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8話、太くて長く、凄く大きry


「何だ‥、アレ。取り敢えず一応ステータス確認」



【簡易ステータス】

【種族】エクセキューショナー

【レベル】Lv*

【HP】*/*

【MP】*/*

【取得経験pt】*pt

【装備】***、***

【スキル】***、***、***、****、******、***、**

《斬首する過程で剣に魂が宿り、屍を動かし生者を狩る。特別に作られた処刑人の剣が本体》



Lv、HP、MPがバグってんじゃ無いのか?一桁とか、直ぐに倒す事が出来るとか?いや、詳細には剣が本体だとか書いてあるから何かあるんだろうか。


やる気、じゃなくて殺る気満々な皆。俺は【収納】からフランベルクを取り出し装備、構えて処刑人が来るのを待つ。嫌な汗が額を伝うが、それより視線を逸らしたく無い。



「あんな剣に当たったら一発アウトだ、攻撃より回避優先で」



動作が緩慢なので、それだけが唯一の救いだな。でも勢い良く振り下ろされた剣を受け止め切る自信は無い、ので回避スキルには頑張って頂きたい。


距離にして約12メートル程度。処刑人が俺をガン見してるんだが、やっぱり生きて居る人間が最優先で抹殺対象なのだろう。是非とも全力でお断りだ。


処刑人が一歩足を前へ出し、緩やかに剣を持つ手を頭上へと掲げた。その姿を見てアクアは左で俺は右、青月と3姉妹は剣が届かない上へ退避。



「シルス、俺とアクアに防御強化!青月は水鉄砲か水鞠で顔を攻撃してほし、いぃぃぃっ」



重くて振り下ろすだけで一杯一杯だろう、と考えて居た俺が悪かった。下ろしながら剣の軌道を変え、通路に大音量の破壊音を響かせながら剣先は俺の足元。


よ、余分に距離を取って無かったら即死だったかも。そりゃ、相手は死体だから生身ではあり得ない動きも出来る。心臓が早鐘の様に鳴るのを深呼吸で抑えつつ、肝に命じよう。



「一番HPが高いアクアでも怪しいな、剣が床にめり込んでるし」



刀身が半分程通路の床に埋まり、その威力に冷や汗が流れる。青月や3姉妹の攻撃は剣を握って居ない手で軽く払われ、全くと言って良い程効いて居ない。


ダメ元で3姉妹へ精霊の舞を指示、勿論カリスの上位光魔法攻撃。詠唱が終わるまで時間を稼がないと行けないが、ぶっちゃけ大丈夫か分からん。


3姉妹の攻撃が止んだ事により、青月だけとなった攻撃は邪魔じゃ無いらしく、床に埋まる剣を意図も簡単に抜き去る。



「アクア、皆の攻撃に合わせ、危なっ。合わせて足に攻撃を!」



壁の近く迄下がって居たのが幸いし、横凪ぎの攻撃は壁にめり込む形で止まる。ステータスは可笑しくなってるし、死体だから身体能力もあり得ない、けど頭は余り良く無い様だ。


流石に同じ手が2度も通じる。何て事は無い様で、処刑人は突きの構え。後もう少しで良い、出来るだけ時間を稼ぎたい。


緩慢な動きで剣を引き、それを感じさせない早さで俺に突きを繰り出す。俺は意を決し、握ったフランベルクを出せる力の限り弾く様に横へ叩く。



「っ、らぁっ!」



こんな使い方をして、普通の剣なら根元からポッキリと折れてしまうだろう。だがダイヤモンドの倍以上硬度がある六方晶で出来たフランベルクは全く傷付かず、剣の軌道を逸らす事に成功した。


