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10話、フラグ建築資格保持者


「ふむ、ここは幻影なのか。俺に分かる筈無いな」



落とし穴の場所、かは分からないけどこの行き止まりは見せ掛け。印を付けたシオがいきなり壁に突進し、意味が分からなかった俺達は大いに慌てた。


直ぐ仕掛けに気付いてシオの後を追い、少し彼女を叱る。俺達の為に張り切ってくれるのは嬉しい、でも一番危ないのはシオ何だからせめて何かあったら守れる様に行かないで欲しい。しゅん、と落ち込んだがコクコク頷くシオに安堵の溜め息。


分かってくれた所でまたシオが危険察知開始、ここは罠だけで魔物は出て来ないのか?まぁ、これだけの罠の数で生活出来る魔物は限られてるしな。



「ん、広い場所?」



ヤバいフラグを立てたか?と思ったけど、どうやら罠も無く魔物も居ない空間らしい。疑問に首を捻りつつ、何も無いのでさっさと通り過ぎて通路に。


シオのお陰で順調に進み、誰1人罠を踏む事無く漸く階段を見付ける。そのせいでシオは余計に神経を使ったらしく、真白の上でグッタリしてるけど何処か誇らしげ。



「‥‥と、蜥蜴?」



階段を上がり切って、25階層目。そこには背中から炎を噴き出して居る、大きさはサンドレオ位の蜥蜴が鎮座して居た。



【簡易ステータス】

【種族】蜥蜴(サラマンドラ)

【レベル】Lv**

【HP】****/****

【MP】*/*

【取得経験pt】***pt

【装備】**

【スキル】***、*、***、***、**、****

《火に棲み、火を食べ、火に強い生物。その特性を利用した火に強い布(火浣布)が作られる》



指輪機能で役に立って居るのか分からない、ボスのステータス画面を見る。火属性で火は無効っぽいから、リリムの風魔法は効かないかもなぁ。


それにしても遂にボスのHPが四桁を越えた、まぁ下の階層もデカいのは越えてたし。こりゃ、腹を括ってちまちま地道にダメージを稼ぐしか無い。



「火耐性持ってるアクアが要だ。狼アクアになって俺と頑張ろう。青月は全力で水鞠、水鉄砲を叩き込んで、シオは水の踊りで場を水属性に。んで、危ないから水の踊りが終わったら離れてて欲しい。3姉妹も強化と回復を気にしつつ、全力で。真白は全体を見極めて前衛後衛頼む」



一気に指示を出したので、少し間を置き一呼吸。そして皆を見渡せばしっかりと頷き、俺はフランベルクを【収納】から取り出し装備。狼アクアと共にサラマンドラへと駆け出し距離を詰める。



シルスとリリムに防御と素早さを強化して貰ったので、多少は俺でも着いて行けるだろう。アクアは真正面からサラマンドラと対峙、俺は後ろへ回り込む。


この体長でこの長い尻尾、攻撃の手段として用いられたら厄介な範囲攻撃になる。だから俺は、アクアに気を取られて居る間にさっさと尻尾を斬って手数を減らす。



「っ‥、硬い?うぉ、やば!」



身体を沈ませ、尻尾の付け根に近い部分へ思いっ切りフランベルクを突き立てようとするも、思った以上に刺せず半分程フランベルクの刀身を埋めた。抜くに抜けず、魔物の反応が早いせいもありフランベルクから手を離ししゃがむ。


勢い良く半回転したサラマンドラはそのまま走り、壁を登って天井へ貼り付く。尻尾が頭を掠めポカンとする俺だったが、口に炎を溜め出した魔物を見て焦る。



「いやいや、ヤバいいぃぃぃっ」



一応ヒートソードを【収納】から取り出して装備。狙いは俺の様で、回避スキルと真白の守護で当たらずに済んだ。だが、直ぐそこの地面が焼け焦げてプスプスと音を立て冷や汗が流れる。


