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第77話 上陸ルミネクサス

「ここが、ルミネクサス……」


 まだ荒野のように一面の土くれだった土地だが、建物の残骸が散乱する以前の光景よりは遥かに自然と感じられた。

 空気は土ぼこりが舞ってはいるが、不愉快なほどではなかった。


「予定通り、少しづつ生活圏を広げていくぞ。

 敵の存在には注意しろ。この地を守る拠点づくりが一番の目的だ」


 ルナからつなげられた橋を人々と物資が渡っていく。

 ルナの内部も十分に広大な土地だったが、今降り立った場所はどれほどの大きさがあるか理解できない。

 ルナが言うには小さめな島状の列島らしいが……


「よっしゃぁ! 釣れたー!!」


 フーが……海に釣竿を垂らして釣りをしていた……


「何してんだよ……」


「新天地じゃぞ? そりゃ釣りしかないじゃろ! こんなにも広大な場所があるんじゃから!」


 確かに、目の前には巨大なルナの船体と、広大な大海原。

 

「まぁ、確かに釣りもしてみたくなるか……」


「メリウス様もやりますか?」


 カインがすでに釣竿を用意してくれていた。


「入れ食いじゃぞ! こ奴ら釣られたことなんてないからじゃな!」


 次から次へとフーが魚を釣り上げている。大小さまざま、何やら魚じゃないものも、なかなか楽しそうだ。


「任せていい?」


「お任せください」


 カインに指示を任せてフーと釣り勝負になってしまった。

 川とは全く異なる魚の数々に俺たちはいつの間にか夢中になっていた。

 プリテやシャロンは釣り上げた魚をどのように調理するか、クッキング部隊で試行錯誤をし始めている。

 新大陸に上陸という偉業を行っても、俺たちの日常はあまり変化はないんだなと、少し緊張していた心にやさしい風が吹いた。


「う、う、うまい!!!!」


 生活拠点はあくまでもルナ内にしようと考えていたが、この海の幸だけは常に供給しなければならないな、と強く決意を固めた。


「種類も豊富ですし、これから毎日いろいろ試せると思うと楽しみです!」


「魚以外にもいろんなものがある。全部食べられるか確かめる」


「毒には気をつけてな」


「リューさん達がちゃんと調べてくれてるから大丈夫ですよメリウス様」


 しばらく慎重に調べを続けていくと現在のルナネクサスの状況が少しづつわかってきた。

 あの環境下であってもきちんと生息していた動物も少数存在する。しかし、そのほとんどは小型のネズミのような動物しかいない。昆虫は複数の種類確認できていた。

 海洋生物は多数確認されており、大変に美味しい。

 邪神とその仲間の気配は一切ない。この島だけかもしれないが、どうやら目立った脅威は見当たらなかった。

 さらには土壌化した新たな大地でルナ内の植物は問題なく育成することが可能だった。

 さらにはルナネクサスに存在する水源自体は汚染されておらず、流れる場所が浄化された今川の水も簡単な煮沸だけで飲料にも使えるレベルだった。

 ルナの話では過去は生活排水などの影響で、大規模な浄化システムなどを利用してから使用していたのでこの事実は驚きだったようだ。


「自然環境は邪神出現以前よりも大幅に改善しております。驚きです……」


「大神様がいなくなって、環境が改善したのか? それともルナの放った物のおかげ?」


「前者であると思われます……」


「大神様が環境を悪化させていた一因だったのかな?」


「それは……ある一面ではそうだったのかもしれません……」


 ルナはしばらくこの状況の把握に徹すると言い残して籠ってしまった。

 彼女にとって産みの親でもあり絶対的な存在が自然にとってマイナスな存在である可能性はすぐには受け入れがたかったのかもしれない。俺は、正直スケールがでかすぎてよくわからなかったが、俺たちも生きていくうえで木々を利用したり草花を食べたり生物をいただいているのだから、そういう面は持っていることを自覚しているから……あまり疑問には感じなかった。


「しかし、敵がいないとなるとこの剣も……戦わないで済むならそれでいいんだがな……」


 大神様からもらった仮面からできた剣を見ながら現状を振り返る。

 そういえば各神様たちも大神様から作られて、大神様自身もこの地にいるって言っていたよな……

 邪神を滅ぼすって言っても、その気配はしないし、大神様の気配もない……

 少しづつ活動できる範囲を増やしていくしか今できることは無いか……


「そもそも、こんな広大な土地に対して俺たちの人数が少なすぎる……

 情報を集めるにしてももっと人でもいるからなぁ……長期戦って考えたほうがいいよな……」


 星空に剣をかざしながら、今後のことを一人考えていると、カインやプリテたちが呼びに来た。


「メリウス様、どうしたんですかこんなところで?」


「今日もシャロンが料理作った。早く食べよう」


「ああ、そうだな。いやぁ、思ったよりここが平和だなぁと思ってね。

 ルナの中のほうが危険がいっぱいだったからさ」


「確かに、最近は穏やかな日々が続いていますね。

 もちろんいつどんなことが起こるかわかりませんから準備は怠っていませんが……」


「想像以上に時間軸がずれてしまったことが原因かもしれない。

 大神様もまさかここまで時間がずれるとは思っていなかった可能性」


「なんかルナみたいな物言いだなぁ……」


「いえ、プリテ様の考察は正しいものと推測いたします」


「おお、ルナ急に、久しぶりだね」


「失礼しました。メリウス様、ルナはしばらくこの星の情報収集に集中いたします。

 つきましては、外部にゴミ箱を用意しましたので、どんなものでもいいのでいらなくなったものなどをどんどん放り込んでいただけると幸いです。この星全体に情報収集用のケーブルを構築していきます」


「わかった。ルナも頑張って」


 ルナとルミネクサスを渡す橋の隣に大きな収容口が設置される。

 生活ごみから様々なものを放り込むとルナがそれを利用してケーブルを世界中に伸ばしていくらしい。

 これには膨大な時間がかかることは容易に想像できた。

 俺たちの当面の目標は、人を増やして幸せに暮らすことになる。


「結婚しようかプリテ、シャロン」



 




 


 




 




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