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9話、鬼ごっこの次は怪獣戦


そんな事を悶々と考えながら22階層目。下の階と同じく砂漠地帯何だが、明らかにボスだろこれ!って言う様な魔物がお出迎えしてくれた。



「倒せるか、これ」



ずりずりと重そうに這う巨体、口は大きく裂け、腹を空かして居るかの様に滴る涎。遠目から見てもこれは大変倒すのが難しい魔物だ、と言うのが分かる。デカ過ぎ。


頭を悩ます前に先ずステータスの確認。案外、こう言うのに限って弱いかも知れないからね。是非とも弱いと願いたい。



「えー‥、巨大蚯蚓?良く分かんないけど、それの簡易ステータス確認」



【簡易ステータス】

【種族】蚯蚓(デザートワーム)

【レベル】Lv31

【HP】1391/1391

【MP】0/0

【取得経験pt】46pt

【装備】なし

【スキル】耐熱、耐寒、土無効、物理耐性、食わず嫌い、溶解液、牙、丸飲み

《サンドワームが熾烈を極めた生存競争に勝ち、進化した姿。毎年1メートル体長が増え、皮膚が分厚く硬化。魔法使いが居ないと倒すのは難しい》



‥‥挑むのは辞めて置こうか、俺の言葉に皆が頷く。物理が余り効かない割にHPが凄く高い。倒しても時間で復活してしまうし、無視して先に進む。


もし見付かっても、3姉妹の魔法があるので楽観的に構えよう。アレはデカいけどまだ、まだ!小さい奴が居る。気を付けないと。



「あ、フラグか」



デカいデザートワームは俺等に気付かず、進行方向と反対側へ行ってしまった。ホッとしたのも束の間、そろそろオアシスへ辿り着く前に地面から小振りのデザートワームが出現。


ギシャァァァ、と雄叫びを上げ向かって来るも、チームワークや役割分担がきっちり出来てる俺等の敵では無い。


HPが高いので倒すにはかなりの時間を要したが、危なげ無く撃破。魔物が居た辺りには戦利品が落ちている。



【砂漠蚯蚓の心】

《デザートワームの心臓を覆っていた、石膜の一部。防御力+50、物理攻撃軽減》



石膜?覆って居たとか、不思議な蚯蚓だな。そう言えば、アクア達に装備品は装備出来るのだろうか?オアシスに着いたら試してみよう。目と鼻の先だし。


明るい場所へ透かして見ていたアイテムを【収納】、オアシスへ歩き出す。到着すれば少しの休息タイムとばかりに皆で腰を落ち着け、指輪を弄り【収納】から装備品を取り出した。



「暑いけど、ちょっとだけ付き合ってねー」



そう言って俺が取り出したのは、ゴブリンから手に入れた武器や防具、アクアが宝物庫から持って来た生命の指輪、さっき手に入れた砂漠蚯蚓の心。


どうすれば良いのか分からないが、順番に試して見れば良い筈。武器は、駄目らしい。アクアの身体をちょっぴり斬って終わり。防具も駄目、青月に持たせようとしたら宝物庫の出来事を思い出した。



「後は装飾系‥、ん?」



何気無く指輪のパネルを開き【お知らせ】をタッチすると、装備について。の項目が足されて居る。さっき見た時は何も無かったのに!とは思ったけど、背は腹に変えられん。いそいそとタッチする。


要約すると、元々装備出来る物じゃないと無理矢理持たせても効果は無い様だ。詰まる所、アクア達は武器防具を装備する事は出来ない。だが装飾系装備は【眷族】に限り、主が装備させる事が可能。



「何か取って付けた様な設定だな、でも装備出来るなら良いか」



少し苦笑するも直ぐ様思考を切り替え、武器防具を【収納】、生命の指輪と砂漠蚯蚓の心を手に取る。2つしか無いし、今回はアクアだけで良いかな。HP増加と防御力強化系だから。


狼アクアを自身の側に呼び、悩む。主が装備させる事が可能って書いてあるけど、どうしたら良いんだ?無理矢理捩じ込むにしても可哀想だし、当たり前だし。


ヤケクソ気味にアクアへ装飾を掲げ、装備!と叫ぶと手の中にあった装飾品が消えていた。成功したのか?指輪を弄り、パネル操作してアクアのステータスを開く。



【眷族ステータス】

【個体】アクア

【種族】無機生物(スライム)

