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第九話 戦い後の様子

ロトは目を覚ますと、見慣れぬ場所にいた。

慌てて体を起こして辺りを見ると、周りは布で覆われた空間だった。困惑して辺りを探ると、出入り口を発見したので、慎重に外に出る。


すると、周りは辺り一面が草原であった。だが、自分がいるところの周りには同じような布の建物があり、獣人たちが動き回っていた。


ロトは、何が何だかわからず、その場に立ち尽くしていた。

自分が記憶しているのは、“人”の侵攻を受け、戦っている最中で、ティグルが剣に刺されていたところまでだった。

だから、なぜ自分が見知らぬ場所で知り合いの獣人たちだけがいるのかがわからなかった。

自分たちが勝っているのか、負けているのか、どちらなのかさえわからないのだから。


ロトが一人困惑している中、一人の獣人がロトに気が付いた。


「おお!ロトが目を覚ましたぞ!」


その獣人が声を上げると、向こうから土埃を立てながら誰かがやって来るのが見えた。


その人物は、ロトの父親のグレイ=フェレスである。


「ロトー!ようやく目を覚ましたか。心配したんだぞ」

そう言ってロトに抱きつくグレイ。ロトはされるがままである。


「さあ、アリアにもその元気な顔を見せてやれ。あいつも相当心配していたからな。じきにこっちに来るから」


「ええと、父さん。苦しいです」とロトは言いながら、グレイの抱擁から逃れようとする。


だが、グレイはさらに強く抱きしめて、涙声で言う。

「馬鹿野郎!これは俺のことを心配させた罰だよ!」


「あらあら、ロトが死んじゃいますよ。その辺にしてあげてください」

丁度、その場にやって来たアリアがグレイを諫める。


「悪い悪い、お前が目覚めたのが嬉しくてな」


グレイはアリアの言う通りに抱擁を弱める。


「母さんも父さんも無事だったんだね。でも、・・・。ううん、それより、一体何があったの?みんなは無事なの?それにここはどこ?どうしてこんなところにいるの?」


聞きたいことが頭の中にあふれてくる。それなのに何から聞くべきなのかわからず、次々と尋ねる。


そんなロトを様子を見て、グレイたちは、ロトを落ち着かせるように言う。


「“人”たちには勝ったよ。理由はわからないんだけど、突然、敵が倒れ、次に、空から雪のようなものが降ってきて、俺たちを助けてくれたんだ。だから、・・・ティグルやスインガも無事だよ。それに村のみんなも助かっているんだ。だがね、最初に魔法によって焼かれた家々は全焼してしまい、もうそこに住むことはできなくなったんだ。それにね、あそこは俺たち獣人がいた場所だから、今回“人”を退けたとしても、再び“人”が俺たちを害しようとやって来る。だから、俺たちの無事を確認しあったら、隠し置いていた引っ越し用の荷物を持って、ここに逃げて来たんだ。だから、ここは安全な場所だぞ」


「そうよ、グレイの言う通り、私たちは生き延びることができたの。まあ、今はちょっと暮らしが不自由だけど、新たな協力者もできて、再び村を作れば、きっともっと暮らしやすい村になるわ。だから、安心して泣いていいのよ。怖かったのでしょう」


アリアはグレイの話を聞いて泣きそうな顔になっているロトを見て、おいでおいでと手招きをしながら言う。


ロトはそう言われると、そのままアリアに抱き着いて大泣きした。死んだと思っていたティグルが生きていたり、ボロボロになっていた獣人たちも元気になっていたりすると、聞き安堵と嬉しさが込み上げてきて、涙を流すのを止めれなくなっていた。


ロトはひとしきり泣くと、再度確認をした。


「ほんとに、みんな生きているの?・・・ティグルも?」


「ああ、そうだよ。だから大丈夫だ」


ロトは、グレイのその言葉を再度聞き、安心すると、次第に頭が働き始める。すると、アリアやグレイの話に幾つか疑問が生じた。


「あのさ、・・・空から雪のようなものが降って来たって、どういうこと?」

ロトはその疑問一つ一つをグレイたちに尋ねる。


グレイは予め決めていたことを言う。

「すまんな、俺たちもよくわからないんだ。突然、何かが降って来たと思えば、傷が治り、さらに死んでいたやつらが生き返った、ていうのが分かったぐらいなんだ。誰の仕業なのか、はたまた、あれが魔法なのかわからない。本当に不思議なことだったんだ」


「そうね、私も起きたら自分の傷が治り、ティグルが生きていることに気づいただけだったから。後から、それをなしたのが空から降って来た雪のようなものであった、ということを聞いただけだから」

