2話、俺の眷族が優秀過ぎる件
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【お知らせnew】
《五階階層BOSSダークウルフLv12を撃破しました。BOSSが撃破された事により特定のスキル制限を解除しました。通常の獲得経験pt、130ptに加えボーナスとして500ptが付与されます。指輪のスキルLvが3になりました、新たに検索出来る情報が増えました。条件を満たした為、スキル回避を習得しました。【眷族】アクアのLvが6に上がりました。【眷族】アクアのスキル幸福がLv4になりました。【眷族】アクアのスキル向上心1がLv2になりました。【眷族】アクアがダークウルフを取り込んだ事によりスキル擬態を習得しました》
な、長かった。確かにBOSSは経験値を沢山持って居るからLvは上がり易いけど、こんな疲れて居るのに永遠と機械音声で言われると余計に疲れる気がする。ゲームの勇者達は文句も言わないもんな、偉い偉い。
半ば投げ遣りになりながら乾いた笑いを浮かべつつ、確認したい事とかあるけど凄い疲れた、後回しだ後回し。少し喋るのも億劫になりながら簡単に言葉を発する。
「‥‥帰ろっか、帰還」
【スキル発動】
《スキル帰還が発動されました。ホームに帰還します》
「‥‥‥‥もう、無理」
帰還で帰って来た俺は汗だくなのも構わず、ベッドに倒れ込み小さく呟くと泥の様に惰眠を貪った。一応アクアを潰さない様にはしてたけど、余り気遣う事は出来なかったと思う。
それから俺は何時間、悪ければ数日寝て、漸く起きる事になる。寝惚けて居る時にダラダラするのは格別、って違う。どれだけ寝たか分から無い、軽く倦怠感を纏った身体を少々起き上がらせる。
気になるのはアクア。ご飯は目の前にあるから大丈夫だとは思うけど、俺はアクアを家族だと思ってるからなー、うん。
「アクア‥‥、怒ってる?」
よっこいせ、とベッドから出て池に近寄る。アクアはきちんとそこに居て、何時も通りプカプカと水の上に浮いて居た。正し何時もは俺が近付くと直ぐに寄って来てくれるんだが、今日は俺の反対側へ行き来てくれる気配すら無い。
どうしよう。心底困った。いや、俺が悪いのは火を見るより明らかなので謝り倒すしか無いか。
「アクア、放ったらかしにして悪かった。許して欲しい」
‥‥‥。
「何でもする」
‥‥ぷるっ。
「今日はずっとイチャつこう?後、経験ptも入ったし池を大きくしよう!」
すぃー、ぴと。
ってな感じで、謝り倒しの拝み倒しで許して頂けた様だ。良かった良かった。漸く寄って来たアクアはいそいそ俺によじ登ると、昔の例えで悪いが抱っこちゃん人形の様に腕へがっちり引っ付く。
「あー、色んな事する前にまず風呂だな。一緒に入るか」
そう言えば風呂に入る前に寝たから臭いな、アクアを引っ付かせたまま風呂に入ろうと思う。防臭、抗菌、防カビ等のオプション効果は人間である俺には効かないし。自身の清潔さは自身で気を付けるしか無い。
三点ユニットの扉を開け、これも後で拡張工事しようと心に決めた。アクアの暖かいお湯初体験は最初驚いて居たが、直ぐ様慣れた様子で寛いで居る。
「‥‥ふぅ、さっぱりした」
男が風呂場実況とか途方も無く残念だし、すっぱりカット。心身共にさっぱりした俺は頭に機嫌が良さそうなアクアを引っ付かせ、ベットに腰かける。
先ずは情報の整頓からだな、と指輪を弄る。あの時は疲れ果てて放って置いたけど、結構な情報が流れて居たから。効果音がするならピコピコと【お知らせ】を押して画面を開く。
「ふんふん、やっぱあの狼は階層BOSSなのか。おぉ、ボーナスpt美味しいな‥」