頭を悩ませつつ、今は落とす事が最優先。青月は水鞠、3姉妹は妖精の舞、で何か凄いのを発動して俺びっくり。


多分、形状から言ってグレイブの上位魔法。天井から引き剥がされ、地面へと叩き落とされたサラマンドラ。巨体で体勢が戻せず、蠢いて居る今が好機とばかりに皆で一斉攻撃を仕掛ける。



「よっし、フランベルクは返して貰うからな」



尻尾に刺さって居たフランベルクを横に滑らせ斬りながら回収、力の限り2つの剣で見よう見真似連撃をお見舞いすればサラマンドラの尻尾は千切れ掛け。


最後の力と言わんばかりに起き上がるも、狼アクアが喉元に噛み付き喰い千切る。サラマンドラは声無き咆哮を轟かせながら霧散、俺はホッと安堵の溜め息を吐いて2つの剣を【収納】。


勝利の余韻もそのままに、サラマンドラが居た場所には布が落ちて居たので拾う。そして皆を連れ、待たせて居たシオの元へ。



「シ、おっと」



俺達が近付くと、シオは走り寄って来てギューッと俺の腰へと抱き着く。一番のMVPは場を水属性にしてくれたシオだな、そのお陰で魔物は上手く火を使えなかった様だし。


【お知らせnew】が追加されて居たので皆に休憩を言い渡し、俺もその場に座り込んで指輪を操作。狼アクアがお腹を使わせてくれるので寄り掛かり、まだ引っ付いて居るシオの頭を撫でる。



【お知らせnew】

《25階層突破、階層BOOS撃破370+ボーナス1500pt付与→志津、戦闘に関わった【眷族】


【個体】志津、23歳、♂

【HP】87/100

【MP】0/0

【経験pt】1294pt

【スキル】new指輪6、回避→new緊急回避、new斬撃3

指輪6=「ホーム」に居る間のみ【眷族1】と限定会話、情報

緊急回避=回避の上位互換。俊敏に頼るがより素早く、避けやすくなった


【個体】アクア

【レベル】Lv15→18

【HP】339→375

【MP】43→51

【スキル】なし


【個体】青月

【レベル】Lv13→16

【HP】138→149

【MP】172→190

【スキル】new鉄砲水

鉄砲水=水鉄砲の上位互換


【個体】シオ

【レベル】Lv2→9

【HP】80→140

【MP】24→49

【スキル】なし


【個体】シルス、リリム、カリス

【レベル】Lv10→14

【HP】169→180

【MP】311→342

【スキル】なし


【個体】真白

【レベル】Lv28→29

【HP】425→436

【MP】381→389

【スキル】なし》



お、俺の時代来たかも知れない!ステータス画面を覗きながら俺は1人喜びに身悶える。


ん?ちょっと待てよ。指輪スキルが上がって嬉しいけど、この「ホーム」に居る間のみ【眷族1】と限定会話って何だ?皆とは無理なのか?調べてみよう。


‥‥ふむふむ。へぇ、成る程。


【眷族ステータス】を詳しく見たら、アクア達に番号が追加されて居た。因みに【眷族】になった順。つまり、【眷族1】のアクアとしか「ホーム」で会話出来ないって訳だな。



「アクアだけ、指輪スキルで「ホーム」に帰ったら会話出来るみたいだぞ」



言うや否や、狼アクアの身体がプルプル震えだした。そんなに喜んでくれて俺こそ嬉しい、と思って居たら突然寄り掛かっていた狼アクアが居なくなった。


勿論俺は支えを無くし、頭を床に打ち付け悶絶。カリスに治して貰おうと顔を向ければ、カリスだけじゃ無く皆がまるで残念がる表情を浮かべて居た。ハッとシオを見るも、ウルウル瞳を涙で揺らめかせて居る。



