第3話 短距離魔法複合職(本気では無い)
精霊との話を終えた俺は、これからの事について考えていた。
(あの様子だと間違いなく龍馬が何かをしでかす。例えば──俺の罪のでっち上げ。うちのクラスにはお人好しが多いからなー。そうなったら俺の味方は水奈くらいになる──いや、確率は低いがセルルカも味方になるかもしれないが)
良くも悪くもうちのクラスは団結力がある。仲間がいなかったら、俺は──誰も殺さないという事はできないかもしれない。そう考えると、水奈かセルルカには仲間になっておいて欲しい。
そもそも俺だってここに来た理由は分からない──いや、来る直前俺は異世界と言った。
(また自動発動か?いや、《スキル》に転移魔法は無かった。そもそも魔法文字に情報があっても俺は空間魔法をマスターしていない)
たまに魔法を研究をしすぎて、「何をしたいか」をイメージするだけで体が勝手に魔法を構築する事があるのだが、転移魔法は魔法文字を見る限り生命魔法と物質魔法と空間魔法の派生だ。そして俺の空間魔法は研究途中だったはず。ならば俺が転移魔法を使うことは不可能なはずだ。
(そもそも明日は訓練がある。俺の力は秘匿しなければいけないレベルだからなぁ。どうしたもんか)
ちなみに龍馬が筋力200だと自慢しに来ていたが、俺の筋力は264だしうるさいので無視していた。そもそも技術が無ければ拳闘士ぐらいにしかなれないのだが。
色々考えた末、導き出した結論は──
(よし、明日は──)
手加減しよう。そう心に誓った。
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翌朝、役割に応じた装備品が支給され──俺は片手剣と軽防具を支給された──早速森での実戦訓練が始まった。ここら辺の魔物は弱いらしく、野生の蛇でも倒せそうと言われている程な為、問題は特にないだろう。良く出来た訓練と言える。
「次!ミコトヤ グレン!」
……日本語がカタコトになっているのが玉に瑕だが。そういえば漢字は勇者が広めたらしいが、2割程度が後の戦争などで失われたようだ。国名なども勇者が決めたとかなんとか。
とりあえず自分に差し向けられた魔物を見てみると──
「……何か違くないか?」
今まで皆が倒してきた魔物は白色の毛玉のような魔物だったのだが、今俺に敵意を向けている魔物は、灰色だった。まあ、弱い事に変わりは無いので(手加減はしたが)初級の風魔法で浮かせて一刀両断したが。昔見た剣術の動画は、世界を超えて活躍している。
「──!?」
などと考えた直後、自分に何かが入り込んでくるのを感じた。
──恐らく『レベルアップ』みたいなものだろうが、入ってくる力が尋常じゃない。気を抜くと倒れそうだ。騎士達が何か言ってくるが、それどころでは無かった──
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「──終わったか……」
「どういう事ですか!」
「!?」
感覚が戻って一番に聞いた声は、怒気を孕んだ水奈の声だった。何故そんなに怒っているのかわからなかったが、次の騎士達の言葉ですぐにわかった。
「すみません!異常種が出るとは思わなくて……!」
なるほど、俺が倒した魔物は『異常種』と呼ばれる個体だったのか。色が違うのも、あの量の力が入るのも異常種だったかららしい。
ただ、俺が倒れかけていたのが騎士達のせいというなら、水奈があそこまで怒っているのにも納得がいく。水奈は俺の「自称」親友だからな。親友が倒れかけたら怒るとは思う。
その後焦った様子の騎士達から弁明を聞かされたが、ロード国王に報告するという事にした。いくら無事でも責任はとってもらおう。
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ロード国王に謝罪の言葉を言われた後、俺は何故かセルルカと一緒に王都にショッピングをしに出ていた。簡単に第二王女を外に出すなよと言いたいが、異常種を簡単に倒したのなら大丈夫だろうと言われてしまった。
……まあ、セルルカが可愛いからいっか。しかも、セルルカがフードを被っているおかげで好奇の視線は向けられないが、フードを被ったセルルカも可愛い。チラッと見える金髪がまた良い。
(……ロリコンと思われても仕方ないか)
昨日水奈に言われた事を思い出して地味に心が傷んだが、セルルカは可愛いので仕方ない。父性の目覚めだろうか。
ちなみに一応正式な依頼なので、報酬もあるが、ショッピングのお釣りだ。それでも安く見積もっても300リヴェール──銀貨3枚分は余りそうだが。なお、1リヴェールは街中の単価を見る限りおおよそ10円といったところだ。まあ、ようはほとんど使い放題なのである。
「……楽しもうか、セルルカ」
「うん!」
「──うおっ、やっぱりセルルカは甘えたい盛りだな」
「違うも~ん。えへへ~」
にしても最近やけに異性との距離が近くなってる。今だってセルルカに抱きつかれてるし、昨日の水奈然り、精霊然り。あれは異性と呼べるか微妙だが。
『『『『皆女の子だよ(だもん)!』』』』
『呼んで無いのに来るな』
……精霊達は時折勝手に話しかけてくる。実は訓練の移動中にも話しかけられていたのだが、精霊の管理はどうするべきなのだろうか。
セルルカとショッピングをしながらなのに、俺の悩みの種は増えていった。
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