1話、おいでませダンジョン
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・宝箱の発見が指輪、帰還したい気持ちが帰還、木の棒入手がスキル習得の鍵となった訳。普通に過ごしても、特殊条件もあるがスキルが手に入る様だ。
・スライムは本当に序ノ口だったらしい。100匹倒せばダンジョン探索の資格を保有して居ると見なされ、様々な階層に行ける。危険度は右肩上がりらしいけど。
・【眷族】とは、つまり仲間だと思って良い様子。特定のレアアイテム達を手に入れるのが条件で、俺は楽にクリア。スライムのアイテムを持って居るから、スライムを仲間に出来るって事だな。【眷族ステータス】はそのままの意味なので説明は省く。
・そして最後に【収納】って奴だけど、これも正しく文字通り。1つ違うのは指輪に収納される事。
「んじゃ、この前まで着てたスーツ達を収納」
【アイテム一覧】
スーツ一式:1
革靴:1
ふむふむ、これなら宝箱からのドロップ品や採取品の置場所に困らなくて済むから凄く便利そうだ。確か、次の階層からは格段に広く多彩なマップになるみたいだからな。
もう少し突っ込んで聞きたい事もあるんだが、やはり指輪のスキルLvが足りないそう。ま、生きてるだけ良いと思うしか無い。
「さて、次はお待ちかねの眷族って奴を作ってみるか!」
正直ワクワクが止まらない。昔の事だけど、モンスターを仲間にするのって夢だったんだよね。
眷族の説明ページを真面目に読んで数分間、結構簡単な事が分かる。スライムだからなのかも知れないが、頭脳より肉体派の俺にとっては幸運な事だ。
「スライムが好きなのは水で、魔力?の溶け出した水が好みで、あればそこから食事をする、ほぉー。あぁ、それで噴水とか合ったのか‥‥そうだ、俺のptは幾つ貯まったんだろう?俺の簡易ステータス」
【簡易ステータス】
【個体】志津、23歳、♂
【種族】人
【経験pt】176pt
【スキル】指輪2、打撃2、帰還
【装備】量販店の服一式、宿り木の棒、指輪
【眷族】なし
2週間でこれだけしかptが貯まって居ないのは、動きやすい服一式と靴を4ptで作り、1日3食しっかり食べたからだ。主な原因は徹底した命は超大事作戦だけど、これは仕方無い。
俺は【経験pt⇔交換】の項目を開くと、スライムの適した環境作りへ着手する。これから一緒に住むんだし、寝床と食事は手を抜きたく無いな。精一杯上等な物を用意してやろう。
【改装内訳】
角の1つを吸水パネルに(6pt)
直径100cm程の丸い池(50pt)
魔力が満ちた池の水(30pt)
永久的水質浄化(15pt)
176pt−101pt=75残りpt
少し高いかな?と思いつつも認証すればファンタジー要素たっぷり、瞬時に作られる。効果音にしてみるとポンッて感じ?
池に近寄り水を覗き込めば水面はキラキラと輝いて、俺は少々見惚れてしまう。
【魔力の満ちた池】
《上質な魔力が満ちている池。水、魔力を主食とする眷族に大好評間違い無し。浸かって居る眷族に30分+1の経験ptを付与》
おぉ、中々良い感じに出来たと思って良いだろう。眷族である魔物が倒した半分の経験ptは自分に、もう半分は主である俺に入るらしく、眷族はLv概念があるので上げるのが少し大変な様だ。
レアアイテム【眷族】ってガラス玉を池に浸けて1時間待ち、宿り木の棒を持って先を池に浸すと一瞬池が光り、輝きが止むと直径30cmのスライムが池の上に気持ち良さげにプカプカと浮かんで居た。
「‥‥ん?これで良いのか?」
唯一違うのは核、だっけ?普通のスライムは5cm程度の大きさで色は外見と同じ。だけどこいつは1cm程度の大きさで色は薄水色。
気持ち良さそうに流れ浮いているスライムを見て居ると、向こうからスィーッと近寄って来た。ツンツン、表面を突つけばフルフル身体?を震わせる。
「意外に可愛いなぁ。そうだ、【眷族ステータス】確認」
【眷族ステータス】
【個体】なし
【種族】無機生物
【レベル】Lv1
【装備】なし
【スキル】耐衝撃2、耐斬撃1、耐火、耐雷、水吸収、突進、触手、幸福1
【主】志津
「スキル強っ!ってか名前付けられるのか、あ?幸福?」
幸福と言うスキルが良く分からずに調べてみると、主にレアドロップ率が上がるらしく、しかも幸福な事があるとスキルLvが上がる様子。ステータスの一番下に見慣れぬアイコンがあり、押してみる。
【無機生物から一言】
《おいしいごはん、きれいなみずがあってしあわせ。あるじ、ありがとう》
な、何じゃこりゃ!えっと、喋る事が出来ない眷族の気持ちを代弁しております。一定時間に更新されますので、眷族との円滑な関係を好む方はお暇な時間に眷族ステータスを見る事をお勧めします。
「便利過ぎんだろう‥。あ、お前の名前はアクアな?核が水色で綺麗だから」
指輪機能に苦笑を漏らしつつ、思い付いたスライムの名前を呟きながら頭辺りを突っ付く。
‥‥フルフルと表面を震わせ、指に擦り寄って来たから喜んでくれてるんだよな?
