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15話、住めば都の異世界!



   * * * * *





最果ての地にあると言う世界樹、その大樹は淡く光輝き世界の隅々に魔力を循環させる役目を持った大いなる樹。絶対不可侵を決められた最果ての地は魔力が満ち溢れる事から、精霊が還る地ともされて居る。



「帰りましょうよぉー、妖精王妃(ティターニア)様。妖精王(オベロン)様も反省してますよ?」



大樹の根本の隙間には美しい銀糸の髪、淡い金色の瞳を涙で潤ませた月の化身とされる女性が体育座りでいじけていた。妖精王の悪戯に妖精王妃が泣かされる度、俺は捜索隊として駆り出される。


選択から3年、俺は絶滅危惧される魔物の保護を仕事に選んだ。元々アクア達のお陰で魔物は可愛い家族だと思えるし、アルメリアにもお墨付き貰ったし。そのせいで定住する事が出来無いが、色んな場所に友人が出来たので良し。


リンドブルム城から最果ての地に来るの、3ヶ月掛かるんだよな。妖精や精霊は近道があるみたいだけど、俺は生憎人間なのでそれは使えない。



「女王がやけ酒に付き合うそうですよ。さっさと妖精王様と仲直りしたいと思いません?」


こくこくっ。


「‥‥拳?まぁ良いか。そう言うと思って連れて来ました。えー、「ホーム」召喚」



直ぐ様「ホーム」の扉が召喚され、俺は扉を開く。すると飛び出す様に金色に輝いた髪を持つイケメンが出て、妖精王妃を抱き締める。月の光の様に全てを受け入れる微笑みを浮かべた妖精王妃は、ワンコの様に尻尾を振る妖精王へ渾身のアッパーを食らわす。



「暫く帰れないな、こりゃ‥」


「志津うううぅぅー‥」


《おつかれさまー、ますたー!》


「シオ!っと、アクア」



土下座しながら謝る妖精王を見ながら盛大に溜め息を吐くと、「ホーム」の扉から音を立てながら走るのが聞こえ、そちらに視線を向ければシオとアクア。成長期のシオを慌てて抱き留め、アクアを抱き上げる。


去年からシオは本当の成長期に入り、俺の腰程度だった身長は胸までに。あぁ、3姉妹も15cm程の身長が30cmになった。流石にアクアや4兄弟は成長しないが、青月もより水魚らしく美しい姿になって居る。


真白は2年前、たまたま寄る事になったエルフの里に自分だけの聖なる乙女が居たらしく、別れてしまった。幸せになれよー。


それにしても、と改めて「ホーム」内を見渡す。広大な部屋になり、家族である【眷族】が至る所に居たりする。ふむ、この職業は俺にとって天職だったに違いない。





九十九志津、生涯72歳で永眠。



迷宮ギルドに所属し、世界的に絶滅危惧される魔物の保護を仕事に選ぶ。天職だったらしく、魔物を保護し【眷族】にした数は未だに破られて居ない。人当たりが良く、暖かな笑顔を浮かべる好青年。子供に恵まれる事は無かったが、当時女王に持ち掛けられた縁談を受け入れ32歳で結婚。若干嫁の尻に敷かれながらも養子を受け入れ、ギックリ腰をやらかす61歳まで仕事をこなす。


最期の時、志津の傍らには愛した妻と子達。そして幾年にも自分を支えてくれた数多の【眷族】が寄り添って居たと言う。



忘れていけないのが彼がこの世界の住人では無い事。異世界から私に喚ばれ来た事。魔物達の為に元の世界を捨ててくれた彼を、忘れてはいけない。



【アルメリア・シフォル・リンドブルム(没98)、手記より抜粋】


*END*

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