意識を持ったロボットは作るには?
*筆者自身は乏しい専門知識しか持たない工学部生であり、まして生物学や医学に関しては門外漢ですので、そんな意見があるんだ、程度に思ってください。
私の目標はドラえもんや鉄腕アトムのような人間的な意識を持ったロボットを作ることである。そのためにせっせと情報収集をしているのだが、とりあえずの意見を書き残そうと思う。
大半が他の方が書かれた本やブログに書かれている考え方なので、興味がある人は検索してもらいたい。
思考ができる人工知能を作る上で最も重要なことは、概念形成と推論ができるか?だと思う。
まず概念形成について話す。
我々が住むこの世界には無限の情報が存在している。触ったり、電磁波を取得したりすることで情報は生まれる。
それだけならばそのへんの小石でもできる。(小石の中の原子や電子は日光の電磁波や風、地面の圧力を受けていくらか形を帰るだろう。これは情報を取得していることにほかならない。)
小石と人間の違うところは、人間は与えられた情報(細胞からの感覚情報)をもとに頭の中で内的表現を獲得できることだろう。(次元圧縮と言ったりもする。)
莫大な情報の中から必要な情報を取り出している、というよりは表現を新しく作り出しているという方が適していると思う。
例えばりんごの写真を見てりんごの匂いや味、生えている風景、アップルパイなどを連想できるが、それらのクオリアはただの(以下略 うまくかけない)
人間の場合、乳児の時に概念形成が最も活発になると考えられている。生まれたての赤ちゃんは神経接続があまり発展していなく、ある概念と他の概念の区別をつけにくい。(故に世界をぼんやりとしか感じることができない。)
赤ちゃんはよく寝るが、おそらく外的世界の情報を海馬に保存したあと、寝ている間に情報を吟味し、内的表現を表せるように大脳のシナプス結合を調整しているのだろう。こうしてりんごやみかん、甘い、苦いといったクオリアに対応したニューロンが形成され、世界をよりシャープに見ることができるようになる。(実際はもっと低い次元の概念が集まって形成させるような気がするが)
他の動物では生まれてすぐ動いたり、獲物を獲得したりできるが、裏を返せば概念が固定されていて変化に対応できないとも言える。
形で獲物を判別している生き物がいるとして、それを形の異なる獲物しかいない場所に連れて行ったらすぐに死んでしまうだろう。
この点で人間は、あらゆる世界に対応できる汎用さを取得していると言える。
さらに人間は言葉を利用することで、概念形成を容易にしていると言えるだろう。
現在の人工知能では膨大な教師データをもとに画像や音声をクラスタリングするDNNを生成している。人間は教師データなしで情報を分別して概念を獲得できる。教師なし学習的なアプローチでは、相互情報量最大化や独立成分分析などが考えられているが、実際の脳がどのように行っているのかは明らかにされていない。
とにかく、人間的な思考ができるロボットにまず必要なのは外の世界からの情報をもとに、自分なりの表現を獲得できる能力である。
概念が獲得できたら次に必要なのは推論の能力である。
推論というと高尚なものに聞こえるが、我々は常時行っている。
スマホの電源をつけたのに画面が真っ暗だとあれっ?と思う。ジュースを飲んだのに苦かったらおかしいぞ?と思う。着ようとした服が鉄のように硬かったら驚くだろう。
この「驚く」というのはまさに、我々が常時、次取得するであろう情報を予想すなわち推論していることを意味する。
寝ている時に見る夢では、起きてから考えると支離滅裂な内容が多い。夢は海馬から大脳に情報が伝達される際に生まれるとされているが、このとき推論を行う回路はあまり動作していないのだろう。よって起きている出来事を何も考えることなく見ることができる。
推論は物事の因果関係を理解した上で初めて行うことができる。スマホの例だと、スマホ、電源それぞれの意味を理解していないと、画面がつくことを予想できない。ボリュームボタンを押して画面がつくことを予想することはあまりない。何気なく行っている動作ではあるが、脳裏では多くの計算が行われているのである。
短期間の推論について論じたが、我々は遠い未来についての推論、また物事が起きた時のその理由を推論することもできる。原理的にはどちらも同じものであろう。
概念形成と推論ができるロボットは以下のような動作を行うことができる。(即席で作った例です)
テニスコートの一方にロボットが配置されて、相手コートにゴールがある。ロボットはゴールに到達しろとだけ命令されている。ネットは通ることはできない。
ロボットはそれまで、自由に歩いたりブロックをジャンプしたりして自分が行う動作に対して取得する情報がどう変わるのかを学習している。(ちょうど子供がはしゃいで遊んだりするように)
ロボットはテニスコートもネットも初めて見るが、ゴールに行くのにネットが障害になることを予想する。(自分のこれから行う動作に対してネットが「障害」という概念になることを予想した)
そこで記憶では同じ「障害」であった「ブロック」を「超える」のに「ジャンプ」という動作をしていたことを思い出し、ここでもそれを行えば良いことを予想する。
これを実行することでロボットはゴールにたどり着く事ができる。
これは単純な例だが、このようなことができるロボットは人間の行う大半の動作を可能にするだろう。
現在あるLSTMやベイジアンネットワークを合わせれば可能になるのかもしれない。実際に研究している方もいる。
もう一つ、エッセンスとして人間的な本能を加えれば、人間そっくりなロボットが完成するだろう。
推論で有利と判断された動作は睡眠時にDNNに学習されるとしたらより効率が良くなるだろう。(小脳と同じこと)
ところでこの文章のタイトルは「意識を持ったロボットは作るには?」であった。
上記のように概念形成と推論ができるロボットは人間そっくりに振る舞うことが可能かもしれない。
しかしいわゆる人間的な意識を持つか?と言われれば実際のところわからない。半導体チップと実際のニューロンでは特性がまるで違うし、もしかしたら有機的な素子でないと意思をもつ自然則は成り立たないのかもしれない。こればっかりはいくらでも考えられる。
直感で申し訳ないのだが、私は少なくとも「並列処理」は必須であると考える。つまり現在のプログラミング内蔵型のコンピュータでは意識は生まれないと考える。なぜなら、意識が生まれるためには情報が縦横無尽に移動するカオスが必要であって、クロック毎に整然と計算・メモリに格納を繰り替えず現在のCPUやGPUではそれがないと思われるからだ。(完全に直感です)
情報が適度に統合されたときに意識が宿る、これをシュレディンガー方程式やニュートンの運動方程式のようないわゆる自然則にしてしまおう、という考え方がある。(主流なのは統合情報理論)
この法則に準拠して意識を持ったロボットを作るのであれば、必然的に並列処理が行われる回路を作らなくてはならなくなる。コンピュータで逐次処理をするような「なんちゃって」では自然則は働かない。運動方程式はコンピュータでシミュレーションできて、一見すると実際の物体と同じように動かすことは可能だが、そこに法則が作用してないことは明白である。意識を生み出すのに大切なのは法則を理解して真似することではなくて(それではただの意識を持ったように動くロボットである)、法則そのものを使うことだと思うのだ。
アナログ回路かデジタル回路かはわからないが、とにかく全ての計算を一斉に行うブレインモルフィックな回路を使って概念形成と推論ができるロボットを作れれば、はじめて人間的な意識を持つのかも?と言えるのかもしれない。