アリアは申し訳なさそうに言う。


「じゃあさ、新しい協力者って誰?」


「ああ、それはお前も知っていると思うんだけどな」


「?」

ロトはグレイにそんなことを言われても誰かはわからない。


「ほら、あいつらだよ」とグレイが言い、指さした方向には、獣のような生き物たちがいた。


「?僕知らないよ」

ロトはその生き物たちを見るも全く見覚えがないと言う。


「ほら、お前を見つけたときに一緒にいた・・・」


「!ああ、僕を助けてくれた魔物さんたちのこと?」


「ああ、そうだ。・・・もしかして、・・・・こいつらと会ったことはあるのか?」

グレイはロトの受け答えに違和感を感じて新たに尋ねる。


「うん?僕は会ったことないはずだけど?・・・僕、自分が倒れたことは覚えているんだけど、そのあたりのこと、あんまり覚えていないんだ」

ロトは申し訳なさそうに言う。


「そうか。なら仕方ないな。・・・だが、お前を助けてくれた恩人でもあるからちゃんと感謝の気持ちを伝えておくんだぞ」


「うん、わかった」

ロトはそう言うと彼らのもとに行き、何か話し出した。すると、彼らも相槌をするようにワン、といった鳴き声をあげていた。


そんなロトたちの様子を見て、グレイは“人”たちを退けた後のことを思い出していた。




「おい、みんな、無事か?」

グレイはみんながいるという広場に到着するや否や、そう尋ねた。


「おう!俺たちは無事だ、だが、まだ何人か安否がわからないんだ」と一人の獣人が言う。


「そうか、俺がいたところには、アリアとロトとティグルと、あとは・・・・」と一人一人の名前を伝える。


「そうだ、それと、どこかにスインガが監禁されているそうだ。敵が言っていた。今回の犯人に仕立て上げるつもりでまだ生かしていると。だから、急いで見つけなければ」


「何!?わかった。あれのおかげで回復したやつも多いから、そいつらで探させよう。グレイたちは暫く休んでいてくれ」


「そういうわけにはいかない。俺も手伝うよ。ティグルと約束しているしな。あと、それと、どこか寝かせられる場所ってないか?・・・実はな、まだロトが目を覚まさないんだ。敵の魔法使いに催眠の魔法を使われたみたいでな」


「それなら、あっちの方にまだ体調がすぐれていない者たちが休めるスペースがある。そこで寝かせてやってくれ」


そう言いながら、指差す方を見ると、確かにわらが敷かれた場所があり、そこに何人かの獣人たちがいた。


「すまんな、ありがとう」

グレイは教えてくれた獣人にそれだけ言うと、すぐにロトを連れていき、寝かせた。

その場にいた獣人たちは、目を覚まさないロトを心配そうに見る。


「ロトは大丈夫だ。ちょっと魔法が効きすぎたようなんだ」とグレイは伝えると、みんなは少し安心したような顔をした。



そして、村のあちこちを調べると、あまり使われない食料保管倉庫の床にドアのようなものが作られているのを発見した。

少し開けてみるが中は真っ暗で何も見えない。そのため、力に自信のある少数の獣人たちだけでその中に入っていく。

最初はただ階段が続いているだけだったがしばらく進むと、明かりが見えてきた。

そこで、獣人たちはみんなで顔を合わせ、そのまま進む決断をする。

武器を構え進むと、そこには倒れた“人”たちと拘束された獣人、スインガがいた。


スインガはやって来た者たちが村の獣人たちだとわかると、泣きそうになりながらも嬉しそうに再開を喜んだ。

なんでも、イグレアから村の獣人たちは皆殺しにする作戦を聞き、もう会えないのでは?と思っていたそうだ。

獣人たちは魔法の攻撃には弱い。それを知っているからこそ、イグレアの言った魔法に対抗手段がないと思っていたのであろう。

だが、その日、すごい音がしだし、なんとかここから逃れようとするが、できないでいると、突如、何かが降ってくると、ここを見張っていた“人”たちが倒れ、逆に自分の傷は回復したそうだ。



