるしかないのぅ。
「まぁ、少し待て…うん?これは…」
儂は一枚の書類の内容に視線が向く
この書類…この王都から西東方向のかなり離れた所に、飛竜の谷と呼ばれる場所があるのじゃが
その場所に住む飛竜の様子がちとおかしい。と言う内容…
基本的に、飛竜はその谷から出てくることはないはずじゃ
飛竜は谷で産まれ、育ち、谷で死ぬ。それが飛竜の一生
希に、迷い出たはぐれ飛竜なんかも出たりするが、一匹や二匹が限度じゃろう
ちなみに、危険度はリトルワイバーンがランクA、ワイバーンがランクA+、キングワイバーンがランクS、クイーンワイバーンがランクS+である
キングとクイーンは特殊個体、キングがいると大抵クイーンもいる。ようは、番じゃな。
まぁ危険度ランクなど現場によっては意味は余りない。
飛竜の谷のような、一匹一匹が危険な飛竜が大量に住む様な場所では、二、三段階危険度が上がる故、実際のランクより高難度になる
故に、冒険者の討伐隊を組むにも犠牲が大量に出てしまうのじゃ
飛んでる飛竜を相手にする為、分が悪過ぎるのだ
捕まれれば空中で落とされ、空からファイアブレスを吹く、そしてなにより…数が多いのじゃ
谷に住む飛竜を相手にする場合、少なからず数百は相手にせねばならん
「ふむ…」
儂はその書類をじっと読む…
内容には…飛竜の谷にて、ワイバーンが異様に気が立っており狂暴化している。その数が異様に多い、およそ数千。魔物大行進の恐れあり。
と書かれている…
魔物大行進…スタンピードか…。飛竜のスタンピードが起これば、王国としても一大事じゃ。なぜなら、スタンピードの魔物は生物の多い場所に優先して向かう…つまり、行き先が王都なのじゃ
まして、飛竜。飛んで来るのじゃ…その速度は馬鹿にはできん
この書類の報告者に、現地の詳細を…
むぅ、名が書かれてないのぅ…。こんな大事な書類に名を書き忘れる訳がない
…これは怪しい…調査が必要じゃな。
「お主ら、急用が出来た。仕事を儂の代わりに任せるぞ」
儂が真剣な顔で言うと、秘書の二人は黙ってお辞儀する
「いってらしゃいませ」
「ご無事をお祈ります」
むぅ…相変わらずじゃ、この二人。
儂がサボってる時にしか、この部屋に来んから…誰もこのギルド総本部のサブマスターの事を知らんし
まして、この二人は基本的にいつも受付嬢やっとるからな…。
しかも、現地調査とかは手伝う気は更々ないと見る
全ての冒険者ギルド内で、儂を除くと最も強い四姉妹の癖に、儂の手伝いだけは全くしない…
「「なにか?」」
な…なんでもないのじゃ…
ふぅ…怖い怖い…
あの二人は容赦なく儂をボコる
全く…恐ろしいのじゃ…。天使って知ってても容赦なしなんじゃもん…
って、二人に睨まれとる!?ここはギルドから出るのが無難!逃げるのじゃ~
…さて、儂一人で行っても良いのじゃが…ふむ
王都からじゃと、馬車でも早くて数週間かかるのぅ…
じゃが、儂が目的地まで飛んでいけば一週間位で着くか。
とりあえず、ヒカリ達の屋敷の様子でも見に行ってから決めるかの。
さて、屋敷に着いたのはよいが…
「相変わらずじゃなぁ…」
思わず口から漏れる
屋敷にいる子供が皆、メイドと執事の格好しとる…。
しかも、庭の掃除してるのが二十人ほど居ないか?
前来た時は、十人ほどじゃったはずじゃが…?また増えたのか?
「あら~。ドミニカ様~。どうなさいました~?」
儂が呆然としておると、メイド長のデューナが儂に話しかけてくる
「また…増えとるの…」
「クレアが~孤児の子を~連れてくるのです~」
「そ…そうか…」
に、しても…増えすぎじゃろ?
このこと、屋敷の主人知っとるのか…?知らんだろうな…
「まぁ~とりあえず~。立ち話しも~なんですから~お部屋に~ご案内します~」
デューナが、こちらです~と屋敷の中へ案内する
すれ違う者、皆メイドと執事の格好した子供。
…ここはメイド学校か何かか?
