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第七十六話 空気清浄機

 長い長い年月をかけて風化した建物、その建物は見たこともない物質によって作られているように見えるし、その構造も観たことがない変わった形態をしている。


「これは……生物などおるのか? 石の地面に瓦礫の山……緑など一辺もない……」


「空が暗いですね、常に稲光が鳴っているようですし……」


「これ、外に出られるのですか?」


「外部の空気は粉じんが多いのでマスクなどはしたほうがいいが、我々でも問題なく生活が出来るそうだ」


 ルナの声は俺の額の宝石を通じて聞こえてくる。

 現在の大地の状況は、数十万年という時間の経過で風化し、毒性物質は除去されているそうだ。

 それも神様が講じた策の一つで、長い長い年月を目に見えない生物たちが働き続けて毒された大地や大気を改善したそうだ。

海上に停泊したルナの中で俺は乗組員に現状のこの大地の状態を伝える。


「つまり、この大地で再び僕たちの文明を築けるということだよね」


「邪神たちは?」


「ルナが調べたところ邪神本体は隣の大陸に変わらず存在しているが、生物が死滅しきった後に、邪神の分体たちは活動限界を超えて、死滅している可能性が高いそうだ。

 それと、海中には邪神たちは及ばないそうで、水産物は現在の汚染から回復した海洋での活動を確認できているそうだ。

 むしろ海中は生物のプールのように豊富になっているそうだ」


 しばらくは外殻はそのままにこの世界の現状を、情報を集めることに注力する。

 リューやアン、ドワ達とそれらの情報やルナを通して外部の物質などを分析して安全を確かめていく。

 その間、他の人々には出来る限り普通に暮らしてもらっている。


「あまりの話に今だによくわかっていない住人も多いですね。

 ただ、メリウス様に救われてからまともだった日々がほとんどなかったので、古くからの人間は自然に受け入れています」


 いいんだか、悪いんだか……


「荒廃した都市はたぶん少しでも衝撃を与えれば粉々になって散っていきそうだねぇ。

 それに一番の問題は空を厚く被う雲。大量の粉塵が空を覆っており、上空には風が吹き荒れて雷が絶えず走っている。あれは精神的によろしくない」


「ルナが提示しているのは魔石を用いた浄化法らしい。目に見えない魔石を用いた生物、微魔生物を上空に打ち上げて、雷から力を得ながら雲を集めるそうだ。魔石に近い物質も多いようでそれを回収しながら大気を正常化させる作戦みたい」


「それは素晴らしい、メリウス殿はいいなぁ、私もルナの言葉を聞きたいよ……」


「あ、なんかそれはもう少しらしい。通信機をリューたちが作ってくれたからそれを利用して会話できるように開発中らしい」


「それは素晴らしい、何でも言ってくれってルナに伝えてください」


「私もリューやアンドワ、皆と話すのが楽しみだってさ」


 そんな感じで、ルナも復活からいろいろなものを吸収して自分自身を進化させていた。

 ほどなくして、ルナは住人たちと会話をすることが可能になって、さらに外部の分析は加速していく。

 ルナの内部の生活もどんどんと進化を重ねている。

 少しづつルナの外部、ルミネクサスの世界を探索する準備が出来ていく。


『今日は大気改善用生物の打ち上げを予定しております。

 子の国の外壁から魔道具での打ち上げとなります。

 ルナ時刻で10:00発射予定となります』


 ルナがだいぶ自然になった言葉で今日のメインイベントを通達してくれた。

 はじめは片言で硬い言葉遣いも我々との会話でどんどん進化していった。

 今ではルナちゃんは研究所の職員たちの癒し担当になっている。


「ハイ! ルナ今日の天気は?」


『今日ノ天気ハ一日中晴レノ予定デス、変エマショウカ?』


 こんな感じで彼女と職員は会話を重ねていったのだ。


 閑話休題


 今日は一大プロジェクトである空気浄化プロジェクトの実行の日。

 研究所のメンバーも雲の高度まで安全に微魔生物を打ち上げるシステムの開発に多くの知恵を働かせた。

 複数の魔石を利用して上昇から空中での広範囲への展開までを組み込んだ、現在の俺たちの技術の結晶と言える。

 打ち上げには多くの獣人たちが集まった。

 魔導映写装置によって各村へと映像も配信されている。


『発射5秒前、4、3、2、1、テイクオフ』


 爆発のような加速、まっすぐと直上へと上がっていく装置。

 外殻をびりびりと大気の震えが振動させる。

 

『目標高度、到達。微魔生物散布、成功。気流活動想定通り、数時間で世界全体に行き渡り活動を開始していきます。成功です』


「おおおお!!」


 研究所が歓喜の嵐に包まれる。

 これによって外界の粉塵や気候は改善され、とうとう俺たちは外の世界に旅立てることになる。

 この作戦の効果はおどろくほど早く訪れた。


「なんか、外の映像明るくない?」


「ほんとだ、ルナ、外部の状況は?」


『現在周囲20キロ範囲における粉塵濃度は80%低下、上空の雲も70%以上減少しております。外部時刻16:00間もなく10万2021年ぶりの夕日を見ることが可能になります』

 

「外殻映像を疑似大気から外部映像に切り替えてくれ」


『わかりました。ルナ全域に通達……完了。外部映像に切り替えます』


 空に浮かぶ雲、ほんの少し日の傾き始めた空。いままでも何度も見てきた映像だったが、まるで空気が違うかのような光景が広がる。


「瓦礫も、きれいになってきている……」


『地上に降りた微魔生物は地上部の瓦礫を分解し、土壌へと変化させます。

 ルナ上の食生物が生活するのに適した大地構成に変えた後に、微魔生物自体も土へと還ります。

 同様に、海中も水質悪化地帯は改善したのち海へと還ります。

 この過程の終了をもってルミネクサス浄化作戦第一段階が終了となります』


 ルナの言葉が、歓喜を含んでいるように感じたのはきっと俺だけではなかったはずだ。






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