荒く肩で息をし、フランベルクを持つ手は痺れもう一撃来たら同じ事をするのは自殺行為にも程がある。これで時間を稼げ、皆が勢い良く攻撃を放つ。



「よっ、良し‥‥、これぞ正しく膝カックンだ!」



いきなりの攻撃に俊敏さが追い付かない処刑人は勢い良く前のめりに倒れ、ピクリとも動かなくなる。その姿に思わず俺は叫ぶ。


膝カックンの主な要因は、アクアが丁度関節に突進しただけ何だけどね。皆と勝利を分かち合い、何か【お知らせ】が無いかと探すも何も収穫は無し。



「訳分からん。ってか、何で倒したのに消えないんだ‥?」



魔物を倒したら普段は跡形も無く霧散する筈。と言う事は、まだ倒して無く気絶状態だとしたら?確か、本体は剣だとか書いてあ‥‥し、失念してた!


処刑人を見るとビクンッ、と身体が揺れ、俺は取り敢えず直ぐ様逃げる事にする。きっとこの判断は正しいに違いない。絶対。



「今の火力であんな剣を壊せる訳ねえぇぇえっ!」



擦り寄って来るアクアを申し訳無いが鷲掴み、まだ倒れて居る処刑人に背中を向けて走り出す。青月、3姉妹も全速力で走る俺の速度に合わせて着いて来てくれる。


余計に体力を消耗するのは分かってるけど、叫ばずには居られない。足が縺れる程に走り、漸く安全だと確認が取れると座り込んで乱れた息を整えた。


心配そうに寄って来た皆に大丈夫だと返し、大事な水分補給。大方息も整い、膝に手を置きよっこいせ、と勢い良く立ち上がる。



「はぁー‥っ、見付かる前に早く階段見付けないとヤバイよな‥」



アクアを抱き抱え、青月と3姉妹に問うと皆から一斉に頷かれる。因みに歩くなら全然良いんだが、アクアは走りが余り早く無いから猛ダッシュの時はこうなる。


処刑人が近寄って来る時は剣を引き摺るので、皆と聴覚フル稼働しながら探索。ステータス確認した所、後1〜2発分しかMPが無く、詰まり出会っても1〜2回しかダウンさせられ無いって事だ。


俺の逃走根性に期待して意気込んで居ると、3姉妹が俺の髪をクンッと引っ張り後ろに指を差す。



「‥‥嘘だろっ」



振り返り耳を澄ませば、微かに聞こえて来る重たい剣を引き摺る音。あれだけ必死に走ったって言うのに、もう追い付かれるのか。


例え何か仕掛けがあったとしても俺等には解明出来ないし、解除出来ない。出来る事は追い付かれる前に、出会う前に上の階層へ逃げ切るだけだ。考えて居る暇も惜しく、俺達は足を進める。


今1番の懸念材料は行き止まりだな。もし行く先が行き止まりだったなら、引き返す間に処刑人と出会ってしまう可能性大。ダウンさせるか、隙を見て逃げるか。



「足音、息、熱量、何を頼って居るんだろうな。それが分かれば、多分遣り過ごせるのに‥」



って、そんな事を言ってる場合じゃ無かった。あれだけ肝に命じていた行き止まりを引き当ててしまい、運良く処刑人とは出会わなかったが距離が余計に近くなってしまう。



「ホラーゲームなら、箪笥、とかあるんだけどな!ギミックねぇ、のかよっ」



はぁ、はぁ、と荒い自分の息が若干耳障りになって来る。まだ体力的には走れそうだが、いつまで続くか分からない命を掛けた鬼ごっこに精神が参りそうだ。


走ったとしても大して変わらない距離、どんどん走り疲れて行く俺、疲れ無い死体。例え余計に体力消費するとしても、冗談でも言わないとやってけん。


そう言えば、さっきから随分と長い距離真っ直ぐ通路を走って居る。流石にこれは可笑しい、と辺りを見渡し後ろに視線を向けた瞬間、思わず変な声が出た。



「どっ、どう言‥、うぇっ!」



重い剣はどうしたんですか?って聞きたい位軽やかに、処刑人がこちらに走って来て居た。勿論あの剣は持ってるんだけど、今までとは違う比較的機敏な動きに驚きながら、俺も追い付かれまいとスピードを上げる。