「見習いの子は~教育が~一通り終わったら~姫様経由で~貴族達と~契約させて~ますよ~」
本当にメイドの学校みたいなことやっとるんか…
まぁ…孤児で亡くなるよりかは良いんじゃろうがな
っと、部屋に着いたな
客間か…ふむ
「失礼します。お…お紅茶です」
小さいメイドがティーセットを持ちながら、よろよろと入ってくる。…マリアじゃ
そして、だいぶ慣れた手つきで紅茶を淹れておる
「マリアも~だいぶ~慣れましたね~」
デューナがマリアを誉めてる。まぁ最初の方はもたもたしてぬるくなってた位じゃもんなぁ…
「後は~スムーズ~に動けるように~」
でも、デューナじゃからダメ出しはする
「はい!」
マリアが返事をしたあと、お辞儀して部屋を出て行こうとしておるのぅ
そうじゃのぅ…旅は道連れと言うし
マリアでも借りるかの
飛竜狩りは儂一人で出来るが、違和感とかは戦闘しとると分からんから、誰か感覚の鋭い子に着いてきて貰うつもりじゃった
ただ、儂の姿を見て驚かないことが前提じゃ。
故に、連れていける者が限られておるんじゃけどな。
そして、マリアはヒカリの使徒。適任じゃ
「のう、デューナ」
「なんで~しょう~?」
「しばらくの間、マリアを借りても良いかの?」
「なにか~仕事ですか~?」
デューナめ…鋭いのぅ
笑顔で、内容を話せと急かしてきおる
「…飛竜の谷へ調査じゃ…飛竜は儂が相手するから危険はない」
儂の答えに、デューナは少し考える
やはり…危険と判断するか…?
デューナは、マリアの方へ向く
「マリア~行きたい~?」
扉の前でじっと大人しくしてたマリアが、デューナの声にビクッと反応した
「えっ…えっと…」
「はいか~、いいえで~答えなさい~」
デューナよ、言葉に圧を感じるぞ…
「はい…」
「あら~行きたいの~ですか~。じゃ~ドミニカ様~連れてって~あげて~ください」
マリアが咄嗟に言ったのは、行きたいの方ではないと思うぞ?
デューナは強引にでも、行かせたい訳じゃな…
「ドミニカ様…よろしくお願いします…」
マリアが儂に頭を下げる
どうやら、マリアには拒否権は無いようじゃ…
最初に会った時の、元気で明るいお主は何処に行ったのやら…
「あの…クレアお姉ちゃんに、お話してきて良いですか?」
マリアの実の姉じゃ、しばらく留守にしたら心配するじゃろう
「良いぞ。儂も少し話すつもりじゃったし」
マリアに連れられて、中庭に案内される
この屋敷…中庭まであるんじゃな…。広すぎじゃろ…なんなんじゃこの屋敷は…
って、クレアは中庭に居たのか
中庭の木々の手入れをしてるクレアに、マリアが駆け寄り抱き付く
「…あら?マリアどうしたの?」
「しばらくドミニカさんのお手伝いすることになっちゃった」
「…そうなの?怪我だけはしないでね」
クレアはマリアを優しく撫でてから、儂に顔を向ける
「うむ、すまぬがしばらく借りる。儂が責任もって預かるから心配は無用じゃ」
とは、言っても見た目がほぼマリアと同じ位の子供の容姿じゃからな
儂が冒険者ギルドの総本部ギルドマスターじゃなければ、不安しかないじゃろうが…
…って、なんで儂の体は幼女タイプなんじゃろうか…このせいで子供扱いばっかされて辛いんじゃ!
少女タイプはわりと居たが、基本的に女性タイプが大半じゃろ?まして、幼女タイプなんて儂しかしらぬ
何百年生きても、ずっと子供扱いされるのは辛いんじゃぁー!!
後は、まぁ人族の国でそれなりの立場になったお陰で、年を誤魔化し安くなった。
儂らは寿命が無い。故に、老けたりしない。そのせいで、同じ場所に居続けるのは割りと厳しかったんじゃ
それに、自身の周りを使徒で固めれば、誤魔化すのもしやすいのも利点じゃな。
で、儂は冒険者ギルド総本部のギルドマスター。ジュナが帝都の魔法学院の院長。エクタシアが聖国の第一聖騎士団の団長…。じゃったか…?
ジュナはともかく、エクタシアはよく聖国内に入り込めたものじゃ…儂なら、あの国に居るの嫌じゃもん
と言うか、ジュナもエクタシアも儂と同世代型の癖に、なぜ儂を子供扱いするんじゃー!!
っと、頭の中で愚痴ってても仕方ない。クレアに心配そうな顔されてたらマリアを借りられん
「おっと、すまんな。少し考え事しとった。これでも、ギルドで一番の腕前じゃ。伊達にランクSSの破壊天使の二つ名を貰っとらん」
まぁ…他の天使もランクSSで二つ名持っとるが…。ルーファ?あやつは…測定不能…
で、でも他の天使もルーファも今はギルドメンバーではないのじゃ!
「分かりました。では、マリアを頼みますね」
「うむ。任された」
…飛竜ごときに、儂が負けるわけないし
マリアには傷一つ付けさせぬよ
伊達に天使やっとらん。儂は龍種と戦ったことだってあるんじゃ
…古龍ゾンビ?…あれは論外…。あんなの儂ら全員集まっても勝てぬもん
「マリアは、戦闘用に着替えさせてから行かせますね」
「うむ。儂は外で待っておるぞ。」
…さて、マリアはクレアに連れていかれた。
儂はマリアが来るまで、のんびりするかのぅ…
飛竜の谷は少し遠いが、飛んで行けば問題ない。
大体、二週間ほどで王都に帰ってこれるはず…
まぁ、人の多い王都から離れてからでなければ、飛ぶ訳にもいかんが…
隣街までは馬車で、のんびり旅でもしようかの…
マリアとのんびり二人旅か…うむ悪くない