【レベル】Lv15

【HP】289/339

【MP】43/43

【装備】生命の指輪、砂漠蚯蚓の心

【アクアから一言】

《ますたー、あくあいないとだめ!ますたーは、いつもあくあといっしょなの!》



やった、大成功。きちんとHPは増えてる。防御系はまだ指輪のスキルLvが足りないから見えないけど。そして久し振りに見た一言に俺感動。何だか手間の掛かる駄目な子、みたいに見えてんのかね。



「そろそろ探索開始しよう。余り時間を掛けたら干からびそうだ」



俺の問い掛けに皆から賛成を頂き、立ち上がる。さて、階段は何処かな?まぁいつも通り壁伝いに歩けばいつかは辿り着く筈、余程捻くれた造りじゃ無きゃ。


何回かサンドワームと鉢合わせ&地中から不意打ちを食らったが、俺等の敵じゃ無い。あのデカいサンドワームに見付かる事無く進めたのが勝因だ、砂まみれになりながらも階段を見付ける。



「あー、ひんやり」


こくこくこく。



階段を半分程上がると下の熱気が抑えられ、今までの分余計に涼しく感じた。ぽつり呟くとそれを拾った3姉妹が全力で同意、やっぱり暑い物は暑いもんね。


上がりきって23階層目、ここは先程とは打って変わって幻想的な雰囲気。淡く輝く木々、色とりどりの花、澄んだ美しい泉。何処か感覚的に「ホーム」を思い出す。



「おぉ、綺麗だな」



辺りを見渡しながら感嘆な溜め息を吐く、出来るだけここで戦闘はしたく無いな。


花の丈が長い物が多いので、擬態が解けたアクアを見失わない様に抱き上げ探索。部屋が肌に合って居るのか、青月も心なしか上機嫌に宙を泳いでいる。



「いやー、水きれ‥」


《乙女乙女乙女乙女乙女乙女乙女乙女乙女乙女乙女乙女乙女》


「‥‥‥‥」



中央に構えてある泉を覗き込めば、底まで見渡せる程に澄んでいる。経験ptは次の「ホーム」移転が出来ない位に枯渇してるけど、それを忘れて休憩して行きたくなりそうだ。


少し手を泉に浸し、ぽつり呟けば何処からか頭に響く声が聞こえて来た。辺りを見渡しても何も居らず、声を聞いたらしい皆も一緒に首を捻る。



《待てど暮らせど、私だけの聖なる乙女は現れない。この際お前でも良い、な・ら・な・い・か!》


「お断りします」



アクアがプルッと震え皆の視線が泉の上に戻った時、紺色の目をした白馬が額の中央にある長く鋭い角を振り回しながら興奮した様に喋り掛けて来た。


これ、もしかして聖獣だの神獣だの言われてるユニコーンって奴?凄く獰猛で、聖なる乙女が居ないと駄目だとか書いてあった様な。あぁ、何かアイツ変な事言ってるけどガン無視で。俺の為に。



《使い魔の契約でも良いぞ!お前は魔の素質が無いから契約したら会話出来無くなるが、漸く一応清らかな人間が来たんだ。一体何年1人で居たと思ってる!■■め、次あった時はー‥》



何だこいつ、これが俗に言うボッチって奴なのか。少し、ほんの少しだけ可哀想だなとは思うよ。それにユニコーンって言ったら物理魔法、どちらもこなせる万能型。


けどこれ以上【眷族】増やしたら実際問題、経験ptがまた少なくなっちゃうしな。これは皆に聞いてみるしか無いか。まだ熱弁奮って居るユニコーンは放置、俺は皆と円陣を組み話し合いをする。



