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第三十七話 上位種

今日は3本 2/3

 プリテとシャロンが放った矢が音もなく空気を斬り裂いて敵パーティの一番でかい赤目を貫く。


 はずだった。


 ガキン!!


 金属と金属が激しくぶつかり合い火花が散って二本の矢がへし折られ地面に落ちる。

 

【グラガァ!!】


 リーダーと思わしき赤目の一声で全員がすぐに迎撃体勢を取る。


「チッ……訓練されてるな……行くぞ!」


 メリウス、カイン、ホルス、そして弓を置いてシャロンが敵へと襲いかかる。

 プリテは狙いを周囲の6体へと切り替えて制圧射撃を開始する。

 正面からだと、意識されていれば、プリテの弓であっても致命の一撃にはならない。

 それでも矢に意識が行けば隙も出来る。


「俺はでかいのを相手にする、アイツは自由にできない。

 3人で数を減らしてくれ!」


 カインとホルスがハイゴブリンの前に立つホブゴブリンに襲いかかりメリウスの経路を作る。

 その僅かな隙間を駆け抜けてハイゴブリンに一気に接近する。

 刀のもう一つの有効な使い方、突きによる連続攻撃、ハイゴブリンの武器は異形の棒、だが刀を払うとギャリギャリと金属音と火花が散る。何らかの金属によって作られた棍棒のような物だと判断できる。

 敵ながら見事なさばきで皮一枚を斬らせるだけでメリウスの突きを捌き切る。


「チィ! 想像よりもやるな!」


 状況を確認すると他の3人は互角以上には戦えている。


【ガアアッ!!】


 凄まじい速度で棒を振るってくる。

 メリウスは正面から受けずに刀で見事に流し受ける。

 重く早い攻撃にくわえ、いなすように力を受け流してもハイゴブリンの体幹に大きな隙きができない。


「これが上位種か!」


 メリウスの血肉に流れる過去の記憶が沸き立ったかのように身体が熱を帯びる。

 一部の人語を理解するような上位種との戦いは初期の頃のメリウスにとって非常に刺激的だった。

 名高い武術の達人達との打ち合いでも得られない、命の取り合いを前提とした戦闘。

 その興奮が彼の中で火を放つ。


 メリウスの中で戦闘の記憶と実働させる身体の回路がガッチリと結びついたような感じだ。

 今まで剣と似た形をした刀を剣の技術で振るっていた物が、様々な武器で戦っていた身体の記憶、経験から刀という武器の本来の使い方に沿った身体の動かし方を導き出した。


「す、すごい……」


 すでにゴブリンとホブゴブリンを倒した他の4人はメリウスとハイゴブリンの戦いに見とれていた。

 両者の力の均衡は、既に完全にメリウスに偏っていた。

 ハイゴブリンの振るう棍棒はメリウスに届くこともなく空を切る。

 始めの頃は火花を散らし激しい鍔迫り合いの音が響いていたが、今では空を切る風の音だけが虚しく繰り返されるようになっている。


 メリウスは旋風のようにハイゴブリンの前後左右激しく行き来をしながら確実に敵の肉体を傷つけていく。

 まるで何人ものメリウスが、四方八方より一斉に斬りかかっているかのようにさえ視えてしまう。

 動作に緩急をつけて激しく出入りを駆使し、リズムを変化させ、敵に対応を許さない。

 今までメリウスと訓練を重ねてきたカインやプリテたちでも見たことがない、実践でのメリウスの刀を用いた本当の戦闘方法が開眼する。

 一方的に傷つけられたハイゴブリンは焦り、不用意な大振りに頼るようになっていく。


【ガァ!!】


「そこだぁ!!」


 髪に掠らせるほどに振り下ろされた攻撃を完璧に見切り、体ごと刀を鋭く螺旋を描きながら突き出す。

 ハイゴブリンの肉体の真ん中に深々と突き刺さる刀は回転をしながら巨大な穴を作り出していく。

 大量の鮮血が花のように空中に吹き出し、ハイゴブリンの肉体はゆっくりと倒れていく。

 既にメリウス身体はハイゴブリンの背後に立っている。


「……ふぅ……」


 刀に付いた僅かな血を払い、鞘へと納める。

 その姿に呼吸をするのを忘れて4人共魅入ってしまっていた。


「……すごい……」


「美しかった」


「綺麗……」


「メリウス様……素敵……」


「ああ、皆……なんだか身体が自分のものじゃないみたいに動いたな……」


「お見事でしたメリウス様!」


「……しかし、アイツがたくさんいるとなると、苦戦しそうだな」


「大丈夫メリウス。今のメリウスの力は私たちにも広がった。

 次は苦戦しない」


「た、確かに力が溢れるような気がする」


 ホルスは自身の体に流れ込む大いなる力を感じていた。


「メリウス様の光り輝く紅玉から力強い波動を感じます」


 気がつけばメリウスの額の宝石が温かく光っていた。

 メリウスの体に馴染んだ勇者の力が、縁を結んだ、もしくは結ぼうとしている種族に強い力を与えていた。

 近くにいた4人はその力を色濃く受け取っていた。

 

「メリウス様、逆にあれ程の個体がこれ以上増えられてはノタ村にとって脅威となります。

 村までの距離はあるとして、赤目どもが来ることとこの先の洞窟の関係を確かめる必要はあると思います」


「そうだな、カインの言うとおりだ。

 ただ、全員しっかりと気を付けてくれ」


「はい」


 荷車から最低限の道具をまとめて安全な場所へと隠しておく。

 先程のハイゴブリンが多数いる場合しっかりとした隠密行動を取っていないと危険と判断した。


「メリウス、魔石、大きいよ」


 ハイゴブリンの魔石は今までの赤目に比べて巨大だった。

 これで高出力な魔道具の作成も可能になる。

 今はなんとしても洞窟の調査を成功させなければならない。

 メリウス達は慎重に洞窟までの道のりを進んでいく。





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