後は俺とアクアのステータス確認して、経験pt確認して、スキルの内容を確認して、んで俺達にとって住みやすい環境を整えよう。あぁそう言えば、水魚の卵があるんだっけか。取り敢えず‥‥。
「俺の【簡易ステータス】確認、アクアの【眷族ステータス】確認。新しく取得したスキル内容も」
【簡易ステータス】
【個体】志津、23歳、♂
【種族】人
【経験pt】1164pt
【スキル】指輪3、打撃2、帰還、駿足、回避
【装備】量販店の服一式、宿り木の棒、指輪
【眷族】アクア
【スキル説明】
回避=相手の攻撃を避ける確率up。本人の俊敏さに依存
【眷族ステータス】
【個体】アクア
【種族】無機生物
【レベル】Lv6
【装備】なし
【スキル】耐衝撃2、耐斬撃1、耐火、耐雷、水吸収、突進、触手、幸福4、忠犬、向上心2、擬態
【主】志津
【アクアから一言】
《あるじ、アクアはむー!あるじ、むーなの!》
【スキル説明】
擬態=取り込んだ相手に擬態する能力。身体的な特徴のみでスキルを真似する事は出来ない。*ダークウルフ
「アクア、ごめんなー‥。‥‥おぉ、経験pt1000越えたのか。今使っちゃうけど」
【アクアから一言】を見て、もう一度アクアを優しく撫でる。アクアが強過ぎて忘れて居たけれど、まだ生まれたばかりなんだ。俺も頼ってばかりじゃ駄目だ、と再確認。
自身の経験ptが十分あるのを確認し、パネルを弄り【経験pt⇔交換】の画面を開く。こう言うのって見てるだけでも楽しいよな、まぁやる事あるから迅速且つ丁寧にやるけどね。
【改装内訳】
三点ユニット撤去(+2pt)
6畳程度の檜風呂場(2pt)
洗面、脱衣場(1pt)
トイレ(1pt)
30畳部屋→42畳部屋(8pt)
池を撤去(+50pt)
泉、部屋の角から放射状、四等円、広さは8畳程度(280pt)
魔力が満ちた池の水撤去(+30pt)
魔力に満ち澄んだ水(50pt)
奥に行く程深く(8pt)
緩く穏やかな波(5pt)
湿度自動調節機(2pt)
古風な金魚鉢(2pt)
1246pt−359pt=887pt
‥‥こんなもんだろうか?漏れ、もしくはやり残した部分が無いかを何度か確認して認証ボタンをポチッと押す。何回見ても摩訶不思議でしか無い瞬間製作風景を見ながら、俺は立ち上がり古風な金魚鉢を持つと泉っぽさを頑張って出した水溜まりへ歩み寄る。
水魚の孵化条件は魔力に満ち、澄んだ水に1週間程度浸す事。金魚鉢に水を満たし、指輪の【収納】からピンポン玉程の大きさをした水魚の卵を取り出す。
「うーん、やり過ぎた感が否めないけど‥‥。アクア、気に入ってくれたか?」
ポチャリ、と金魚鉢の中に水魚の卵を落とすと任務完了。新しい【眷族】基、家族が孵化するのを楽しみに待とう。靴を脱ぎ浅い場所に足を浸す。室温も湿度も管理してるから、水が丁度良い温度なんだよなぁ。
ちゃぷ、ちゃぷ、と緩く寄せて返す波の音を聴き、のんびりした気分になりつつ、頭に鎮座するアクアへ問い掛ける。すると直ぐ様ぷるぷると震えて反応を示し、ピョンッと俺の頭から飛び退き泉へダイブ。
「本当、可愛いなぁ‥」
すぃー、すぃー、と泳ぎ出したアクアに俺は小さく呟く。暫くアクアを眺めて居ると、聞き慣れた機械音声が聞こえて来る。そう言えば、ON/OFF切り替えをうっかり忘れてたな。
【お知らせnew】
《【眷族】アクアに知性が芽生えました。言葉は喋れずとも心はあります、より良好な信頼関係を築く事を推奨します》
‥‥‥‥え?
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