3話~開拓と更生
ウワーーー!
身体の自由が段々と、解かれていき、眩い、光のゲートが目の前に、大きな穴の様になって現れたと同時に、川に落ちた。
どばしゃーん!!
(ぶはッ!ゲホゴホ…つ…冷めてー!)
いきなりの出来事で、ヒカルは状況が飲み込めずにいたが、咄嗟に、人間の本能からか、目の前に岸辺が見えたので、岸辺までひたすら泳ぎ、岩場までたどり着いた。
何だよ!いったい!
そうこう考えが纏まらないまま、ヒカルは寒さに震え出し、全身の服を脱ぐと同時に、また頭の中に声が響いてきた。
「も~!私の話を最後まで聞かずに装着しちゃうんだから~!」
「これはね~行き場所をインプットする必要があったのよ…インプットしないままで装着しちゃったからいつもと違う場所に落ちちゃったって訳…まあ、まだ、川だったから良かったけど、これが、火山や魔獣の群れに落ちてたらヒカル、あなたを更生する前に死んでたわよ~運は良いみたいね…アハハッ」
(何なんだよ!火山?魔獣?更生?いきなりのこの状況、どう理解しろっていうんだよ!俺も、最後まで聞かずに装着して悪いと思ってるけどさ…こんなゲームあるかよ!もう、帰るから、家に帰してよ)
すると、セシリアの声がまた頭の中に響いてきた。
「それは無理ね。このVRKを着けた時点で、ヒカル、あなたの更生プログラムが起動しててあなたが本当に、真っ当に更生しないと解除されない仕組みになってるの。それとこれは、VRといっても、ただのゲームではなくてね~、お腹も空くし、怪我をすれば痛みも出るし血も出るわ。そして、本当に、命を落とす事もあるのよ!だから、ヒカル、あなたが川に落ちた時に冷たいって思ったでしょ?それはこのVRKがあなたの脳から読み取って管理してて、脳に伝達しているからなの!だから、さっきも言ったけど、現実の世界のあなたと異世界の世界のあなたは繋がっているって事だから、こちらで命を落としたら現実の世界でも死ぬって事だから気を付けてね…
VRといってもどちらの世界でも本当にあなたは生きてるってことだから~…
まあ、簡単に言うと、あなたみたいな人は、所謂、一般の社会では、不適合扱いになってるの。それをこのVRK(バーチャル更生)で更生させて真っ当な人間にさせるのが私達の役目ってわけ!理解出来たらまず…」
(おい!ちょっと待ってくれよ…!)
(俺は、不適合扱いになってるって事かよ?
俺は、普通に生活もしてたし、家族ともコミニケーションだってとれて、友達だっているし、そこらは普通の人と変わりないだろ!唯一、まあ、仕事をしてないだけで……
俺にだって、やりたい仕事だってあるし、夢もある!
なのに更生っておかしいだろ?
ましてや、こんな異世界でどう更生しろって言うんだよ!)
ヒカルがまだ、言葉を発しようとしたら、セシリアの声が脳に入ってきた!
「私はさ~!実際にあんたが死のうが生きようが関係ないしどっちだって良いと思ってるのよ~!
あんたみたいな人間は私が言った所で、今の現実を受け入れず、変わる気持ちもないだろし、変われてるならとっくに変われて仕事して恋愛や結婚、そして、真っ当に普通に暮らしてると思うからね~!その事を受け入れずに、
自分は普通の生活力がある!
まだ本気を出していない!
とか思ってんならそれでいいんじゃない?自分の事が一番分かってるのも自分だしね~!
私が、無理に言ってもどうせ変わる気持ちもないんでしょ?そういう人が変わるには人一倍の努力も必要だし…
私もこの仕事してて色んな人を見てきたけどヒカルの様な人が今の現実を受け入れて頑張ろうって気持ちがあるんだったらとっくに変われてると思うし、ましてや生半可な気持ちで続けても先は見えてるだろうし~!
だから、このVRKが最後のその人の砦で、最後の更生のチャンスと思ってくれててかまわないわ~!
クロエにも無理だったって私が伝えておくわ。
あの子には、荷が重そうだし、今回のヒカルの件が初任命なのよ~!あの子…ハア~…
サポート役だけど本当はこんな事、言っちゃ駄目だけど、ヒカル様を更生させてみせるって張り切って自分なりに考えてたみたいよ。
あ!そうそう!それから、さっき無理って言ったけど、本当はこれも言っちゃ駄目だけど矯正終了ってのがあるにはあるけど…ちょっと脳に…」
セシリアさん…少し考えさせてもらっていいですか?
ヒカルは、ポツリと…弱い声で言葉を発した
「ええ!いいわよ…」