「こっ、今回喋られる様になったのはアクアだけだけど、指輪スキルが上がれば皆と話せ、ぶっ」



俺は慌てて皆に言い訳を話し出す。まぁ多分だけど、スキル上げれば追加されるのは正解だろうし。そして最後まで言い終わらずアクアが俺の顔へ貼り付く。


爺ちゃんと婆ちゃんが川の向こうから手を‥、って2人生きてた。



そんな事思って遊んで居る場合じゃない。酸欠になって倒れる前にアクアを引き剥がすと反省して居るのか、ぺたんこになって落ち込んで居る、多分。


今日は濃い1日だった。もう迷宮ダンジョンを探索する気力が全くと言って良い程無い。未だに落ち込んだ姿のアクア、ショックを受けた様子の皆を一旦放置して指輪を弄る。経験pt貯まったし「ホーム」移転。



「アクア、そんな事で俺は怒らないから。それに皆も何かあればアクアに頼めば間接的に、だけど話せるだろう?」



パネルを開き、【経験pt⇔交換】の項目をタッチ、「ホーム」移転を探してまたタッチ、認証すれば一瞬。25階層が「ホーム」になると、途端聞こえて来る声。


頭に直接聞こえる、と言うタイプらしく指輪の機械音声と真白で慣れた俺には苦では無い。ふむ、声音は小学生低学年辺りだろう。少し抑制が無いけどしっかり聞き取れるし、大丈夫だ。



《ますたー、みんながめからうろこだって!》


こくこく。


「‥‥わぉ」



嬉しいのか、ぴょんぴょんと弾みながらアクアの言った言葉に苦笑を浮かべる。でもこれでよりコミュニケーションを取りやすくなった。ウザがられ無い程度に喋り倒すかね。


だがその前に、風呂に入って着替えよう。砂漠の砂ぼこり、サンドワームの粘液、その他に塗れて居るからな。お腹も空いたし。皆で風呂場へ行く中、やはり真白だけが着いて来ず、アクアを抱き上げ真白に話し掛ける。



「真白、どうして一緒に風呂へ行かないんだ?」


《むー‥、ようせい、せいれい、せいじゅう、まりょくたべる。からだ、きれい!おみずいらない。ましろ、ねるのすき!》


「んー、ん?まぁ良いか、成程。風呂大丈夫なら良いさ、お休み」



魔物。家族なんだけど、奥が深いな。これからもっと親密になって行けば、合体攻撃や必殺技が‥‥って馬鹿な事考えて居ないで、さっさと風呂に入るか。


シオがアザラシver.時の様に泳ごうとして溺れ掛けた以外、何事も無くさっぱりして風呂から上がる。夕飯も食べようとテーブルに着き、指輪を弄りながらお喋りタイム開始!



「何食べたい?」


《むむー、しお、おさかなたべたいって!かりすとりりむとしるす、す、す、すらいむのかくたべたい‥‥》


「あぁ、あぁ!よーし、パパ奮発しちゃうぞぉ」



取り敢えず、いつも通りの会話。ヘタレな俺には、いきなり直ぐ喋るネタは降って来ないし。


アクアがぷるぷる震えながらも伝えてくれ、労る様に撫でながら食事の準備。確かに、自分は大丈夫だとしても3姉妹の好物はスライムの核。スライムのアクアには少し怖かったかもな。



「さて、ご馳走様でした」


《ごちそーさまでした》



何事も無く食事タイム終了。両手を合わせて言えばシオ、3姉妹も俺の真似をしてアクアは言葉を反復。愛らしい姿に癒されつつ、この間やり残した事を思い出した。バージルを泉周辺に適当に植えて置く。


そして皆が最近、泉や自分のベッドに居ない事に気付き、提案してみるも却下されて肩を落とす。うーん、地味に経験pt稼げると思うんだけど‥。



《ますたー、あくあ、みんな、いっぱいまものたおす!ますたーといっしょ、ずっといっしょ》


「良し、一緒に寝るか!」


《わーい》



マジうちの子達天使過ぎるんですけど!アクア達のうるうる攻撃に勝てなかった俺は、皆を連れてベッドに潜り込む。と言うか、勝てる人が居るなら見てみたい物だ。


より楽しく会話しながら、意識が遮断されるまで皆と喋り倒す。次の階層から少しLvも上げようね、とか。俺は後ろから指示だけでも良い、とか。有り得ないけど。


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