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13話、投げ遣り的なエルフ


次の日俺等は今、すっかり上がり慣れた階段を上がって居る。31階層目、ここに多分エルフが居るのだと聞いたけど、俺無事に帰れるかね。命的な意味で。



「うぉ‥、長閑」



思わず手を日陰代わりに使う程の、光りに溢れた空間。目が慣れて来れば、俺にとって見慣れた風景が広がって居る。農作ゴーレムが作業する田園、果実の成る木々に放牧されて居る牛の様な動物。


1つだけ遠い場所にぽつりと小さな家が建って居るので、そこにエルフが居ると思われ。ぶっちゃけ居なくても、少し考え込めるから良いんだけど‥。


アクアを小脇に抱え、頭に青月を乗せてシオと手を繋いで歩いて行く。小さな家は日本で見る事は無いファンシーな造りで、人が1人住むには十分か。



「‥‥‥御、免下さい」



アクアを降ろし躊躇する前に扉を叩いてしまい、言葉が詰まり気味になる。さっさと済まそう、どちらに転んでも良い様に。‥‥あれ?出て来ないんですけど。もしかして不在だったのか?悩む。


扉を叩いて数分間。家の中から返事が来る事も、扉が開かれる事も無い。不在じゃ無かったら、オブジェクト?だとしたら相当恥ずかしい事してるよな、俺。



出直す、と言うか辺りを探索しよう。そう自分に言い聞かせ、踵を返せば瞬時に感じる風。ドスッと重い音を響かせ俺の側に何か突き刺さる。うん、矢だね。



「何のつもりだ、人間。このダンジョンに入り込んだ事、直ぐにでも後悔させてやる!」


「え?ちょっ、ちょっと待って!は、話し合いしよう!」


「問答無用!■王様に任された身として我が身が情けな‥、ん?」



射られた方を見れば、そこには艶やかな金髪をそよ風に靡かせた美しいエルフが弓を構えて立って居た。勝ち気そうな碧眼は訝しげに細められ、キリキリと音を立て弓矢が引かれ俺は焦る。


至近距離で射られれば、きっと致命傷になるだろう。俺の先入観だけど、只でさえ弓の名手って呼ばれるエルフだし。どうにかして話し合いに持ち込もうとするも、大した成果は無い。


諦め掛けて居た時、不意にエルフが俺の手に注目して弓を納め、手を取りマジマジと眺める。俺の手、と言うより指輪を見ている様な感じだ。



「あ、あの‥」


「これは■■の指輪だな?ふむ、と言う事は■王様の言っていた事が正しいと証明された訳だ」



じ、自己完結されても‥。俺は置いてけぼりに内心溜め息を吐く。相変わらず■で隠されて大事な部分、分からないし。



数分考え込む様にして放置された後、暫し待てと更に放置。家に入るエルフを呆然と見送り、漸く俺は我に返る。俺より放置されて居たアクア達は皆、不安気な表情。



「‥‥座ろうか」



下に敷き詰められた緑の絨毯は柔らかく、座るには十分過ぎる程。さて、エルフが帰って来るまで何を話そう。俺が魔物の居ない異世界から来たのは当たり前だし、放任主義だったけど一応帰る場所もあるってのも言っておくか‥。


アクア達を置いて帰りたくない。これがゲームの世界なら、はい/いいえで直ぐ決められるのに。


俺は説明が余り上手く無い方なので、皆には幾つか掻い摘まんで説明。アクアと真白は理解出来たみたいだが、他の子達は創作話でも聞いて居るかの様子。だけど俺の雰囲気を察して居るのか、皆一様に口を閉ざす。



「俺が帰ったら、アクア達はどうなるんだ‥?」


「【眷族】は家族、魂の絆。契約のユニコーンは兎も角、手ずから生み出したスライム達は消滅するだろう。生きる意味を失っては、長く持たんよ」


「‥‥‥そうか」



ぽつり、呟いた言葉にいつの間に帰って来たのか、エルフが答える。俺が帰ればアクア達は死ぬのか、俺が居ないから。



俺を、自らの命に代えて守ってくれた。慕ってくれ、いつも側に居てくれた。見返りも求めず、ただ俺だけの為に。帰れない。帰らない。両親には悪いけど、俺はここに居たい。



「人間、■王様から言伝てとアイテムを預かった。それを飲めば分かる。■■■■■■城に来いと」



ぶっきらぼうに言い放つエルフの手には、無色透明の液体が入った小さな小瓶。溢れ出そうな涙を拭いながら、それを受け取り眺めるも分からずに首を捻った。それにしても伝言、大雑把過ぎるって。


瓶の封を開けて匂いを嗅ぐと、仄かに果物の様な甘酸っぱい匂い。あれ?どこかで嗅いだ事ある様な?まぁ良いや、と一気に煽る。



【お知らせnew】

《スキルLv99up、世界樹の雫によりスキル指輪Lv99になりました。全てに置いて制限解除→許可されました。指輪機能全解除、情報全解除、【眷族】との戒め全解除。古代の指輪が条件を満たした為、進化致します→迷宮の腕輪》


「‥‥は?」



ついて行けないとはこの事か!お知らせ音声を切っていた筈なのに、いきなり軽快な音楽と共に聞き慣れた機械音声が流れる。待つ暇も無く指輪が変身するし‥、エルフを見れば目を逸らされた。



「管理を任されて居ると言ってもダンジョンの操作はリンドブルムに居る女王様がするからな、我は此処まで降りて来た者の駆逐だ」



心の安定剤代わりにアクアを抱き締め、エルフの話を聞く。ああシオ、女の子何だから威嚇するのは辞めなさい。3姉妹、真白と4兄弟は仲良くお昼寝タイム、この階層ぽかぽか陽気だからね。


カオス!お、落ち着け俺。詰まる所、エルフは女王から俺の事を少し聞いただけ。全ては女王様にリンドブルム城に行って聞け、と言う事か。城に行くにも片道だけの簡易魔法陣みたいなのがあり、それを使う。



「あぁそうだ、アクア達も連れて行けるのか?」


「無論、連れて行ってやるが良い。えぇと、指輪が腕輪に変化し、機能が追加されて居る。便利な機能がある、それを使えば楽に【眷族】も連れて来れる、だそうだ」



腹を据えた俺の事は割りとどうでも良い、大事なのは皆の事。人はそれを見ない振り、後回しと呼ぶが知らん。エルフが何か書かれた小さな紙を取り出して読み上げる。書かれて居る文字は読めない。


投げ遣りと言うか適当と言うか、会ったばかりのお前は何処に行ったよエルフ。遠い目をしても仕方無い、俺は腕輪を触ってパネルを出す。



外見は変われど操作の仕方、中身は変わって居ない様だ。新しい機能が追加されて少しごちゃごちゃな印象を受けるが、より良い物が手に入ったと前向きになろう。取り敢えず、どんな機能とか追加されたのか詳しくポチッ。



new【金銭M⇔交換】

《【経験pt⇔交換】の世界通貨M(ミュ)ver.》


new【ステータス詳細】

《攻撃力から性癖まで、全てに置いて閲覧制限が解除》


new【「ホーム」召喚】

《腕輪主の都合が良い場所に「ホーム」の扉を召喚する》


new【眷族との戒め】

《「ホーム」にて【眷族】にした全ての魔物と会話可能。ダンジョンで使役した【眷族】を「ホーム」以外のダンジョン外に持ち出し可能》


new【情報閲覧】

《もっと易しい操作に、もっと簡易な操作になって新登場!某検索サイトみたいな感じ》


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