第2話 精霊の愛
リヴェール大陸で使われている、ソウルカード。そこに表された紅蓮の能力は──
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命夜 紅蓮
《スキル》
筋力 264 ・四元魔法 ・魔法文字解読
俊敏 281 ・光闇魔法 ・魔法合成
魔力 8271〔8271〕 ・生命魔法 ・魔法創生
魔攻 5497 ・物質魔法 ・魔力化
魔防 5962 ・時流魔法 ・言語理解
技術 429 ・空間魔法 ・精霊の愛
・補助魔法〔↑四元・派〕
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「……は?」
少し呆れるレベルでおかしかった。
(いや、いやいやいや。誤爆だ誤爆。『魔力』おかしくても俺が使える魔法全部書いてあっても『言語理解』とか『精霊の愛〔四元・派〕』とかいう絶対『神の贈り物』なんじゃね的なスキルがあっても誤爆と言ったら誤爆だ!!)
想定より大分人間離れしていたので、誤爆ということにしておく。
(よし、それじゃ今度こそいくぞ──)
しかし──
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命夜 紅蓮
《スキル》
筋力 264 ・四元魔法 ・魔法文字解読
俊敏 281 ・光闇魔法 ・魔法合成
魔力 8271〔8271〕 ・生命魔法 ・魔法創生
魔攻 5497 ・物質魔法 ・魔力化
魔防 5962 ・時流魔法 ・言語理解
技術 429 ・空間魔法 ・精霊の愛
・補助魔法 〔↑四元・派〕
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現実は非情であった。さっきと全く変わって無いじゃん。確か平均って100くらいだよな?一番低くても2.5倍以上じゃないか。改めて自分は化け物だと認識したよ。ありがとう、ソウルカードさん。君は絶対に許さない。
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水奈は、意外と魔法の適性があることを嬉しく思いつつも、目の前で1人百面相をしている紅蓮君を見て、心配していた。
(意外と『筋力』とかが低かったのかな?でもそんなに落ち込むことかなぁ)
よもや、能力値が高すぎてこれからの生活に不安を覚えているとは思いもしなかった。
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訓練のために役割把握をするそうだがソウルカードの詳細は機密に当たるそうなので、どのような戦闘スタイルなのかを自分で判断して伝えて欲しいという事だった。そのためには能力値の具体的な基準を知りたい──と紅蓮が思ったら、ソウルカードにヘルプが出たので見てみると──
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筋力…身体の全体的な力を表します。
俊敏…どれだけ速く動けるかを表します。
魔力…保有している魔力量を表します。
〔〕内は、現在の魔力量を表します。
魔攻…魔法での攻撃の総合力を表します。
魔防…魔法での守備の総合力を表します。
技術…武具や魔法の扱い、器用さを表します。
《スキル》…現在使える能力を表します。
〔〕内は派生か備考を表します。
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「……ヘルプは見て損は無し──か」
日本にいた頃からの常識を再度認識しつつ早々に絶望から立ち直った紅蓮は、早速(絡んでくる龍馬を無視しながら)ロード国王へ報告をしに行く。自分が選ぶのはシースルー王国の『王都』と呼ばれている場所でも中々いないという──
「本当にこれで良いのか?」
「ええ。自分に『短距離魔法複合職』は向いていると思ったので」
「はっはっ、助かるよ。王都でも《マジックバーサーカー》は少ないからのう」
そう、俺が選んだ、『短距離魔法複合職』──『マジックバーサーカー』とも呼ばれるこの職が、人が多く集まる王都でも中々いない理由は簡単である。単純に、剣と魔法の両方が同時に扱えなければ戦えないのだ。逆に、扱えればメリットは大きい。瞬間火力が高く、掃討戦や魔物戦──この世界には魔物がいるらしい──で重宝されるのだ。
ちなみに、剣に関しては少しかじった事がある。何故かというと──お尋ね者時代に《物質魔法》で剣を創り、あわよくば物理で殴ろうとしたことがあるのだ。日本の技術力は異常の域だということも忘れて。
(人が少ない職に就けば優遇は確定する。少なくとも貴族達が俺にちょっかいをかけたりはしないだろう。あの時ACブッパ──要は筋トレをしといて良かった)
この世界には貴族がいるらしい。いつか絡まれるのは明々白々なので、国王の太鼓判をもらおうという打算もあったりした──
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夕飯を食べている途中だというのに、紅蓮はシースルー王国第二王女のセルルカちゃん──フロート=セルルカ=シースルー──とイチャイチャしてた。
いや、正確に言うなら紅蓮がセルルカちゃんのサラサラで長い金髪を撫でているだけだが……薄い緑色の瞳を細めているセルルカを見ていると、無性に寂しさが湧いてくる水奈。
……別に寂しくなんか無いもん。紅蓮君に撫でられたいとか思って無いもん。嫉妬なんて感じて無いもん!
なんていう心の声が水奈の奥底から聞こえてくるのを感じる。これを聞かれたら、紅蓮君は「どこでそんなフラグ立てた?」とか言うと思うから、言わないけど!
「紅蓮君はロリコンなの?」
なので、代わりに皮肉を言っておいた。この後、紅蓮に撫でられた訳だが──水奈は、駄目人間になりかけたとだけ言っておく。紅蓮の手は魔性の手だったらしい……。
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水奈にこってり絞られた後、セルルカが「またね!」と言ってくれた(可愛い)おかげで元気を取り戻した紅蓮は、支給される部屋で日課になっている魔法の研究を始めた。今回は──
(そういや《スキル》に《精霊の愛〔四元・派〕》なんていうのがあったな。あれは──何なんだ?)
試しに軽く念じてみると──
『ん?呼んだ?』
「うおっ」
『……何その反応』
「いや、驚いただけだ。それより──何の精霊だ?」
いきなり脳内に幼女の声が響いた事に驚きつつ、紅蓮は考察していく。
四元魔法というのは本来、火、水、風、土の四大属性の魔法だ。〔四元・派〕というのは恐らく四元魔法の派生なので──爆炎、氷海、雷嵐、花草のどれかになるだろうと思っているのだが──
『私?私は《花草》の精霊』
『そうか。他にはいるのか?』
『──え?』
『ああ、これか?魔力的な繋がりを持たせているだけだ』
『……人間族でこんなことできる人……初めて見た』
どうやらここまでの魔法馬鹿は珍しいようだ。
『あの、《爆炎》と《氷海》と《雷嵐》の精霊はいるか?』
『へ?ハーちゃん達の事?』
『お!いるのか!?』
『うん、呼ぼうか?』
『あぁ、頼む』
どうやら他の精霊もいるようだ。興奮を抑えつつ、頭に響く声に集中すると──
『何ー…ハーちゃん眠いよー…』
『どうしたの。ナッちゃん』
『ラーちゃんさんじょー』
『……騒がしくなりそうだな』
『『『!?』』』
……あまりの残念さに思わずツッコミを入れてしまった。この調子だと、脳内カーニバルでも起きるんじゃないかな。
こうして紅蓮の悩みの種はまた1つ──いや。
『……精霊って皆若いのか?』
『『『『そうだよー』』』』
……はぁ。どうやら俺は精霊(幼女)からの愛を受け取ったらしい。四体分も。
《爆炎》の精霊 ハーちゃん 元気
《氷海》の精霊 コーちゃん 無感情
《雷嵐》の精霊 ラーちゃん アホの子
《花草》の精霊 ナッちゃん ただ1人の真面目