そして、スインガを助け出されると、村のみんな喜んだ。他にも、戦いの間、どこかに隠れていたらしい獣人たちも現れ始め、みんなの無事を確かめることができた。

そうして、喜んでいると、森の方から、なんと魔物たちが現れたのだ。その数、5匹。しかも、先頭の魔物からは強力な力を感じる。


さっきまでの喜んでいた雰囲気から一変、突如、辺り一面に不安の感情があふれたのだった。


男の大人たち獣人はすぐに武器を持ち、臨戦態勢になる。

グレイも同じような行動をしたが、あることに気づき、すぐに別の行動を起こした。


「みんな、ちょっと待ってくれ」


なんと、グレイは魔物たちを庇うように獣人たちの方に体を向けたのだ。

これには、みんなびっくりして、固まってしまった。

だが、一人の獣人は堪らず、声を荒げる。


「何言ってんだよ、グレイ!早くあいつらを倒さないと!」


「だから、ちょっと待ってくれって言ってんだ!」

グレイも同じように、あるいはそれ以上に声を荒げて言う。


それには先ほど声を荒げた獣人もグレイの気迫に負け口を閉ざしてしまう。

それを確認したグレイは、魔物たちの方を向き、武器を持たず、そちらの方向に歩いて行く。


そして、先頭の魔物の前に来ると、話しかけた。

「もしかして、お前は、あの時ロトを助けてくれた魔物か?」


それに対し、魔物はワンっと言い、首を縦に振った。


「そうか。・・・どうしてお前は森の外までやって来たんだ?」

次にグレイがそう言うと、その魔物は、森の方を向き、首をクイッとグレイたちの方から森の方へ動かした。そして、そのまま、森の方へ歩いていく。4匹の魔物たちを連れて。


この様子を見たグレイはあることを考えつく。

「もしかして、お前たちはついて来いって言っているのか?」


そう言うと、魔物の耳がピクっと動き、立ち止まってこちらの方に振り向き、頷く。


グレイはやはりそうだったかと納得する。

そして、今度は村の獣人たちの方を見て言う。


「こいつらについていってみないか?」と。


その言葉には流石に村の獣人たちみんなが反対する。


「何言っているんだ!」

「魔物に騙されるだけよ」

「そんなことは危険すぎる!」等々。


だが、またもやグレイが一喝する。


「このままここにいてもすぐに別の“人”たちが来る。敵の大将が倒れてから、結構な時間がたっているから、敵にも自分たちが負けたということが伝わっている。だから、できる限り俺たちはバレずにどこかに逃げなければならない。・・・でも、そんなの無理だろう。山を降りたら、絶対にやつらの仲間がいる。そんな中、唯一逃げ込める場所は、あの森しかない。

あそこには結構強力な魔物が現れる場所だから、奴らは好き好んでは入ってこない。俺たちが入っていくところを見られたら、入ってくるだろうが、俺たちが入ったかどうかわからなければ、入っては来ない。そんな場所だ。

だから、そこに逃げ込むのが一番容易い。しかし、あそこには危険がたくさんある。だが、この魔物たちと行動すれば、その危険は薄まる。

なんたって、ロトを助けてくれたのはこの魔物なんだ。だから、俺は信じる。みんなに強制することはできないが、この決断が一番だと思うんだ。

俺から言いたいことは以上だ。どうするかは自分たちで決めてくれ」


最後の方はなんだか無責任なようなことを言うグレイだが、みんなのことを考えていることはわかっている。だが、やはり、今まで敵だと思っていた魔物を信じることはできない。でも、確かにここに留まることは危険だ。それは今までの経験則上わかっている。

そうやって、みんな考えている中、ティグルとスインガが前に出てきた。


「「俺たちは、グレイさんたちについていくよ」」

二人は声を揃えて言う。


そしてスインガが言う。

「だって、ロトを助けてくれたんなら、家族の恩人だろ。そんでもって、村は一つの家族だ。俺は家族のことを信じる。ただそれだけだ」


その言葉を聞いて、他の獣人たちも決断を始める。スインガたちが言ったことは確かに本当だ。家族の恩人で、家族が大丈夫だという相手、それなら信じてみてもよいのでは?と。


そうして、魔物たちについていくことになったのだ。

そうすると、早い。すぐに避難用の荷物を持ち、出発する。そして、どんどんと森の中に進んでいくと、前にロトと出会った場所についた。すると、魔物たちは歩きを止める。それにつられて止まる獣人たち。

先頭の魔物が岩の大きな隙間の近くの岩に近づき、手を乗せると大きな魔法陣が現れた。すると、魔物たちがその魔法陣の上に乗り、消えた。


そんな様子を見てびっくりする獣人たち。だが、グレイを先頭に彼らもまたその魔法陣の上に乗り消える。

全員が魔法陣の上から消えると、魔法陣はその場から消え失せた。そして、森の中は何事もなかったかのような静かさを取り戻すのだった。


あけましておめでとうございます。


話が長くなりそうだったので途中で話を区切っているので中途半端なところで終わっています。続きはできる限り早めに投稿する予定です。

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