三十三 天使と堕天使
ドミニカさんの視点
二人の幼い天使が部屋を出てからすぐ
儂は消えた振りをしたルーファに声をかける
「で、あの二人はどうなんじゃ?」
いつの間にか、ルーファは堕天使の姿でソファーに座ってる
「大天使の方…ヒカリちゃんだっけ?あの子は様子見。ステータスの底が見えないわ。多分、女神に何かされてるわよ」
ルーファの様子に儂も頷く
儂もさっき観てみたが、あれはなにか隠してある
ただ、妹の方は問題がなさそうなのが気になる…
「そうねぇ…なぜ姉妹型しかも双子なのか気になるわね」
やはり、そこも気になるか…
「今まで大天使は何度か見てきたけど、あの子達は少し異質なのよね」
まるで、異世界から放り出されたかのよう…とルーファが呟いてる
この世界にも異世界転移などは女神の気紛れであったが、まさか…な
「可能性の話よ?大天使にするほど女神が気に入るとか、神核でも混じってたりするとか?」
儂はその言葉に反応できん、可能性があるからな
不安定な神核を落ち着かせるために、妹も一緒に転生させたとか…
なら妹の方はなにもおかしくないのも頷ける
…神核、言ってしまえば神の心核
これを持つものはいずれ、神になる
問題はその莫大な魔力を保持する核が持ち主と定着するまでの間、不安定でなにが起きるのかわからない
特に、精神面で揺さぶられると暴走しかねない
「まぁ、あの様子なら問題なさそうじゃないかしら?あの子の代わりに妹のほうが怒るみたいだし」
確かに、ヒカリはのんびりしてて怒るような性格ではない
あの性格が本気で怒る時はとんでもない事をやらかされた時くらいだろう
「残りの天使にも伝えるのかしら?私、粛清馬鹿の所には羽すら送りたくないんだけど。あいつ問答無用で襲いかかってくるし」
エクタシアの所か…あやつは粛清天使を誇りにしとるからなぁ
「あやつには儂が連絡しよう」
「なら、私がデュナの方に連絡しとくわ。どうせあの子は研究してるでしょうし」
ルーファが自分の羽を一枚抜き、放り投げる
すると、羽はその場から消えてなくなった
天使の羽は空間を超えて、メッセージを送れる力がある
儂も羽を一枚抜き、放り投げる。羽は、ふわりとゆれるとその場から消えてなくなる
これで、連絡できただろう
さて、剣舞祭の話をするか…
「剣舞祭の参加者に魔族…反人族派の奴ら何人ほど紛れておった?」
ルーファはソファーに寝転がりうーん…と唸る
「三十人は居たわよ。半分は私が消しといたけど」
なら十五人位か…テロでもする気じゃったのか?
「王族をどさくさに紛れて殺る気だったみたいよー。まぁ半分潰したら計画変えるとか言ってたけど」
はてさて、なにする気じゃろうな
「吸血鬼が五人、魔人族が八人、女魔族が二人かしらね」
サキュバスが二人も…珍しいな
「まぁ潰した奴ら含めても、女魔族は二人だけね」
ふむ、女魔族…サキュバスは戦闘力そこまで無い
基本的に平和主義で、同意の上で精気を貰うような連中なはず
戦いとか否定的だったはずだが?
「私の使徒の子達は温厚な性格よ?いざって時はやる子だけど自分からは戦おうとはしないわ」
それが普通か…サキュバスが反人族派にいるのも気になるが…
「それにしても、吸血鬼の子達もプライド高いわよねー。数滴でも血貰えれば生きられるし、同意なら問題ないのにねぇ?隠れてる必要も無くなるし」
それは高貴な血族とか言っとるからなぁ
純血種は、今は一体しか居ないが…
「人族も吸血鬼は種族として見る気はないじゃろうし、まぁ相容れぬだろう。」
純血種のあの子は良い子なのにねぇ…とルーファがため息吐いている
確かに、あの子は良い子だな。ほぼ寝とるが…
「まぁなんにせよ、剣舞祭は大丈夫よ。私も出るし」
おいまて、ルーファお主が出たら誰も勝てんぞ
はぁ…頭痛い…儂が頭を抱えるとルーファ笑っとる
「ふふ…大丈夫よ。ちゃんと後輩ちゃんに勝たせてあげるから」
そうじゃないが…めちゃくちゃにするんじゃないぞ…
ふふふ…と笑っとるルーファに冷や汗を感じながら儂はため息を吐く
「で、良くラフィリスの居場所見つけたな。数百年見つからなかったのにのぅ?」
儂が睨みつけながらルーファに問う
「あれはね…使徒の子がたまたま洞窟を見つけて、教えてくれたから分かったのよ?」
中の風化状態を見ても、数百年もの間弄られた形跡は無かったわ…とルーファが答える
使い捨てにされたのか…儂は思わず歯を食い縛る
「でも、むしろ良かったのかもね。酷使されてたらあの子完全に壊れてたわよ?」
確かに、洗脳し直して無理に操れば酷使できただろう
されなかったのは救いなのか?それとも洗脳出来る奴らがすでに居なかったのか…考えるだけ無駄か
「まぁ、堕天化はヒカリちゃんが浄化するでしょうし、問題は心核ね。あの衰弱状態だとちょっとしたことで壊れちゃうわ」
儂はややジト目でルーファを見る
「お主、ラエルと双子天使なら大丈夫だと思って誘導したんじゃろ?儂らより確率はあるじゃろうしな」
ルーファは笑みを浮かべて頷く
「心の傷は自分に近い者の方が癒しやすいのよ。それにラエルなら大丈夫よ、ラフィリスの事を一番心配してるの彼女よ?」
お主、本当に堕天使か?儂らより慈愛あるんじゃないか?
「私は自分の楽しみを優先にしてるだけよ?殺戮主義や天使嫌いなわけじゃないし。一応、貴方達も後輩だもの気にするわ」
ルーファめ…初期型だからって…先輩風ふかしおって…
「まぁ私以外の初期型は居ないし、貴方達第三世代も四体、で今回は双子型の新型…女神はなんの目的で私達を作り地上に送るのか…やっぱり分からないわね」
第二世代の古龍との大戦は分かりやすかったのにねぇとルーファが呟いてる
だが、それ儂は作られてないからの?儂ら第三世代だから
まぁ古龍の反乱に女神が怒り、天使による殲滅が起きたって話だから分かりやすいが…
儂ら第三世代は送られてから、魔人族による反人族派の暴走が起きたんじゃが…
天使も自ら消滅した者や天に帰った者など色々いたが、帰った奴らどうしとるんかのぅ…
そういえば…初期型の天使の話詳しく知らない。良く考えて見るとルーファは自分の話を一切話さないからのぅ
んー?とルーファは相変わらず、誤魔化してる
まぁ今は良いか…
今は剣舞祭が何事も無く終わる事を願うかの…
ルーファは意味深に笑っているが…
白い空間…
宙に浮いた透明な玉を見つめてる女神が口を開く
「天使達は気付くのが早かったわね。あの子の行動で世界はどう変わるのか楽しみね?」
女神の視線の先には双子の天使が映っている…




