カプセル
とうとう、完成しました。これさえあればどんな国でも破壊可能です。」
ある国の暴君は科学者から連絡を受けた。それはカプセル型の薬のようだった。
「なんだこれは。薬ではないか?」
「そう、一見すると薬です。しかし、本当は爆弾なんですよ。」
「なんだって…」
「爆弾なんです。これを飲めばいつでも起爆させることができるんですよ。」
この国には王様を慕う人が沢山いますから、どんな国民にでもこれを搭載できます。と科学者は言った。
「素晴らしいではないか。」
国王は言って、その薬の量産を促した。そして、様々な国民にそれを飲ませた。子供、犬。労働者。それは素晴らしい効果をもたらした。それらの人々を海外に飛ばし、ある時を境に爆殺させる。暴君がムカついた時、突然適当な人間を選んで爆発させるのだ。他の国の首相は暴君に抗議をしたが、
「私は関わっていませんよ。そう思うなら証拠をお出しなさい。」
そう言って取り合わなかった。
ある日、国王の元に一人の青年がやってきた。それはヤンという名前で、先代の国王の代から宮廷に仕える男である。その青年は王と謁見するなり、
「王様、いい爆弾を持っているらしいですね。それを僕にもくれませんか。」
「何?何に使うんだ。」
「貴方に反感を持つ国民の粛清のために使うんですよ。」
青年は言った。
「国王たちで王様に反感を持っているのがいましてね。そういうのの近くに抑止力が必要だと思いませんか?僕は抑止力になりたいんです。」
暴君は考えた。確かに、最近国の視察に行くと歓迎している国民ばかりではない。中には王に反感を持っているのもいるとは薄々気が付いていた。
「よかろう。」
王は言うと青年は王の目の前で薬を飲み、
「これで安心だ。」
と不敵に笑った。
ところがそれから程なくして、
「クーデターです!クーデターが起こりました!」
声に王は仰天した。なるほど、窓の外を見ると大勢の国民が押し寄せている。王はパニックになったが、すぐに笑い出した。
「そうだ、わしにはこれがあった。」
そして、起爆装置を次々に押した。国民たちはあっという間に始末されてしまう。
その時、
「いやあ、お見事です。これで王様の反乱分子はいなくなりますね。」
パチパチと拍手をしながらヤンが現れた。
「いやあ、本当にそうだ。これで私の反乱分子はすぐに始末できる。」
「ええ、その通り素晴らしい。ところで王様。なぜ私がここにきたかわかります?」
ヤンは尋ねる。王は確かに疑問に思った。そういえばそうだ。なぜヤンはここにいるのだろう。
「ところでねえ、王様。貴方大事なこと忘れてますよ。あのね、王様の側近で起爆装置を持っててかつそれを爆発させられる人は誰かってことに。」
王は凍りついた。そして目の前の青年に目を向けた。青年は続ける。
「そんなのたった一人しかいない。そうなんです。僕の体の中の起爆装置はまだ残ってるんです。」
「まさか…」
「少なくとも、怪我くらいはしますよね。」
彼はにこりと笑うと止める間も無くボタンを押した