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第五十六話 戦火の種火

「おーこりゃ旨いのぉ!」


「フー様に喜んでもらおうと頑張りました!」


「ファンの料理の腕は今では村一番。負けないけどね!」


「いえ、プリテ様やカイン様、皆様に教えてもらっているからです」


「ぬぐぐ、食べたいし、飲みたいけど……もう少し、もう少し回復すれば……」


「メリウス様、もう少々お待ちを、次にこれを飲んでください」


「おう! ぐはぁ! に、苦いぞこれ!」


「良薬は口に苦しです!」


 メリウスはフーとの戦いのダメージのせいで未だに治療中だった。

 派手に吹き飛んだのはフーだったし、一時的なダメージもフーの方が酷かったが、内部へと持続するダメージは確実にメリウスの中に溜まっていた。


「自己治癒力を高める光の魔石とカイン特製の薬のお陰でだいぶ楽になった」


「多分、食事も大丈夫だと思いますよ」


「ありがとうカイン、やっとこの我慢の拷問から解放されるよ」


 ようやく目の前に広がる食事たちを向かえる準備ができたメリウス。

 改めて村人たちの盛り上がりは最高潮を迎えた。


「いやー、儂はもう食えん……いてて……食い過ぎで肋骨が軋む……」


「フー、このダメージの残り方がえげつないんだが……」


「だから言ったじゃろ、そうしなければ少なくとも儂の肺は折れた肋骨でズタボロ、『剄』まで使う気はなかったのに……お主が頑丈でよかったわい……」


「それなんですがメリウス様、正直最初助けられないかと思ったんですが……

 その自己治癒力が以前より遥かに増大してまして……」


「それが寅の加護、文字通り肉体強化の加護。身体能力の向上に自然回復力の増強。

 これからはこの力が村人たちを守ってくれる」


 プリテ先生の解説コーナーである。


「子の加護で多産・早熟、丑の加護が鍛冶関連、そして寅の肉体強化……神の奇跡は凄いな」


「これからは儂も各国を開放する旅に同行させてもらう。よろしく頼むぞ」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


「それじゃあ儂は家に戻る。旅に出るんじゃ、嫁にもしばしの別れを告げんとな」


「……また子供増えるな」


 このプリテの予言は現実となる。


-------------------------------


『メリウス……』


「ん……? ああ、ここですね。寅の神よ無事の解放お慶び申し上げます」


『うむ、助かった。助力に感謝する。我が名はビャッコ、寅の国を守る神だ』


 ホワイトタイガーが直立している。

 今までで一番動物動物した神様だった。


『さて、実はなメリウス、次は二つの国が同時に現界する。

 の国とたつの国だ。

 ちょうど子丑寅の3つの国と触れ合う形で国があるためだ。

 それに、敵の数が多い。国がつながれば三国に敵がなだれ込んでくるだろう。

 儂は少し力を持つ神だ。この事態に対応できるようにお主らに力を与えよう。

 わしの力をメリウスの神珠しんじゅ、その額の珠に分け与える。

 そうすれば御神像を通して各国を瞬時に渡ることができる。

 共に生けるのは深くお主と縁を持ったものだけだが、それでも助けにはなるだろう。

 これから先も神を助け、御神像を復活させれば移動が可能になる。

 この世界を頼んだぞメリウス』


 メリウスは深々と頭を下げる。

 真っ白な空間からメリウスの意識が遠ざかっていく。


----------------------------


 目を覚ますと寅の村の自室でプリテとシャロンに挟まれて眠っていたようだ。

 衣類の乱れから、昨晩はお楽しみだったようだ。

 二人に布団をかけ、起こさないように外に出る。

 まだ日も上がりきっておらず、村は昨晩の狂騒の後片付けもままならぬ有様だった。


「大騒ぎして喜べることは幸せだな」


 メリウスはキンと冷えた早朝の空気を大きく吸い込む。

 頭が目を覚まし、記憶の片隅にいつの間にか残されていた転移の法を思い出す。


「……便利だな……」


 知識の中に突然現れた移動方法は全てを変える程の可能性を感じていた。

 何度か試してみたが、実際には物資は手持ちの装備、旅の準備程度で牛車のような大容量の物資は送ることが出来ず、牛やビッグラットなども輸送不可能で、本当にメリウスとカイン、プリテ、シャロン、フーを送るだけだった。


「それでもこれは素晴らしいですよメリウス様!」


 一瞬で子の村、丑の村へ移動して各村との情報を共有できることの素晴らしさはカインにとって革命的だった。

 狼煙による情報伝達も少しづつ充実しているが、それでも依然として完成には至っていない。

 そして、その効果はすぐに発揮される。

 寅の村で次の国への旅の準備をしているメリウス達に急報がもたらされた。

 早鼠による伝令によって子の国の新規開拓村に赤目の敵襲があったという情報がもたらされた。

 

「すぐにイチニア村へと戻りましょう!」


「カインすぐに全員を呼んで祠の前へ!」


 全員集まるとイチニア村へと飛ぶ。


「メリウス様お待ちしておりました。早鼠を用意してあります。案内はこちらの者が」


「わかった。早速だが走りながら情報を聞く、行くぞ!」


 すぐに村を出発する。

 突然現れた赤目達が、最初の村イチニア村から最も離れた開拓予定地に来襲したのが半日前、すぐに作業員は退避しており今は次の村で抵抗をしている状態だとわかる。


「村の防備はしっかりしてるんだよな? それなら持ってくれてるよな?」


 鼠にまたがり移動しながらメリウスは作戦を考える。

 早鼠、ビッグマウスの中でも特に足が早く体力がある者同士を繁殖して作り上げた騎乗用の鼠だ。


「それが、どうやら敵に空から攻めてくるものが混じっており、油断できない戦いになっているようです」


「なるほど……プリテとシャロンに頑張ってもらわないとな」


「任せといて~」


「が、頑張ります!」


「敵も多彩になって来たな!」


「そうですね、我々も工夫が必要になりそうです」


「おっ、あれじゃな……大丈夫そうじゃ!」


「フーじー早い~、でも見えたー」


 プリテは走り続ける鼠の上に立つと弓をつがえる。

 まるで曲芸のようなその技をシャロンも真似しようとするがうまくいかない。

 それにシャロンの目にはまだ敵の姿を捕らえられない。


「シャロンちゃんムリしないでー、もう少ししたら見えるよー」


 弓を放つと ヒュンっ と甲高い風切音がする。

 たぶん目に見えぬ遠くで敵は撃たれているだろう。

 次々に弓を放ちながら村へと近づいていくと、村人たちが必死に敵と戦っている声がする。


「シャロンはここから空からの敵を相手にしてくれ! 余裕ができたら地上の敵も、プリテも同じく!

 オレとカインとフーは突っ込むぞ!」


 村の防壁にとりつきかけている敵の一軍の手前で鼠から降りてそのまま突撃する。

 貴重な早鼠は誘導係に避難させる。

 赤目の数はかなり多い、空から村を襲っているのは両の手に翼を持つハーピーと呼ばれる魔物。

 陸上部隊は亜人種が多いように見える。

 ゴブリン、コボルト、みんな大好きオークにオーガ。

 統率はされておらずバラバラと村を襲っている。

 これらの規模が統率を執って村を襲っていたらすでに村は壊滅していたかもしれない。


「このまま殲滅するぞ!!」


 メリウスの登場で村の防衛部隊も沸き立つ。

 新たな世界とつながってはじめての戦闘が開始される。


 





 



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