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第五十話 『剄』

しばし仕事で執筆時間が取れないため3本あげます。(1/3)


「メリウス。刻は来た」


「とうとうか……、準備はできている。狼煙をあげよう」


 ガイラー村から狼煙が上がる。

 今回の敵の本拠地と思われる場所は結構な距離があるために、事前にその間に中継場所を作成している。

 その場は将来的には村分けして移住を考えている。

 それぞれの場所には腕利きの若い衆が待機して守ってくれている。

 その中継点へと出立の報を狼煙で知らせるのだ。


 すでに準備は出来ている。

 牛車を率いて村を出立する。

 メリウス、カイン、プリテ、シャロンそれにフーだ。


「では行ってくる。留守は頼むぞファン、子どもたちよ母さんをしっかりと支えるんじゃぞ」


「フー様、必ず帰ってきてくださいね」


「父上、この魔石には皆の想いをたっくさん詰めておきました!

 どうぞ魔除けの護りとしてお持ちください!」


 美しい装飾を施された腕輪、魔石が散りばめられていた。

 中央の大きめなものがファン、周囲に散りばめられた少し小さめな物が子どもたちからの贈り物だ。

 魔石は基本的に倒した者の物になる。

 彼らも頑張って赤目を退治し手に入れたものだ。


「ああ、これで百人力じゃぁ!」


「失礼します! 皆様申し訳ありません!

 大型妖魔が3体森から村へと向かっています!」


 そんな送り出しの場に急報が届く。

 すぐにメリウス、カイン、フーが現場に疾走る。

 プリテとシャロンは村の内部から高台へ上り弓を構える。

 3体の熊が真っ赤な目を見開いて駆けている。


「我が子らよ! よく見ておけ! これが『剄』じゃ!」


 フーの言葉を受けてプリテとシャロンは射撃体勢のまま維持する。

 3体は正面に立つ3人にそれぞれ向かっていく。

 フーの子どもたち、それに村の人々はみなフーの姿を目に焼き付けるように集中する。

 

 巨体が凄まじいエネルギーを込めて突っ込んでくる。

 フーは身じろぎ一つせずただ立ち尽くしているようにみえる。

 その体内では巨大な闘気を練り込んでいる。

 熊は勢いそのままにその豪腕を振り上げ、フーに叩きつける。

 フーはまるでそこに熊が居ないかのように、一歩その間合いへと入り込み振り下ろした手の内側に入り込む。

 次の瞬間まるで綿毛のように熊の身体がふわりと浮き上がる。

 相手の力を利用してフーがその巨体を軽々と中に舞わせたのだ。

 熊に向け、クルッと背を向けその背を密着させる。


 ドオン!!


 次の瞬間、大地が震え、周囲の森から鳥が羽ばたく。

 震脚によって大地が抉れている。

 熊はさらに凄まじい状態になっている。

 フーの背が当たっている反対側の背が爆ぜていた。

 空高く舞い上がった魔石がフーの手に収まると、熊は塩へとその姿を変えている。


「凄い……」


 その光景を見ていた全ての人間が息を呑んだ。


「流石ですねフー大老」


「何を言う。音もなく敵を殺すお主らのほうが恐ろしいわい」


 その凄まじい戦闘の影でメリウスもカインも赤目を始末し終わっていた。

 フーの手ほどきを受け、闘気を身に着けてメリウス達の戦闘力はかなり向上していた。


 改めて村人たちに手を振り出立する。

 中継地点までは2日の道のりだ。

 牛車に揺られらながらののんびりとした旅、今からこの世界に巣食う敵の本拠地に攻め込む旅とは思えない。


「メリウス様お昼はお弁当がありますので交代します」


「カインが先に食べてていいよー、風も気持ちいいし森の中はいいねぇ……」


「そうですね。赤目は自然を破壊したりはしませんからね。

 それでは先に頂いています。食べ終えたらすぐに参ります」


「ゆっくり食えよ、喉に詰まって死なれては困る」


「かしこまりました」


 牛車の揺れは心地よく、温かな木漏れ日に心地よい風。

 そのまま眠ってしまいそうになる。


「のどかだなぁ……」


 赤目に追い込まれている各世界の獣人達、それでも『果て』の側には赤目が来づらいことを利用して細々と生きていた。

 自然を破壊するようなことは赤目はしないので、隠れながら自然の恵みを受けて生きていた。

 少し力関係に差がありすぎるけど、共生できていた。

 もちろん出逢ってしまったら赤目達は執拗に獣人を追い続ける。


「丑人の時は……動物や人間を……ここでもそういったことが行われているんだろうか……」


「メリウス様、お待たせしました。交代します」


「おお、すまないカイン。それじゃぁ頼む」


 少し嫌な考えが頭をよぎりそうになったが、カインと美味な弁当のお陰で前向きになれた。

 メリウスは周りの人々の支えをいつも感じていた。

 もちろんプリテ、、シャロンは大事だが、今回のようにフー大老との出会いなど、村々の人々など沢山の人とのつながりを感じていた。


「フー大老、以前はお一人で赤目から村を守っていたんですよね?」


「守っていたというか、最低限の食料などを獲るために護衛などをな……

 儂と同じくらいや、若い戦える奴らは、なまじ戦えるせいで命を落とすものも多かった……

 お主たちが来ていなかったら、あの村は静かに幕を閉じておっただろう。

 本当に感謝する」


「こちらこそフー大老に出会っていなければ実力不足で世界を救うなどという大言を抱えて死んでいたでしょう。今後ともご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします」


「そうじゃの、まだまだひよっこから抜け出した程度の皆を見捨てるのも忍び難い、ビシバシ鍛えていくぞ! 実践でしか学べないことも多い。此度の戦、油断することなく修行と思ってしっかりと戦うのじゃ! ファッファッファ!」


 既に道は左右の森を切り開かれ街道と呼んでも差し支えがない形に整備されていた。

 細い道を森林に囲まれていると赤目などの急な襲撃の危険が高くなる。

 それに、豊富な森林資源の採取と合わせて積極的に整備されていった。


 そういった地道な開発のお陰で、メリウス達一行は幾度かの偶発的な戦闘はあったが、問題なく第一中継地点にたどり着いた。

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