3話、現在の住所→五階層目
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知性の芽生えと言うのは、無機生物や機械の種族に多いらしい。主との十分な信頼関係が築けると、有り得ない心が宿り知性が芽生える様だ。つまり要約すると、アクアがもっと賢く可愛くなったって事だな。納得納得。
「さて、明日は六階層に行こうと思います!」
テーブルにアクアが乗り、俺は椅子に座る。テーブルの上には孵化間近な水魚の卵が入った金魚鉢も置き、常に状態を気にしてるよ。アクアの知性は目を見張る物があり、今は問い掛けた俺にグッジョブポーズで返答に至って居る。
因みに「ホーム」改装から6日程度過ぎてたり‥。程度なのは日にちの感覚が無いのと、時計が無いから。だから俺はノリで起きたら朝、眠くなったら夜、と結構アバウトな生活を送ってる。
話が外れたが「ホーム」移転の為、俺達は経験ptを稼ぎながら五階層目を目指す。そうしたら、何やらアイテムと羊皮紙で出来た一枚の紙が床に落ちて居た。
【六方晶】
《不純物が無く純粋な六方晶。純粋な硬度では世界一。発見自体何例も無い物凄いレアアイテム》
【「ホーム」移転権利書】
《この階層(五階層目)に限り移転費用が半額になる権利書》
確か最近発見された六方晶はダイヤモンドより硬い炭素物質、だった筈。でもこんな珍品持ってても俺には宝の持ち腐れ、指輪【収納】の肥やし決定。
まぁそれは置いて、一番大事なのはもう1つの羊皮紙の方。経験ptも微妙に足りなかったしこれを見た時、俺は広間の真ん中で人目も憚らずガッツポーズ。人なんて居ないけど。直ぐ様その羊皮紙を使い「ホーム」を移転する、と言うのが事の顛末。
「武器欲しいよなぁ、流石に」
五階層目に「ホーム」を移転した事により、四階層にも六階層にも行ける便利「ホーム」となった。不意に、アクアをつんつん突きながらポツリ小さく呟く。
流石に何か小さな力が宿って居ると言っても、あれはただの木の棒。ダークウルフに噛み砕かれなくて運が良かった、と俺は思って居る。刃物等の武器を持って居るだけでも敵を牽制出来るし、自衛の為にも何か欲しい所だ。
「【経験pt⇔交換】の項目欄に武器系は無いし、包丁とかは死んでる生き物に限定されてるから話にもならないし‥‥、はぁ」
やっぱり宝箱から入手するしか無いのか‥。俺は溜め息を吐くと寝る為にアクアを抱き上げベットへ向かう。成る様になれ。
次の日、眠りから覚めた俺は入念に身支度を整えて次の階層へと進む。相も変わらずかなり長い階段に苦笑を洩らすも、いつもと違う雰囲気に気付く。
「明るい‥?」
何と、六階層から光が射し込んで居る。それに驚いた俺は階段を掛け上がる。そして六階を見た瞬間、俺は唖然とした。そこには草原、木が生い茂る森等が広がって居たからだ。
外かと思い天井を見上げるも、空では無く見慣れた石造り。どうやらまだ迷宮ダンジョンの中らしい、そう易々とクリア出来る訳無いか‥。六階を見て回ると奥深い森に広い草原、マッピングは無理そうだな。
魔物は森にリーフレット、と言う食虫植物系の魔物。草原にはロックックと言う鶏に似たのと、サンドワームと言う蚯蚓の様な魔物が住んで居た。
【簡易ステータス】
【種族】食虫植物
【レベル】Lv7
【取得経験pt】8pt
【装備】なし
【スキル】蔦、消化良好
【簡易ステータス】
【種族】鳥
【レベル】Lv8
【取得経験pt】9pt
【装備】なし
【スキル】蹴り、羽ばたき
【ロックックの卵】
