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第六十八話 魔紋武具

 ノタの街へと戻ってくると、卯の国開放の影響が出ていた。

 武器、防具に細かな工夫、細工をすることで細かなレベルアップが起きていた。

 持ち手のほんの少しの変化、柄と刀身のつなぎ目、防具の接合部の工夫、細かなものでもたくさん重なれば大きな変化となる。

 より動きやすい防具、より使いやすい剣、連射性の高まった弓、武器防具だけではない。

 生活における様々な道具に対してその影響は表れていく。

 地道な進歩だが、大事な成長と言える。


「すごいですね、以前の剣と別物のように扱いやすい……」


 カインが新しくなった剣を見事に操りながら素直な感想を述べる。


「いやー、卯の国の技術には驚かされる。

 ほんの少しの工夫でここまで結果が出てくるとは思わなかった。

 毎日学ばせてもらってるよ」


 鍛冶場の職人たちは卯の国からの職人と意見を合わせながら日々進化している。

 気付きにも近い細かな改善点と、それを可能にする繊細な技術。

 鍛冶の技術に自負のあった丑の人を中心とした技術者、職人たちは、自ら認識の甘さをまざまざと見せられ初心を思い出すことになる。

 また卯の国の職人たちもまた、ダイナミックな鍛冶の技術に心を打たれ、お互いに尊敬しあう理想的な関係を作っていた。


 さらに武器防具や道具を飛躍的に改善させる方法として模索されているのが魔石と魔紋と呼ばれる技法だ。竜の国の人々が古くから伝えられた魔石の利用方法が、メリウスたちの大量の魔石によって実験、実践できるようになり、過去の強力な叡智を今に蘇らさんとリューを中心に研究が始まっている。

 これもこれから先が非常に楽しみな分野だ。

 


「さて、なんとなく次の竜の国を取り戻すと、なんとなくもっと大変な状態になる予感がする」


「ふむ。つまり準備を今以上にしっかりとじゃな」


「今は日進月歩で技術が進歩していますからね!」


「最近カインは研究所に籠りっきり……」


「カイン君の発想は素晴らしいから研究所としても歓迎したいです!」


「変な妄想してはぁはぁしてやる気出してるんだもん」「変態だもん」


「みなさーん。食事ができましたよー」


 シャロンと村人が夕食を運んできてくれた。

 食生活も多様な土地を得て様々な恵みを得ることが可能になってきている。

 食の充実は人生を豊かにしてくれる。

 ほんの数年で子の国を中心として発達具合は破竹の勢いだ。

 人口増加による労働力の増加、食糧問題をクリアできていればここまで爆発的に発展するのかと感心してしまう。

 新しい国を開放するたびに様々な加護も得ることができて、今のところ順調に進んでこれている。

 各国の人々にも笑顔があふれてきている。


「早く救いに行きたいけど、焦りはあの時みたいな危機を呼ぶかもしれないからね」


「雑魚はそんなに強さは変わらんが、ボスはどんどん強くなっており気がするしのぉ……」


「フーじーちゃんなんかすごい技でやっつけてよ」


「プリテ、無理を言うんじゃない」


「私はもっと闘気を磨かないと、毎回武器が壊れちゃう」


「それについてはもう少しで形になる打開案がありまーす」


「頑張ってまーす」「僕も協力してまーす」


「カイン君説明よろ」


「はい、今開発しているのが魔力や闘気をより効率よく、もしくは増加させたり、変質させたりして武器や防具に流せる方法を実験中です。

 魔石と魔紋を利用した方法で、体内からの魔力や闘気を蓄積用魔石に取り込み、魔紋との組み合わせで剣の材質自体となじませ、さらに属性や行動支援など様々な効果を発揮してくれます。予定です」


「すごいなそれは、どれくらいで形になりそうなんだい?」


「耐久性に難はまだありますが、テスト段階には入っています。

 そこで相談なんですが、メリウス様もフー大老もテストに参加してほしいのです」


「普通の兵隊さんたちレベルの闘気なら問題ないんだけど、カイン君レベルになるとなかなかうまく行かなくてね、サンプルが多くほしいんだよ」


「もちろんだよ! いくらでも協力するよ!」


「そうじゃな、完成すれば大きな力になるじゃろ」


「ありがとうございます!」


「プリテもやるよー」


 結局戦闘力のアップは急務である以上全員で新型武器防具の開発に協力する。

 村の発展はすでに村人たちの手によって軌道に乗っているため、開発中にもニョキニョキと発展していく。

 実用に耐える武具が完成するのには半年を要した。


「それじゃぁ起動するよ」


「お願いします」


 俺は軽く魔力を循環させる。両手両足につけられたリングを介して魔力が吸い込まれていく感覚がする。同時に武器と防具に刻まれた紋様が鈍く青く光を放つ。

 注ぎ込む魔力を変化させると光の強さが変化する。


「メリウスさんこれちょっと切ってみて」


 岩の上に盾が置かれる。

 鉄製のラウンドシールド、普通に考えれば斬れるはずはない。

 闘気で覆えば少しは行けるかもしれない。

 少なくとも魔力では今までは不可能だった。


「ふんっ」


 ギィンという音ともに盾の半分ぐらいまで剣が刺さる。


「おお、そこまで力入れてないぞ俺」


「防具のほうでも身体強化が以前より効率よく行われていますから、剣の威力も上がってますね。

 続いて闘気だけでやってみてください」


 闘気は依然と同じように武具を包むように意識するが、これがいとも簡単に武器や防具の隅々までいきわたる。険しい山道を登るように巡らせていたのが、まるで下り坂を降りているように広がる。

 先ほどとは異なる紋様が赤く光る。


「おお、すごい楽だな」


「もう一度これお願いします」


 盾を90度回転される。もう一度狙いを定めて振り下ろす。


 ギャンとまた激しい音がして同じくらいの傷が十字に刻まれた。


「魔力と同等、魔力による闘気並みの強化が成功と言っていいですね」


 カインも興奮が隠せないようで喜んでいる。


「最後に同時に発動してみてください」


「わかった」


 同じ要領で魔力と闘気を巡らせていく、青い光と赤い光が混ざり合ってなかなか幻想的だ。

 ただ、派手だよなこれ……


「実際は光りませんよ、これは試験的に光らせて情報を得やすくしています」


 俺の心を見透かしたリューに突っ込みをもらう。


「最後はこれを斬ってみましょう」


 案山子に着せられたフルプレートのアーマーだ。

 最近は戦闘班もこのレベルの装備を装備しており、野良赤目の持つ粗末な石斧程度だと傷もつかない。


「いきます」


 正眼の構えから右上段より袈裟斬りに斬りつけてみる。


「ん?」


 感覚が軽すぎる、ふと目を上げるとアーマーが真っ二つになってガラガラと落ちるとこだった。


「……予想以上ですね」


「メリウスさんとカインさんぐらいしか今のは無理だと思います」


「皆それぞれ得意不得意あるからのぉ」


「もちろん皆さんには個人に合わせたものを作りますから、似たようなこともできるようになりますよ」


「つまり、実験は」


「大成功です!」


 おおおおおおおお!!

 周囲で見ていた研究員たちも歓喜の声を上げる。

 あとは魔石による属性変化などの調整をするだけだ。

 すでに基礎となるものが完成した今、そちらはあっという間に形になった。


 こうして俺たちは、強力な装備を手に入れた。





 

 

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