名前がアクアになった事を確認しようと【眷族ステータス】を開けば、幸福のスキルがLv2になって居た。名前を貰ったのが嬉しかったんだろうか?
「後は、やる事無いな」
指輪を触り、お知らせを探しても目新しい情報は追加されて居ないので、指輪2ではこれが限界なのだろう。ま、スキル内容とか見れる様になったし良いか。
今日は経験ptも潤ってるし、ダンジョン探索に行くのを止めておこう。明日起きたらアクアを連れて探索、ってかアクアのLv上げた方が良いよな‥‥。
スライムで暫くアクアのLvを上げてから次の階層に行こう‥、と思った時期が俺にもありました。
「‥‥‥。ア、アクア強っ!」
ポヨッ、ポヨッと可愛らしい効果音が付きそうな感じで俺の後ろを弾みながら着いて来るアクア。いつも通りの薄暗い石畳を今度は1人と1匹で歩いて居ると、廊下の行き止まりにスライムが3匹出現した。
木の棒を固く握り、アクアに俺がスライムを引き付けるから触手スキルで援護し、アクアのLvを上げる為に倒して貰おうと振り向く。
‥‥シュッと風を纏いながらアクアの3本の触手が俺を通過、スライムの弱点らしい核を貫き3匹のスライムは即死。俺唖然。
【お知らせnew】
《【眷族】アクアがスライム3匹を倒しました。アクアに3pt、主である志津に3ptの経験ptが付与されます。情報初回につき、次回からは自動で‥‥》
俺、居る意味あるか?
部屋に居る時はタッチパネル式、ダンジョン探索に行く時は音声認識にして居るんだ。頭に響く馴れた声を聞きながら、俺は現実逃避に近い事を考えて居た。
ふとアクアを見ると、アクアは身体中をプルプル震わせながらピョンピョン跳ねて居る。そんな可愛い仕草に俺は頬が緩み、初戦勝利おめでとうの意味も込めて2、3度撫でる。
「そうだ【眷族ステータス】と、眷族の一言」
【眷族ステータス】
【個体】アクア
【種族】無機生物
【レベル】Lv1
【装備】なし
【スキル】耐衝撃2、耐斬撃1、耐火、耐雷、水吸収、突進、触手、幸福3
【主】志津
【アクアから一言】
《アクアあるじのやくにたつ!あるじといっしょ、アクアあるじまもる!アクアつよくなる!》
お、また幸福のスキルLvが上がってる。自分が幸せを感じると、と言うのが強みだな。それにしても、一言が健気過ぎると思うのは俺だけか?
ホームに帰ったら思いっ切り甘やかして遊んであげようと決意しつつ、次の獲物であるスライムを探しに歩き出す。今日の目標はアクアをLv2に出来たら良いなぁ、って感じで。
2週間で覚えたこの階層マップは健在で、直ぐに最初の頃に逃げ出して居たスライムが犇めく可笑しな部屋を見付ける事が出来た。
「さてアクア、大丈夫そうか?」
少しだけ顔を出し、中を覗き込むと10匹程度のスライム達が我が物顔で歩いて居たり角に居たり。直ぐ様顔を引っ込めてアクアに視線を向ければ、触手をニュッと俺に近付けブンブン振り回した。ちょ、了解なのは分かったけど危ないから止めなさいアクア。
まずアクアが先陣を切り、入り口に固まって居た3匹のスライムを触手で倒す。まぁ、作戦なんて大した物は無いけど。
「‥‥あぁ、成る程」
倒しても倒してもスライムが居なくならないのは、この部屋があるお蔭ってヤツか。ある一定数のスライムがこの部屋から出て行くなりで居なくなる、すると摩訶不思議原理で新たなスライムが部屋に召喚される、で良いみたいだ。
‥‥だから?って言われたらぶっちゃけお仕舞いだけどな!スライムを倒すと言うアクアのお蔭で簡単なお仕事をして居たら、聞き慣れた声が頭に響いて来た。
スライムも倒しまくったせいか段々と発生しにくくなって来て居たし、丁度良い休憩だと額に滲んだ汗を拭いながら声に集中する。
【お知らせnew】
《【眷族】アクアのLvが2に上がりました。【眷族】アクアがスキル忠犬、向上心1を覚えました》
お、本当に丁度良い感じだな。アクアはまだ元気そうに触手を振り回して居るけど、俺はヘトヘトに疲れ果ててる。んで、今アクアが倒したスライムがこの部屋の召喚容量?だったみたいだ。召喚される気配すら無い。
他にもモンスターが発生する部屋があるって、スライムが沢山居るみたいだけど、無理無理。
「アクア、帰ろう?」
アクアに近寄り手を差し出せばポヨンッと飛び上がり、俺の胸に飛び込んで来る。潰さない様に気を付けながら緩く抱き締め小さく帰還、と呟いた。
【スキル説明】
忠犬=大好きな主が側に居ると全ステータス10%up
向上心1=大好きな主の為に誰よりも強くありたいと願う心、生命力攻撃力防御力に+1
後でスキル説明を見た時、どんどんアクアがチートになって行く気がしたのは俺だけじゃ無い筈。ってか、忠犬‥‥。
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