「どうする?ユニコーンを【眷族】に加えた方が良いかな?」


ぷるんっ。


「え、どうせなら盾にする?」


こくこく。


「青月は?」


こくん。



話し合いの結果、ユニコーンは満場一致で【眷族】にする事が決まった。とか言いつつ、本当に考えてくれたのは両端から触手を出して丸を作ったアクアだけっぽい。


俺の事を大切に思ってくれるのは嬉しいけど、役に立たなかったら俺の盾決定!とか可愛い青月と3姉妹が言っちゃ駄目だろう。


取り敢えず決まりは決まり、円陣を解いて未だに熱弁中のユニコーンへと向き直る。




「おーい!使い魔って言うか、【眷族】って家族なろうぜー」


《む、分かれば良い。だがその前に、私の乙女を名乗るからには死なれては堪らん。あの茂み奥にある葉を使え、役に立つ》



手メガホンでユニコーンへ叫ぶと、気付いてくれたのか俺達に近寄って来る。改めて見ると凄く毛並みが美しい気高い獣って感じなんだが、喋ると残念。


大体の事をスルーしながら言われた通り、茂みの奥へ行くとそこには斑入りの葉っぱが群生して居る。形的にはバジルみたいな?指輪を弄り、詳細を開く。



【バージルの葉(斑入り)】

《香り高い香草の一種。斑無しはHP、斑入りはMPを3割程度回復させる効果を持つ》



似てると思ったけど、本当にバジルっぽいな。ある程度残して葉を収穫、後はシャベルを取り出し土を付けたまま株ごと指輪に【収納】。「ホーム」へ帰ったら泉効果で幾らでも簡単に増やせるし。


良い物を手に入れた。上機嫌に泉へ戻ると、随分仲良くなった皆の姿が見えた。一体何を話して居るのか俺にも教えて、ってか是非とも混ぜて欲しい。



「教えてくれて有難うな、ユニコーン。これで少しは安心してダンジョン探索を続けられる」




どうやって葉を使うかは後で考えるとして、寄って来たアクアを抱き上げつつ、ユニコーンに感謝。ふんっ、て鼻で笑われたけど別に良いか。さて、恒例の名前決め。



「真白、かな?」


《安直だな。だが致し方あるまい、我慢しよう。本当の乙女を見付けるまで‥‥》



名付けのセンスは余り無いので、過度な期待しない様に。ユニコーン、真白からお許し頂けた様で、会話が途切れてしまう。【眷族】として俺と繋がったらしいが。


話す事が出来ないのは寂しいが、家族が増えるのは嬉しい事だ。真白の頭に乗る青月に癒されながら、俺は指輪を弄りステータスを確認する。



【眷族ステータス】

【個体】真白

【種族】聖獣(ユニコーン)

【レベル】Lv28

【HP】425/425

【MP】381/381

【装備】なし

【スキル】魔法耐性、光無効、闇弱点、神聖魔法2、角、突進、蹴り上げ、水浄化

【主】志津

【真白から一言】

《‥‥致し方あるまい》

《神聖な泉に住まう聖なる獣。気性が荒く、乙女でしか落ち着かせる事は出来ない。角はあらゆる薬の元になる》


【スキル説明】

神聖魔法2=中級神聖魔法。癒し、浄化、攻撃と隙の無い魔法を覚える。器用貧乏

水浄化=ユニコーンの角には水を浄化する力が宿る


【神聖魔法】

1、治癒(消費MP4)

対象のHPを3割回復

1、守護(消費MP5)

敵から受ける物理魔法を軽減させる聖なる盾を出現

1、解呪(消費MP6)

対象に掛けられた魔法効果を解除

1、光撃(消費MP5)

聖属性の攻撃魔法、死霊系に有効

2、封印(消費MP8)

対象の魔力を一時的に封印し、魔法を使えなくする

2、解毒(消費MP5)

毒に侵された者を治療する

2、浄化(消費MP10)

死霊系魔物を一撃で葬る



おぅ、強くないか?ってか、どれだけ俺で譲歩したんだよ。うーん、まぁ良いか。気にしたら負けだ!花冠を作って遊んでいた3姉妹を呼び戻し、用は無いとばかりに次の階層へ行く事を決める。



「次は普通の石ダンジョン、だな。ちょっと飽きてきた」



かと言って即死トラップ祭りだったら、それはそれで困っちゃうけど。相も変わらず見慣れた内装、そして漸く24階層目。


エルフが居る、と言われた階層までは後少し。何が変わるのか良く分からないが、目標にする位なら別に構わないだろう。皆に声を掛け、罠に掛からない様慎重且つ大胆に進んで行く。


暫く歩いて居ると、後方でカチッって小さな音が耳に届いた。


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