第四話 二人の相性
そのあと二人は離れていった。
それから1時間ぐらいがたった。
僕は喧嘩で負傷した体を治療してもらっていた。
喧嘩したといってはいたが実際はかなり僕がぼこぼこにされたのが現実だった。
実際、向こうのほうは治療はしてもらってない。
僕はあの男のことが気になって仕方がなかった。
確かにあの男はわがままでとんでもない男だった。
しかし俺に謝るときのその表情は明らかに反省の色が見えていた。
僕はあの男はやばいやつだが何かほかにもありそうな感じがしていた。
そんなことを考えながら治療を受けているとスーツの人が現れた。
「先ほどはすいません。すごい荒げた声を上げてしまって。」
「いや大丈夫ですよ。実際、あなたが起こってくれないと僕はもっとぼこぼこにされていましたし。あっ!言い忘れてましたね。僕の名前はリューンと言います。あなたの名前は?」
「私の名前はヘスと言います。プロの剣士の協会メンスのスタッフをしています。」
「へー。メンスの。あの人はなにものなんですかね?」
「あの人は元剣士なんですよ。」
その言葉を聞いて僕は驚いた。
あの男が剣士。
あんな男が剣士になったら鍛冶屋とかどうだったんだろうかとか。
「あの人鍛冶屋とかどうだったんですかね。」
「あの人は鍛冶屋にパワハラばかりしたから追放処分を食らったらしいですよ。」
「追放処分!」
まあわかりはするけど驚いた。
実際あんなやばい人だから追放処分も納得する。
だが僕はこんなことも考えた。
あの人は確かにひどいが何かある。
それは何かはわからないが仕方なかった。
その様子を見たヘスさんは僕にこんなことを言った。
「あの人のことが気になるんですね。」
僕はありえないと思いながらも何も言い返せなかった。
その様子を見てさらにヘスさんは続けた。
「やっぱりそうなんですね。どうですか一緒に話してみてはどうですか?」
「どういう意味ですか?」
「実は先ほどの侵略者なんですがもういないらしいです。そのため今から自分の家に行ったりするのが許可されたのですよ。あの人は寮を追い出されて独り身ですからどうですか?一緒に話しながら荷物持ってもらうのはどうですか?」
僕はあの人を知りたいという思いもありながらもやっぱり怖いという印象がぬぐえずい断ろうとした。
「いいですね。」
それでも僕はこう言った。
「わかりました。ドランさんに伝えてきますね。」
「えっ?あっ!あの…」
僕はつい言ってしまった言葉に頭を抱えてしまった。
あの人は気性が荒いししかも昨日喧嘩したばかりの人だ。
そんな人と歩いて話をするなんてかなりきまずいに決まっている。
そして歩くとやっぱり気まずかった。
昨日喧嘩したばかりの人と歩いて自分の家を見に行くというのはかなりつらい。
何を話せばよいかもわからないどうすればよいかわからなかった。
その雰囲気に耐えられなかったのか相手が話してきた。
「なあお前なんで俺と話したいと思ったんだ。」
その言葉に一度は動揺しながらも答えた。
「なんでって…あなたがただの気性が荒くわがままな人ではないと思ったからだよ。」
その言葉にドランさんは強めに返した。
「あっ?どうゆう意味だ?」
「だってあなた喧嘩したあとに謝るときマジで反省していたじゃないですか。その様子を見て思ったのですがあなたもしかして根は良い人じゃないかとか思ったわけ。そう考えるとあなたのことが気になって知りたいと思って今に至るわけさ。」
それを聞いてドランは僕の胸ぐらをつかんだ。
「ふざけるな!俺はいい奴なんかじゃない!実際俺はわがままだっただろ!そして明らかに間違っているのに注意しているんだぞ。どう考えても悪いやつだろ!」
その言葉を聞いて僕の考えたことはさらに確信に近づいていった。
「それですよ!本当に悪い人は逆に自分が絶対正しいというようなところがある。でもあなたは間違っているという意識がある。それだけでもやはりあなたは違う。」
その言葉を聞くとドランさんはさらに胸ぐらをつかんだ手の力を上げながらも手を離して言った。
「とにかく行くぞ。」
そういって少し進むとやはりそこには様々なものがあった。
がれきの跡や死体などの様々なものがあった。
そんななか今度は僕からドランさんに気になったことを逆に聞いた。
「ドランさんプロの剣士だったんですね。」
それを言うとドランさんは驚いた表情でこっちを向いた。
「なっ…なんでそのことを知っている!」
「ヘスさんから聞きました。」
「あの野郎か。まあ確かにそうだ。だがもう追放処分となった。」