《無精卵。家庭に出回る卵の97%がこのロックックの卵。青い色が特徴》
【簡易ステータス】
【種族】蚯蚓
【レベル】Lv1〜6
【取得経験pt】2〜7pt
【装備】なし
【スキル】なし
蚯蚓か‥‥、蚯蚓だな。足元に現れたサンドワームを木の棒で潰し、うんうんと頷く。アクアはロックック相手に喧嘩を売って居て、今の所反撃を食らったりはして無い様子だ。
ロックックの青色の卵にドン引きしたりしたが、この階層の魔物は楽に倒せるので肩の荷が下りた気分。如何せん下の階とは比べ物にならない程の広さなので、宝箱の取り逃しが無い様にもう少し探索するけど。
【お知らせnew】
《水魚の卵が孵化の兆しを見せて居ます。【眷族】にしたい方は即帰還を推奨します》
「おぉ、マジか!アクアー、卵孵化しそうだから「ホーム」に帰るぞー!」
お知らせを聞いた俺は直ぐ様アクアに手メガホンで叫ぶ。それを聞いたアクアは戯れて居たロックックを軽く倒すと、俺に向かいポヨッポヨッと走り飛び込んで来る。
勿論アクアを抱き留め、そのまま俺は「ホーム」へと走った。スキル帰還は素で忘れて居たのでご容赦を。‥‥もう俺は色んな意味で駄目かも知れんね。
全速力で「ホーム」へ帰った俺は、アクアを頭に乗せながらテーブルへと向かう。水魚の卵は心無しか、微振動し始めて居る様にも見える。
「‥‥いつ生まれるんだろう」
指輪が知らせて来たし、もう少し何だろうか?でも、孵化の兆しだから意外と長い時間待たされたりするんだろうか?生き物育てた事も無いし、産んだ事も無い俺には分からないな。
そうぼやいて居ると、不意にアクアが触手を伸ばし金魚鉢へ触れた。その瞬間、水魚の卵は一際大きな振動をして卵には亀裂が入る。亀裂からは美しく、鰭と思われる物がはみ出して来て、アクアへの疑問も去る事ながら孵化への期待が高まる。
「頑張れ!」
そんな俺の声を聞いてくれたのか、完全に卵が砕け中からは物凄く綺麗な水魚が生まれて来る。地球の魚で例えるなら改良種のベタ、レースの様に鰭が広がり、身体は白いが鰭の先に行く程青くなると言うグラデーション仕様。
「‥‥綺麗だ」
流石、説明にも書いてあった通りの美しさ。こんなに綺麗だったら、偉い人は側に置きたくなるよね。優雅に金魚鉢を泳ぐ水魚を眺めて居ると、アクアがペチッと音を立てて俺の頭から降りた。
俺の目の前に陣取るとぷるぷるぷる、ぷるぷるぷる、アクアは何度も何度も震える。アクアの言いたいが良く分からず首を捻るが、水魚もこちらをジィッと見つめており漸く理解。
「ごめんアクア、有り難う。水魚の【眷族ステータス】表示」
【眷族ステータス】
【個体】なし
【種族】魚(水魚)
【レベル】Lv1
【装備】なし
【スキル】回避、敬愛、水吸収、水浮遊、水鉄砲、尾剣
【主】志津
【水魚から一言】
《未更新》
【スキル説明】
※一般的な2スキルの説明は省かせて頂きます。
敬愛=主を良く親しみ慕う様になる。忠誠度up
水浮遊=空気中の水分を利用する事により、空中浮遊が可能
水鉄砲=口の中に水を溜めて射出する。殺傷能力は低い
尾剣=魔力を込めた尻尾を振り、剣の様に鋭い斬撃を敵に飛ばす
「家族になるんだし、素敵な名前を贈りたいな。うーん」
やはりアクアの時と同じく個体名は無い様子。色的には、ブルームーンストーンみたいな感じ何だよなぁ。青月、読み方はアオツキで大丈夫かな?気に入ってくれなかったらもう一回考えるか。
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