そろそろ走り過ぎで辛い、気力だけで走ってる様な物だ。でも捕まる訳には、死ぬ訳にはいかない。


どんどん背後から聞こえて来る足音が近付いて来るのが分かった。だがこれ以上無茶をして走れば余計に足が縺れ、最悪転んでしまう可能性がある。



「かっ、かい、だんっ!」



距離はあるけど前方に階段を発見、あれに望みを掛けてひたすら走る。視覚的に、通路が狭まって来て居る様な感じが否めない。これなら逃げ切れるかも知れないな。


不意に、俺は何かに躓き転がってしまう。マズイ!ヤバイ!と焦りながら立ち上がろうとするも、散々酷使した足は言う事を聞かない。だけど次の瞬間、とてつも無い轟音が響き渡る。


音のした方へ顔を向けると、今までの通路は塞がれて壁に。んで壁には剣が生えて居る事から、向こうにまだ処刑人が居るんだろう。この壁が無く転けて無かったら俺は串刺し、って訳か。



「た、助かった‥‥?」



酷く荒い息を必死に整えながら、自分の足元を見るとそこだけ取ったかの様に石が無くなって居た。アクアの幸福スキル?いやいや、幸福スキルはアイテムにしか作用しないし。


仕掛けが作用した、と無い頭で考えてこの一件は終わりにしよう。早く次の階層に上がってしまいたい。力を振り絞り、よろけながらも階段へ。




「ちょっと休憩しようか」



21階層目に上がる階段の中頃、やはり体力回復をしたく皆に休憩提案。皆は元気そうだけど、俺がヘロヘロだからね。提案は却下される事は無く、俺はぐったりと階段に凭れ掛かる。


次の階層で経験ptを稼いで「ホーム」移転しなければ、また此処を通るって事だろう?撃破して無いし、多少無茶してでも移転しないといけないな‥。


皆でまったりして居ると、不意に聞き慣れた機械音声が頭の中に響いて来た。最近は聞き逃したりして居たから、何だか凄く久し振りに聞いた様な気がする。



【お知らせnew】

《20階層突破、20階層BOOSダウンボーナス500pt付与→志津、戦闘に関わった【眷族】


【個体】アクア

【レベル】Lv12→15

【HP】267→289

【MP】39→43

【スキル】new休息

《戦いを忘れ、のんびり休息を取る事でHPMP1分1%回復》


【個体】青月

【レベル】Lv9→12

【HP】125→132

【MP】154→168

【スキル】new休息


【個体】シルス、リリム、カリス

【レベル】Lv5→9

【HP】149→161

【MP】266→292

【スキル】new休息》



おぉ、結構便利なスキルじゃないか?何もしないで居るって言う所が少し不便だけど、「ホーム」に帰らないとMP回復の手段が無かった俺達には画期的。


それにBOSSを倒して無くとも経験ptが手に入ったので、随分気が楽になった。時間にして15分位、体調が万全とまでは行かないけど良くなったし、そろそろ次の階層に行こう。



「次の階層は、すな‥‥‥じ?」



言った通り、21階層目の床は砂地。柔らかめの砂で、足を着ければ靴が2〜3cmは埋もれてしまう。周りを見渡すと、イメージ的に砂漠とオアシスな感じ。


然程暑くは無いし、オアシスの水は綺麗。皆を連れて避暑地みたいな真似事も出来るだろう。ただ、その横で繰り広げられて居る怪獣大戦争を見なかった振りが出来るならばの話。


こちらには気付いて居ない様子で、俺はどうした物かと頭を悩ます。方やマンティコアの劣化版、方やデカい蠍。



「どうした物か‥」



ちらり、隣の【眷族】さん。見なきゃ良かった、皆して殺る気満々に飛び出して行きそうだ。君達の殺る気スイッチはいつ、どうやって入るんだろうね。


腹を括って【収納】からフランベルク装備、どうにでもなーれ。


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