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第二十六話 魔物を産むもの

本日6話投稿 5/6

 メリウスの思考は怒りと冷徹さに支配されていた。

 考えがまとまらない。

 王への怒り、魔物への怒りが混じり合っている。

 建物の正面から外をうかがうと、商品を乗せた馬車とその護衛が数名、魔物が数体と言ったところだ。

 

 友の言葉は真実だった。

 虚をつく様々な仕組みよりも、ただただ強い剣。

 それが最も魔を、悪を斬る。

 気配を消し、その鋭く斬れすぎる剣で護衛を静かに始末する。

 誰に気が付かれることもなく魔物も処理する。

 周りから見えない馬車の影に隠し、馬車の内部を調べる。

 暗く、嫌な匂いのする馬車の中に光を翳す。


「……外道……外道外道外道外道外道外道っ……!」


 そこには裸にされ、正規を失った目で並べられた人間しょうひんがあった。

 王国で絶対的な禁忌と言われている麻薬を使用したとひと目で分かる。

 赤子から……青年、年頃の女性まで……

 国の未来を担う若い人間しょうひんが積まれている。

 この薬を使われたら、決して元の人間には戻らない。

 どんなことであろうが従う、人形へと変わってしまう。

 奥歯が砕けそうなほど、メリウスはその怒りと無念さと非道さに心のなかでもがき続けていた。


 そして、皆を解放してあげた。


 それからは、街の中を生きるものを求めて隠れ歩く。

 動いている物を見つければ、斬る。

 魔物がいれば、殺す。

 全ての物を、斬った。

 気がつけば、その街の魂は全てメリウスによって刈り取られていた。


「……島にも、商品はいるんだな、救ってあげないと。

 みんな救ってあげないと、こんな世界から、俺は、みんなを救ってあげるんだ……」


 フラフラとした足取りでメリウスは魔王島へと繋がる門を抜けていく。

 王と魔物は契約を結んでいたのだ。

 争いはここまでにしよう。

 人間からは人間しょうひんを、魔物からは魔石を、そうして共存することを選んだのだ。

 その証拠に、最後の防衛すべき島への道にもろくな防備もない。

 もしメリウスが攻め込んでいれば、容易に敵の本拠地に到達し、魔物を根絶やしにするだろう。


 それでは王が困るのだ。

 莫大な利益を産む魔物たちを滅ぼされたら困るのだ。

 魔物から得られる魔石は、人々を豊かにするが、何よりも王やその側の貴族の立場を頑強に、豊かにしていく。

 そして、この取引の最大の鍵が、メリウスだ。

 メリウスという魔物を断てる剣があるから、取引が成り立つ。

 人間を守りたい、救いたいと誰よりも願った最強の剣メリウスが、人間による人間しょうひん殺しを守っていたのだ。


「はは、ははははははははは……」


 メリウスは自分の体を隠すマントを剥ぎ取り捨て去る。

 そして島へ向かい走り出す。

 

「救う、救う、救う、救う、救う、すくう、スクウ、スクウ、コロス、コロス、コロス、殺す!」


 最後には雄叫びに変わっていた。

 さすがの魔物もその雄叫びに気がつく、不可侵だった半島から人が駆けてくる。

 島の入り口の門であくびをしていた魔物も、目をこすりながら警鐘を鳴らす。


『敵襲!! 敵だ! 人間が攻めてきたぞ!!』


 何を考えているのか門を開け放っている。緩みに緩んでいる。

 安定した人間えさを供給され、魔物も家畜と成り果てていた。

 それでも魔物は人を襲うもの、外敵であるメリウスにすぐに襲いかかる。


「魔物も救ってあげよう、それがいい、人間も魔物も変わらぬ、いや、まだ魔物の方が清々しい」


 剣はメリウスの意思を見事に結ぶ。

 斬りつけた魔物は斬られた痛みを感じることもなくころされるわれる。

 メリウスは先程起こったことを忘れたいかのように、斬って斬って斬って斬った。

 今までの生活も斬り続けていたが、そのすべてを足しても足らぬほど斬りに斬った。


 気がつけば、魔物の最後の城の前まで至っていた。

 門は硬く閉じられ、空からは雨のように矢が降り注いでいる。

 メリウスは小雨の中、傘もささずに歩くように矢の雨を歩む。

 一矢もメリウスをかすることもない。

 当たり前のように扉に近づいて、豆腐でも斬るように門を斬る。

 重厚な門が大きな音をたてて倒れ、メリウスはその歩みを変えることなく最後の場へと降り立っていく。


 魔物の城は分厚い石を膨大な量合わせた無骨な作りになっていた。

 所々の細かな細工や扉、窓の作りなどからそういったことが得意な魔物もいるということが窺い知れる。

 襲い掛かってくる魔物はいつも目を真っ赤に光らせて自我さえ無いように狂ったように襲い掛かってくるが、あの商売をしていた魔物は目も光らず知性さえ感じた。

 しかし、あんなまやかしの関係は、メリウスの刀の上を歩いているような狂鬼の沙汰。

 一瞬で人間達は再び自分たちが獲物になることを、忘れていたのかもしれない。


「人間も全て救わないといけないなぁ……」


 メリウスの目は禍々しい光を浮かべ始めていた。


 城の内部は入り組んでいて思うように進めなかった。

 上に行くべきなのか、下に行くべきなのか、それすらもわからない。

 山の内部に作られた城らしく土壁も多く、似たような風景が続いていく。


「まぁ、いい。全て救うんだ」


 また一つ魔物をきるう。

 戸がある。

 だいぶ下った場所だ。

 そして戸の先からはひどい臭がする。

 いつものメリウスなら心が警鐘を鳴らしたはずだ。

 しかし、メリウスはもう、まともではなくなっていた。

 何の躊躇もなく戸を開いてしまう。


 部屋の中に並ぶのは人間。

 全て女だ。

 腹が大きい者もいる。

 台に縛られ、うつろな目で滴り落ちる梅雨をすすっている。

 

「はは、ははははは、こんな、こんなことが、こんなことがあってたまるか!!

 馬鹿な、馬鹿な!! ここまで! ここまでひどいことがあるかぁぁぁぁぁ!!!!」


 女たちは、魔物を産まされていた。


 メリウスの最後の何かが壊れた音がした。


 メリウスの顔から、全ての表情が剥がれ落ち、彼はそこにいた全ての魂を救った。


次は22時


既視感あるなぁと思ったのですが、これ幽遊白書の仙水っぽいんですね。

やはり強烈な印象を受けると影響を受けてしまいますね。

不快に思われた方すみません……

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