第二十話 村造り
村作りは順調に進んでいる。
冬の寒さにも負けずに汗水たらして作業に没頭している。
結局荷車も大型のものをもう一つ作成してさらに作業の効率を上げていく。
村人の協力を得られるようになれば、道具はどんどん必要となっていく、村人たちと共同で村を作り上げていく、その過程を想像しながらメリウスはニヤニヤと笑いながら作業をしている。
「生き生きしてるねメリウス様」
「メリウスはねー人のためになることが好きなんだよーおにーちゃん」
「そうだね、素晴らしい方だ」
「じぶんで楽しんでるだけなんだけどねー」
「それでも、あの方らしいよ」
「おーい! 二人共ーちょっと持っててくれー!」
「「はーい」」
冬の寒さが本格化していく中、そんなことお構いなしに湯気を立てて建築作業に励む3人。
ハラハラと小雪が落ちる息も白くなるそんなある日、とうとう村の象徴となる館が完成する。
初の完全木造2階建てだ。
一階には会議室、応接室、執務室、客室、食堂、中庭的な場所に炊事場、水場を作った。
二階は比較的細かくへやわけをして、いろいろな用途に活用してもらうつもりだ。
「……ふっふっふ。これを見て驚く皆の顔が楽しみだ」
「正直村人全員がこの建物で生活できますね」
「でっかーい」
村の中央の大きな岩、食料貯蔵庫の正面、そこが村の中心となっていく。
正面の門からまっすぐに道を伸ばし、食料貯蔵庫を囲うように円形に道を繋いでその正面にその巨大な館が佇んでいる。
道の両端には石で作られた篝火をたく灯籠が置かれ、夜であろうと足元を照らすのに困ることはない。
大量の木材によって室内でも火を使うことに成功しており、現在のテントの外の焚き火の光で生活している状態から考えれば革新的な生活に変化することになる。
「まだまだ先は長いが、ひとまず村の人達を一度招待しよう」
今のところ新村の周囲で動物による襲撃はない。
遠巻きに様子を伺っていた動物は、カインいわくいたらしいが、異形の外壁を見て皆警戒して離れていくようだ。
屋敷で休んだ翌日、3人は小型荷車と大型荷車を引いて村へと戻る。
最近は新村の方に寝泊まりの道具を置いて帰らずの作業だったので、数日ぶりの帰還だ。
「おお、おお、皆様! ご無事でしたか! いや、炊事の煙は見えてましたのでご無事とは思っていましたが……」
村長コルネスが3人の到着を聞いて嬉しそうに駆けつけてくれた。
冬場になると水場の管理をしないと村への水の供給が止まってしまうそうで、定期的に見回りなどをしているそうだ。
「まだまだではありますが、獣から村を守る外壁、食料を貯蔵する蔵、それに村の中心となる館が出来ました。館は中で寝泊まりも可能ですので、一度見てもらおうかと思いまして」
メリウスの説明に歓声が上がる。
3人の帰宅の報が村へと伝わると村人が総出で集まってくる。
「ようやくこれで皆様のお手伝いが出来ます!」
「これからはバリバリ働かせていただきます!」
村の人々もメリウスたちから与えられた木材や、石の道具を使っていろいろな物の作成を練習している。すでに椅子やテーブル、食器などの日用品で村人たちは腕を磨いていた。
「まずは一度完成した物を見てもらって、今後どうするか決めましょう」
カインの提案で村の男衆の半分と、子のいない女性が村を見に行く事になる。
コツコツとプリテが作ってきた村までの山道は、以前の踏み固められただけの獣道と比べるとしっかりと木材で裏打ちされ、それだけでも村人を驚かせた。
「い、いつの間に……こんな雪の中……」
「別に大したことないよー、板でぶわーって雪とばして、エイって打ち込むだけだもん」
荷車の車輪部分は平らな場所を進み、人々は軽く階段状になっている板の部分を歩ける。
プリテはなんとなく間隔でそういう作り方をしていた。天才肌である。
新しい村が見えてくると、ついてきた村人は言葉を失う。
カインが軽々と門を乗り越えて、中から門が開かれ村の内景が顕になると、ポカーンと口をあけてあわあわと外壁の内部をウロウロするしかなかった。
「……みんな喜んでないのかなー?」
「逆だよプリテ、すごすぎて混乱してるんだよ」
「……(ニヤリ)」
メリウスはそんな皆の様子をニヤニヤと満足そうに見つめている。
腕を組んで立つ姿は日々の大工仕事によってさらに逞しくなっている。
プリテは筋肉量が外見的に増えてはいないが、女性的な部分はしっかりと残して引き締まったせいで、だいぶグラマラスな印象を受ける。彼女を少女と形容する人はいないだろう。
カインも全身の筋肉の付き方が一回り大きくなって精悍な青年に成長している。
二人共成長期からかぐんぐんと成長している。
「め、メリウス様! こ、これを、この期間で、あれを、作ったのですか!?」
村長はあまりの興奮で言葉をつまらせながら話しかけてくる。
「ええ、頑張りました!」
「すごい御方とは思っていましたが……メリウス様……貴方はこの村の救世主です……」
いきなり村長が膝をついて礼を尽くしてくる。
「や、止めてください。好きでやっただけなので!」
「いえ、私は自分の無力さを痛感しました。
長年あの地で村人を飢えと寒さから守ることも出来ずに臆病にも引きこもっていた自分が恥ずかしい……」
気がつけば村長はポタポタと涙を流している。
「コルネス殿……顔をお上げください。
今まで貴方が村人を支え続けたから、我らは出会えたのです。
私は人々が笑顔になることが何よりも嬉しいのです。
皆さんの生活のお手伝いをすることが、自分自身を救っている気がするのです。
どうかそのようにご自身を卑下なさいますな……」
「おお……メリウス様……」
周囲には村人たちが集まっていた。
皆無言で村長と抱き合ってこの村を喜んでくれた。
その姿をみて、一番救われていたのはメリウスだった……
メリウスの瞳から一筋の涙が流れたことを知っているのは、カインとプリテだけであった。




