13話、投げ遣り的なエルフ
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ふむ、俺が気になったりしたのはこんな物かな。もっと細々した物もあったが、ぶっちゃけ使いこなせそうにない。だがまぁ改めて見れば便利な物ばかりが追加されて居る、不自然に。
それを含めて、女王様とやらに聞けば良いんだろうけど。俺は「ホーム」召喚の項目を躊躇無く押し、認証。経験ptの消費無しか、凄い便利だ。
すると直ぐ様畦道に現れる見慣れた扉、木製で「ホーム」と書かれたネームプレートの様な物。皆に断り立ち上がって扉を開く、見紛う事無い「ホーム」だ。
「お前が生きて居ると思わなかったからな、急拵えの転移陣は1人用。まぁその魚や妖精1匹位なら通せるだろうが‥」
「随分と物騒だなぁ」
「ははっ、気にするな。その中に【眷族】を入れて置け。この場所に置き去りは嫌かろう?」
からから笑うエルフは大口を開けて居ても綺麗、性別の判別が出来ない程に。声は中性的で身長は俺より少し低く、スレンダーな女性なら通りそうだが‥。ま、細かい事は気にしたって仕方無いか。
このダンジョンに置き去りにしたく無いので、皆を説き伏せて「ホーム」に入って貰う。城のお供は青月に、人間の王族等が飼育する場合があるって説明に書いてあったからね。1人は心許無さ過ぎ。
最後まで腰にギューッと抱き着いて居るシオを抱き上げ、「ホーム」へ入った。途端に3姉妹がシオの側に来てくれ、一緒に宥めてくれる。
「しず、しおたちすてない?」
「シオちゃん、主様がわたくし達を捨てる等有り得ませんわ」
「志津の為にも、あたし達は待って無くちゃ!」
「兄様、行ってらっしゃい‥」
「いってらっしゃーい」
《さっさと帰って来い。我が面倒だからな》
皆に見送られながら「ホーム」から出て扉を閉める。心配そうに頬擦りしてくる青月を撫でつつ、腕輪を操作して召喚解除のパネルを押す。これで腕輪の空間に「ホーム」を移動、まぁ簡単に言うと持ち運び出来るって訳。
それにしても、きちんと喋れるって良いな。女王様との話し合いが終わったら、気の済むまで語らおう。ここで彼等と生きると決めたのだから。
青月を頭に乗せて後ろを振り返ると、丁度エルフも立ち上がった所で服に付いた草を払っている。そして長方形の紙を懐から取り出し、俺の手に握らせた。
「これは片道専用の魔法陣。女王様の元へ行けるだろう。お前には魔力が無いだろうから、我の魔力を込めた。後は発動するだけだ」
「何から何まで有難う」
紙は和紙の触り心地に近く、インクの様な物で文字が書いてある。勿論俺には何が何だかさっぱりなので、言われた通りにするしか無い。発動なら魔石と同じ感覚だろう、多分。
「これ位は当たり前だ。お前は、女王様の気紛れに付き合わされたんだからな」
「は?」
ニヤリと笑いながら手を振るエルフ、美形は何をしても許されると思うなよ。手に握り締めた魔法陣は発動したらしく、辺りに円形の陣が展開されて明るくなる。
そして止める間も無く視界が歪み、ブレのせいで一瞬目を閉じ開けた時には違う場所だった。
「言い逃げかよ‥」
ポツリ呟き盛大に溜め息を吐く、そりゃあもう肺の中が空っぽになりそうな程。んで次に、大事な家族である青月の健康確認。ん、全く持って大丈夫だ。現に今も俺の心情を察して慰めてくれて居る。
青月に癒されつつ、辺りを見渡す。大丈夫みたいな事言ってても2度ある事は3度ある、を具現しそうだし。足下にはインクの様な物で書かれた魔法陣、辺りの調度品は見るからに高そうな雰囲気、上品な白い煉瓦で造られた建物。
視線を窓に向ければ丁度太陽の光が降り注いでおり、外には美しく手入れされた中庭、城を護る様な城壁、沢山の家並みが見える。
「おぉ、マジで城に来たのか」
う、疑ってた訳じゃないぞ?さて、俺達は一体全体どうしたら良いんだろう。この部屋に誰か居るでも無く、かと言って外に人が待機してる筈も無く。うろうろする訳にも行か無いので、廊下を少し見て部屋に戻る。
「ん、青月?」
不意に頭の上に乗っていた青月が俺から離れ、木製のアンティーク調テーブルに乗る。ただの小物だと思って見逃して居たが、テーブルの上には蚯蚓が這った様な文字が書かれた紙と綺麗に磨かれた銀のベル。
えーと【来たらベルで呼べば良いと思うよ】って、俺の扱い雑じゃない?少しだけで良いから、労って欲しかった様な‥。気にしたら負けだと銀のベルを持ち上げ、軽く左右に振る。
「失礼致します」
リンリン、澄んだ音を立てて鳴る銀のベル。すると直ぐ様扉がノックされ、俺が口を開く前に可愛らしいメイド服に身を包んだ綺麗なお姉さんが入って来る。
目が合って数秒、お姉さんがふわり微笑んでくれたんだがそれより彼女の頭に目が惹かれた。ふんわりボブ髪の上にホワイトブリムと犬耳、これは獣人とやらで‥?いやいやいや、こんな考え捨ててしまえ!
「あ、あの、俺‥」
「ふふっ。私は女王陛下から異世界人様のお世話を任されました、ロスと申します。緊張なさらず気楽にして下さい」
「有難うございます。俺は志津、この子は青月。他にも一杯居るけど、今は「ホーム」に居ます」
「志津さん、青月ちゃんですね。あぁ、女王陛下が来たら直ぐお呼びする様にと仰って居ますが‥」
疲れてるなら客室に、とロスさんの気遣いに感謝しつつ。俺も直ぐ女王に会いたいので遠慮させて貰い、青月を頭に乗せ案内してくれるロスさんの後ろを着いて行く。
侵入者対策バッチリだから何だろうけど、ロスさんからはぐれたら迷子確定の自信しか無い。稀にすれ違う人にガン見されるのは、俺が地球のファッションだからだろう。多分。
「志津さん、ここが女王陛下の私室になります」
「ここが‥、女王の‥」
目の前には来た道に無かった、1番豪華な装飾と彫り込みがされた扉。ほんわか癒し系なロスさんの主なのだから、非常に喋り辛い癇癪持ち女王様では無い‥、と思いたい。
と言うか、マナー何てさっぱり分からないぞ?そんな事を考えていれば、ロスさんが小さく笑い大丈夫ですよ、と。青月も俺に頬擦りしてくれ、何だか大丈夫な気がしてきた。
「女王陛下、異世界人の志津さんをお連れしました。‥‥さぁ志津さん、行きましょう?」
入室許可がいつ貰えたのか分からないけど、ロスさんが豪華な装飾がなされた扉を開く。この中に、俺をこの世界に喚んだ女王が居る。何の為に喚んだのか、身の振りも、か。話せたら良いな。
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