水曜日
『―――――により、午後からは雨の降るところも――――』
プツンッ
薄っぺらい鞄を掴み玄関へ向かう。
「行ってきまーす。」
出掛けに傘を一本抜き取った。
「気をつけ、礼。」
帰り支度を始める音に混じって、女子の甲高い声がした。
「うそっ!雨ふってんじゃん!」
「マジで!うち傘持って来てないよー」
「わたしもー」
朝の天気予報で降水確率90%っつってただろ、と心の中で毒づく。
「朝の天気予報で言ってたわよ。」
俺の心を代弁するかのように、傍に立つ和風美人が言った。
「さすが江良!見たんだな。」
クラスの誰かがからかうように言った。
「ええ。傘は忘れたけれど。」
「マジか。見てきた意味無くね?」
すかさず俺のツッこみが入る。
「大丈夫、濡れて帰ればいいのよ。問題無いわ。」
「じゃあ何で普段傘さしてるの?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
江良梓はしばらく無言で俺を見ると、
「帰るわ、さよなら。」
ポニーテールをふわりと揺らして踵を返した。
「おい、無視かよ。」
眉間にしわを寄せる。
「しゃーね、傘貸してやるか。」
頭を掻きつつ後を追って教室を出た。
三回目の正直!