14話、女王様はオッサン口調
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豪華な扉の中はより豪華な部屋で、さっき俺が居た場所も凄いと思ったけど段違い。表現力が乏しいし、女性の部屋なので詳しくは言えないけどお金持ちって凄い!とだけ言っておく。
「よう、異世界人。今回は俺のせいで迷惑掛けたみてぇだな、すまんすまん。色々聞きてぇ事あんだろ?まぁ座れや」
「‥‥は、はぁ」
白亜の椅子に座った女王の紅茶を飲んで居る姿は、大事に育てられた深窓の令嬢と言っても過言では無い程の美しさ。だが口を開けば儚げな印象は一掃され、ただのオッサン。
思わずピシリと固まり、気の抜けた返事をしながらロスさんが椅子を引いてくれたのでそこに座る。丁度女王とは向かい合う形だ。
「まず自己紹介からにするか。俺の名前はアルメリア・シフォル・リンドブルム。このリンドブルム城の主であり、世界ダンジョン管理会の会長でもある。何よりお前をこの世界に喚んだ張本人だ」
「俺は志津、九十九志津です。色々聞きたい事があるんですが‥」
「ははっ、有り過ぎて困るか?安心しな、時間は作ったから沢山あるぜ。オル、志津に茶でも淹れてやれ。あぁ後志津、俺に敬語は不必要だ。敬称を付けず普通に喋ってくれ、良いな?」
女王が一声掛けるとロスさん以外居なかった筈なのに、スッと別のメイドが出て来て手早く紅茶を淹れて行く。思わず驚いて俺と青月はビクッと揺れたが、直ぐちらり横目で見る。
容姿はロスさんの瓜二つ、髪の長さが違うだけ。双子なのだろう。それにしても、俺が何も言えないままどんどん決まってく。しっかりしなければ‥。
「じゃあお言葉に甘えて。アルメリア、俺をダンジョンに喚んだ理由を教えて欲しい」
「あぁ、すまん。それなんだが、本当はこの城にお前を喚ぶ筈だった。ダンジョンに喚んだのは手違いでな」
「‥‥は?」
「あー‥、この世界のダンジョンは厳重に管理され、絶滅危惧される魔物の保護もダンジョンでして居る。勿論Lvを上げる為に攻略しても良い。何て言えば良いか、運営に色々と手詰まりの状態でな。つまりその状態を打破しようと、知恵を借りる為に少し喚んだ」
な、何と言う理由!でも凄い珍しいな、世界公認でダンジョン運営してるとは。あくまで俺のゲーム知識の中だけどね。驚き過ぎて最早落ち着きながら、俺はオルさんが淹れてくれた紅茶を飲む。
ついでにロスさんがクッキーを勧めてくれた、どっちも美味い。
「えー‥と、つまり、俺は一体何をすれば?」
取り敢えずコレだな。色々と余計に聞きたい事が増えた様な気もするが、アルメリアの言葉から推測。問い掛ければ彼女はまたケラケラ笑い出し、ロスさんが諌める。
これってもしかして、もしかするとあれですか‥。青月を俺の頭から降ろし、テーブルの上へ。
「すまん、自己解決した」
「‥‥様子から見て、多分そうだろうと思ったよ」
「勝手に呼び出して、気付かず来なかった者と扱い、知った時でさえ大した事をし無かった。本当にすまないと思って居る」
「‥‥でも、そのお陰でアクア達と会えたし、生きてるし。気にしてない、って言うのは嘘になるけど‥」
アルメリアがいきなり真面目な表情を浮かべ、隣に居たオルさんとロスさんも同じく頭を下げた。大した事をし無かった、って不自然に助かった場所はアルメリアが助けてくれたから?
「それで、だ。九十九志津、お前は自分の世界に帰りたいか?俺の経験ptでギリギリ還してやれる。あぁ、因みに異世界人召喚、帰還は俺特有のスキルだ」
うつ向いて考えて居ると、トントン、指でテーブルを叩かれ直ぐに意識を戻す。勝手に喚ぶ程何があったんだろうな、帰還よりそっちに意識が向きそうだ。
ふむ、地球に帰ったら2度とこの異世界に来るのは難しそうだな。アルメリアの言い方から推測するに。でも地球での生活を擲っても、ここに居たいと思えてしまった。両親には心苦しいが親不孝者として諦めて貰おう。
「アルメリア、俺は帰らない。俺を慕ってくれてる【眷族】の皆と、ここで生きて行きたい」
「ん、成程な。だが志津、これが最後だ。暫くしたら新しいダンジョンを作るから、とんでもねぇ量の経験ptを使う。帰りてぇって言うなら今の内だかんな?」
青月が甘える様に俺の手に擦り寄るのを微笑ましく感じながら、きっぱりと告げた。アルメリアから何を言われても大丈夫だ、と言える自信がある。
すると、真面目な表情を崩し不敵な笑みを浮かべるアルメリア。可憐な容姿が台無し過ぎて最早似合って居る。ガシッとティーカップを鷲掴むと一気に煽り、オッサンの様に息を吐く。
「そうか、ならもう俺には何も言う資格はねぇ。次の話すっか!」
「次?」
「そりゃあ俺が迷惑掛けたんだ、面倒位は見させてくれや」
「あぁ、うん。そうしてくれるなら有り難いなー‥あはは」
少々、否かなりドン引きして居ると不意にアルメリアがニヤニヤ笑い出す。怪し過ぎる。が、俺には乾いた笑いしか出来無い。
「この世界ってよぉ、これがまた上手い具合にダンジョン中心の世界何だわ。腕輪、元は指輪だが、コイツが古の遺産で気に入った奴にしか嵌めさせない。まぁ、盗んで勝手に使う奴が居るんだがな。何が言いたいかって言うと、正式に選ばれた人間は世界ダンジョン管理会に入って貰いたい訳だよ」
「‥‥は、はぁ」
「ダンジョン運営、絶滅が危惧される魔物の保護、違法ダンジョンの根絶、冒険者ギルド、商人ギルド、と仕事は盛り沢山だ。志津には珍しいテイマーの気があるからなぁ‥。仕事の斡旋、面倒掛けたんだからさせてくれ」
言い終わるや否や、アルメリアは漸く儚げな容姿に似合う綺麗な笑みを浮かべた。口調はオッサンだが。後ろに仕えて居るオルさんとロスさんにまで頭を下げられ、俺は思案する。
この指輪、今は腕輪だけど、気にしてなかった部分にもっと凄い機能が?3人に断ってから腕輪を弄る。あ、ダンジョン運営の項目も追加されてらー‥おぉ、全然気付かなかった。
「す、好きなの選んでも?」
「勿論。世界ダンジョン管理会、通称迷宮ギルドは万年人員不足に悩んでる。大歓迎だ。嫌なら普通の生活を送って貰っても構わん」
「‥‥‥だったら‥、」
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