六 名前はマリアちゃんだって
「で、この子は、シスターの為に薬草探しに来たと」
「…うん」
恵の問いに、女の子は怯えながら頷く
うん、血濡れの恵を見ちゃったから怖いよね
「…はぁ」
あまりの怯えぶりに恵も言葉が続かないみたい
「えっと、お姉ちゃん達のお名前は?わたしはマリア」
私に抱きついてる状態で、女の子は聞いてきた
「あっ…自己紹介してなかったね」
恵がそっと近づいてマリアちゃんに聴こえないように耳打ちする
『姉さん、とりあえず"ヒカリ・アマツマ"で、何ならヒカリだけにしといた方がいいかも』
『名字は貴族と勘違いされるかも知れない』
確かに、貴族と勘違いされるのは色々と私達的にもやばいかもしれない
情報が一切無い貴族とか興味深いから絶対探るやつら出てくるし
『とりあえず、この子に名字ありで試してみる』
恵に耳打ちすると、恵は頷いた
「マリアちゃんだね。私は"ヒカリ・アマツマ"で、こっちが妹の"メグミ・アマツマ"って名前なの」
「ヒカリお姉ちゃんとメグミお姉ちゃんは、お貴族様なの?」
((やっぱりー))
マリアちゃんは目をきらきらさせて、光を見つめてる
「いや、遠い所から二人で来たの。お貴族様じゃないよ」
「そうなの?」
マリアちゃんはよく分かってなさそうだったけど、気にしてない
うん、マリアちゃんは平気そう
「所で、マリアは帰らなくて平気?」
「あっ!!?」
恵の一言で、マリアちゃんは辺りを見渡す
…もともと森の中だから薄暗かったけど日が落ちはじめて本格的に暗くなってきていた
『私達も実はやばくない』
『森の中でサバイバルなんてやらないから普通、ドリアードに頼めば一日位何とかしてくれそうだったけどね』
恵が後の事を考えてた事に、さすが私の妹ーとか思ってたら
『けど、多分この子は連れて行けない』
『えっ?』
『妖精が姿を隠してる』
『本当だ…』
私達には何処に居るのか見えてるけど、妖精さん達が木々の影に隠れてこちらを見てる
多分、マリアちゃんには見えてない
『多分、魂が綺麗なだけだから、あまり興味がないんだよ。それに、ドリアードは言っちゃえばこの森の核の木だから無闇に会わせるわけにはいかないし』
『マリアは平気でも、子供だからうっかり話しちゃうかもしれないし』
『たまたま聞いた大人が、ドリアードさんを捕まえようとするかもしれない…か…』
『最悪、精霊の木を切るとかになったら森が滅ぶかもしれない』
『最悪だぁ…』
私達のせいでドリアードさんや妖精さん達に迷惑かけるのは良くない、ましては森が滅んじゃったら流石にたまらない
なら、夜になる前に森から出るしかない
私は木々の影にいる妖精さんに近付き、街に近い出口に案内できる?と呟いた
「できるよー」
「ヒカリ達ー」
「信用できるからー」
「おまかせー」
私はじゃあ、お願いねと、妖精さんに頼むと薬草を数えてるマリアちゃんに声をかけてーと、恵に目で合図を送る
「マリア、そろそろ森から帰らないとシスターとかが心配する。私達も一緒に行ってあげるから帰ろう」
「お姉ちゃん達も来てくれるの?うん、帰る!」
マリアちゃんもう、恵のこと怖がってないね
恵がマリアちゃんと手を繋ぐ
あっ…それ私の役目…
「姉さん…これ位で拗ねないでよ…」
妹がなんかいってるけど知らない
ぷんぷん
「出口こっちー」
「ついてきてー」
妖精さん達に案内されて割りと早く出口にたどり着いた
「ヒカリーメグミーまたねー」
「きをつけてー」
「天使ー危険いっぱいかもー」
「ドリアードも気をつけていってたー」
「ありがとー、気をつけるね」
「ドリアードにもありがとうって伝えて」
私達とマリアちゃんは妖精さん達に見送られて精霊の森から出て、街の入口の大きな門の前までやってきた
ただ、辺りはすでに真っ暗になっている…