第七十話 アサシン
そういえば、なぜかすっかり忘れていたのだが、卯の神、御神像を復活させて新たな武器を手に入れていた。
二対のショートソード。
軽すぎず重すぎず、両手で自由自在に操れる武器で、攻防にすぐれお気に入りだ。
両手剣、斧、両手剣とバランスが取れてきた。寅の御紳像の転移は今では欠かせない。
謎の仮面の武器もバリエーションが増えていろいろなことに対応できるようになってくる。
それだけ戦闘でも臨機応変にやっていければ負担も減る……といいな。
「さて、行こう!」
いざ出発すればあっという間だよく鍛えられた乗り物は俺たちをあっという間に目的地へと連れていってくれる。
空中からの監視に十二分に気をつけながら見張り班と合流する。
俺たちは気配をできる限り消して侵入し、侵入後見張り班が空中の敵の注意を引いて適当にあしらって撤退してくれる手はずになっている。
こうすることで入ってすぐ背後からの急襲のリスクをさらに減らせるはずだ。
「みんな、頼むぞ。無理は絶対にするな」
「大丈夫ですメリウス様、俺はシャロン様に抱擁されるまで死なないって決めているんです」
「はっ! それじゃぁ一生死ねないな」
「今抱擁して背骨おりましょうか?」
笑顔なのに目線が冷たいのシャロンさん。
見張りの若い男はブンブンと必死に顔を振っている。最初少し迷ったのは見逃さないぞ。
「さていくぞい」
フーが気配遮断して周囲を把握しながら最適なルートを先行してくれる。
目の前にいても気をつけないと見失ってしまいそうな見事な隠形だ。
カインも隠形をフーから筋がいいと褒められている。
俺は体がでかすぎてどうしようもない……
それでも先行している者の技術で5人が無事入口に取りつけ、内部へと侵入する。
見張り隊に合図を送り洞窟へと入っていく。
「さて、アレを使ってみるか」
「どうですかね……」
アレというのは研究成果の一つ、生体が発するエネルギーを強調して視覚化してくれる道具だ。
薄暗い通路の少し先に4体ほどの魔物がいることを光を使わずに把握できる。
これならば、いち早く敵がいることに気が付けるし、照明で先手を取られることもない。
「真っ暗だとだめじゃな、通路の壁も見えん」
「でも敵の形が見えれば狙撃はできる」
「わしとカインが近づいて手を上げたら二体狙撃してくれるかの?」
「わかりましたフー様」
「プリテ、シャロン準備はいいか?」
「いいよ、二人ともいつでもどうぞ」
「大丈夫です」
二人は静かに弓を絞る。新型の弓はその精度も威力も段違いに向上している。
俺もいざというときは飛び込む準備をしておく。
二人は壁沿いにするすると敵に接近する。
指でカウントを取る。
5
4
3
2
1
ヒュッ
矢が空気を割く音が聞こえる。同時に二人は背後から敵ののどを切り裂く。
頭を矢で貫かれた二体も含め、大きな音がしないように受け止めて通路の端に寄せている。
音もなく魔石を取り出すとさらさらと塩になっていく。
終わってしまえば、何もなかったかのような流れだった。
「お見事……」
ため息が出そうになった。
暗殺者だな、もうすでに……
「なるほど、こういう使い方もありますね」
「少し指がぼやけるから闘気を込めてくれると助かる」
「ふむ、要工夫じゃな」
「だんだん暗殺集団みたいになってきたな」
「最小の労力で最大の結果を出すのは重要じゃぞ?
わしももう若くはないからのぉ少しは楽させてもらうわい」
「人を殺しかけてさらに最近動きに磨きがかかっている人の言う言葉じゃないですよ……」
結局あの一戦以来一本も取れていない……
「さて、おしゃべりはこれぐらいにして先に進もう。外でも頑張ってくれている仲間のためにも」
皆無言でうなづき通路の奥へと進む。
薄暗い通路を息をひそめて進むのは体力も精神力も使う。
物音には人一倍敏感なカインとプリテが気配をいち早く察知して、同じように片づけていく。
曲がり角を利用すれば俺もちゃんと協力できる。
「結構広いな……敵も種類が多い」
「人間型が多いから助かるな、空飛ぶ奴も部屋の中では意味がない。
犬などがいるとこの方法はもうできんからのぉ」
「……ジーちゃんが余計なこと言うから……この先呼吸音、たぶん獣」
あちゃーって顔をしたフーが少し可愛かった。
ここからは正攻法だな。
通路の向こうから狼二匹、オーク3匹、ゴブリン2匹、ハーピー2匹の部隊が接近してくる。
通路は4人も歩けばいっぱいになる。
「プリテ、シャロン、狼をよろしく、斉射と同時に俺たち3人が突っ込む」
通路の端に分かれて準備をする。
ヒュッ! その音を合図に俺たち3人は走り出す。
「キャイン!!」「ギャウ!」
突然の獣の悲鳴に集団は驚く、その時にはすでに俺らは目前まで接近している。
【グガ! ガァ!!】
オークの喉に剣を突き立てると少し後ろにいたハーピーが襲い掛かってくる。
俺はその鋭い爪をもう一方の剣で受け、のどから引き抜いた剣をそのまま胸板に突き刺す。
フーもオークへと飛び込み一撃で首の骨をへし折り、すぐにハーピーを壁に叩きつけて絶命させている。
ゴブリン二匹はいつのまにかカインに体と頭を分けられていた。
【ゴガァ!?】
最後のオークも驚きの声をようやく上げ、それが断末魔になる。
「いいですね新しい武器……」
カインが少しうっとりと武器についた敵の体液を落としている。
「体も軽いのにいざというときに出す力は以前より上、いいものを作ってもらったわい」
「全員きれきれで仕事が少ない」
「プリテ前変わるか?」
「次やろうかな……」
装備の一新でだいぶ余裕が出た。
邪悪な像が置かれた部屋に出るまで苦戦することなく戦うことができる。
「そりゃ、空を飛ぶ敵がおれば、こういう形じゃよな」
今まで見た部屋の中で最も広く、部屋の上部にはハーピーが数十体は確認できる。
怪しい像を中心に狼やら犬やら、オークやゴブリン、フードを着たやつも認められる。
怪しい香りと煙に包まれて赤い目を爛々と輝かせている。
供物が像の前に投げ込まれ、像の口から魔物が現れている。
相変わらずの悪趣味な儀式を行っている。
今までで一番広く、そして多い敵がいるのは間違いなかった。
「数が多いのぉ……やはり道具が必要になったな」
「そうですね」
カインが懐からいくつかの装置を取り出す。
これがリューやアン、ドワ達の新兵器だ。
とうとう実践に投入されることになる。