「聞きましたよ。パワハラみたいなことをしていたらしいですね。」
「まあな。」
「なんでそんなことをしたのですか?」
「俺に会う剣を作ってくれなかったんだよ。」
「どういうことですか?」
「俺はかなり重い剣が使いたかったんだ。しかしみんな俺が求めている重さには到達しなかった。逆に到達していないと軽く感じて耐えられなかった。」
「なんかこだわり強いのですね。」
「まあな。そういうところが昔からあってな。」
「そうなんですね。」
そんな話をしていると僕の家があった。
そこはまるでがれきの山となっていた。
僕はそのがれきの山を見て愕然としていた。
「そんな…そんな!」
僕はがれきのほうに急いで走りいろんなものを探した。
その山を少しづつ僕は掘り出そうと努力した。
軽いがれきやある程度崩れているがれきはなんとかなったがどうしても重すぎて持ち上げられないようながれきがあった。
しかもそれがかなりの数ある。
それでもあきらめられない僕は頑張って持ち上げようとしたがびくともしない。
その様子を見ていたドランさんは僕に話してきた。
「おいお前そんなに大事なものがあるのか?」
「はい。」
「わかった。手伝ってやるよ」
するとドランさんは僕の苦戦していたがれきの山をまるでスポンジのボールを持つように持ち上げ捨てていった。
その様子がしばらくたって夕方ぐらいになった。
しかしまだ仕事は終わらなさそうだ。
そしてそんな様子を見ることしかできなかった僕は何かできることをして彼を助けたいと思った。
僕はドランさんに聞いてみた。
「ねえドランさん。何か手伝えることはありますか?」
「そうだな。飲み物飲みたい以上。」
「わかりました。何か探してきます。」
そういうと僕はドランさんのために何か飲み物を探そうと急いで走った。
まずは近くの商業店などを探して何か飲み物はないか探そうとするがやはりどこもがれきの山だった。
ここはだめならあそこはどうだ。
みたいなことを延々と繰り返していてどれくらいがたったのだろう。
そんなことに集中していると気づいたときには夜だった。
「やばいな。遅くなってしまったな。しかもここどこだ?」
僕はつい探すことに集中しすぎてどこから来たのか忘れてしまった。
迷子の自分は近くに人はいないかとか頑張って探した。
「誰かいないかな?」
そう思いながら少し歩いていると二人の男の人が見えた。
僕は人を見つけたという希望だらけだった。
「すいませーん!たすけてくださーい!」
僕はそう言って助けを求めようと二人の男がいるほうに走った。
するとその男たちは暗い表情で左手に何かを持っていた。
僕はその様子に少し違和感を持ち、走るのをやめて止まった。
そして何を持っているのかじっくりと見てみた。
それはよく見ると剣だった。
そのことに気づいた僕は驚いた。
しかもその男たちは剣を抜いて僕に襲い掛かってきた。
「うおーーーー!」
そういいながら男たちは僕に向かって追いかけてきた。
「うわー!」
僕はまずいと思い、急いで走った。
走って走って走って走った。
しかし後ろを向いてみると男たちは追いついて来ている。
そして気づいたときには男の一人が飛んで剣を僕に振ろうとした。
もうだめだと思った。
すると
ドン!
と何かの音がした。
後ろを向くとさっき僕に向かって剣を振りかざそうとしてきた男が吹っ飛んでいた。
えっ?と思っていると肩をポンと置かれた感覚がした。
見るとドランさんが僕の剣を入れたリュックを持ちながら笑っていた。
「これだろ。ほれ。」
そういうとドランさんは僕のリュックサックを僕に渡した。
それを持つとあまりの重さに手がついていかなかった。
そのリュックサックを僕に渡した後、ドランさんは二人の男の前に立ち、拳を構えた。
「おいリューンだっけ。ちょっとやってくるわ。」
しかしいくらドランさんだって相手は剣を持っているそれにくらべてこっちは素手かなりやばいかもしれないと思った。
僕はだめかもしれないと思いながらもドランさんにあるものを渡した。
「ドランさん!」
「なんだ?」
僕はリュックサックから自分の作った剣を取り出し渡した。
「これは?」
「僕は鍛冶屋を目指していました。これは僕が作った剣です。役には立たないかもしれません。もしそうなら捨ててくださっても大丈夫です。」
僕がそう言うとドランさんはクスっと笑いながらこう言った。
「言わせてもらが俺は剣にはかなり厳しいぜ。」
「知っています。」
そう答えるとドランさんは剣を振り回して、戦うポーズをとった。