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光と忘却のユグドラシル  作者: 蒼穹 桜
プロローグ
1/5

AО

 痺れるような全身の痛みが少しずつ消えていく。


 もう目を開けよう――もし此処がいつもと変わらない景色であったとしても。



 目を開けようとして、ふと匂いがした。

 灰色の匂いだった。

 救い難い予感が頭をよぎる。


 もう恐れるのはやめよう――翳む目を精一杯見開いて変わらない絶望があったとしても。



 僕の目に映った世界は……灰色だった。

 黒い大地と白い瓦礫の山。

 今までの現実と変わらない灰色の景色が広がっていた。


『諦め』という、いつもの感情に支配されていく。



 そんな自分の身体を覆うように一陣の風が吹いた。

 その風は灰色の匂いを吹き飛ばし、倒れたままの僕を荒らしく持ち上げた。


 僕は風に引っ張られるように起き上がり、その覚束ない足元を必死に踏ん張り、雄叫びを上げて天を仰いだ。



 そこには空があった。

 そこには灰色ではない景色あった。

 そこには初めて見えた世界があった。


 僕は知らなかった……それでも直感で理解した。

 これが、これが――青い――空。

 こんなにも深く雄大で、光は爽やかで清々しく、全身の肌で直に感じる風は冷たくもそれでいて暖かい。

 この世界で初めて見た空は、想像していたよりもずっと美しかった。



 それでも、この空の青は本当の色でないのだろう。


 1つの夢を叶えた僕は、すぐに新たな夢を得た。

 本当の空を見よう。

 この青よりももっと濃く鮮やかで吸い込まれそうな青を見よう。

 僕の名前の意味を、その意味を見ることができる今の僕の眼で確かめよう。


 そうだ、そのために新しい僕に名前を付けよう。

 同じ名前でもいいかもしれない、でも新しく生まれ変わった僕は以前の僕ではないだろう。

 新たな夢を叶えるという決意を込めて僕自身が名付けよう。



 僕が名前を決めた時、吹き続けていた風は近くの瓦礫を崩した。


 いや、風だけのせいではないようだ。

 その瓦礫の隙間から人の声と、伸ばす肌色の腕が見える。


 新しい世界の新しい自分が出会う最初の人。

 新しい全てに挨拶をしよう。

 そして始めよう、冒険を!

 きっと全てが刺激的で感動的な出会いになるだろう!


 僕はその手を掴み、力一杯引き寄せた。


「初めまして! 僕の名前は――AO(アオ)――。これから大地を目指して塔を下り、蒼天を見上げるために雲を払う――僕はここの全てにそう誓うよ」



プロローグ アオイソラ

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