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1話、おいでませダンジョン


エブリスタにて完結して居る小説の転載です。あちらの小説仕様により、殆どぶつ切り更新です。



辺りは不気味な程に薄暗い。壁や天井、床は薄汚れ苔むした石畳で出来ている。


俺の名前は志津(しず)、年は23歳で短大を卒業してからは実家に戻らず、かと言ってやりたい事も見付からず適当に就職して暮らす、極々普通の一般市民‥だと思う。


ちょっとだけ普通じゃないのは山奥の集落育ちで、都会っ子には無いサバイバリティー精神が備わってる事ぐらいかな?まぁ、人口50人の内43人が60歳以上とか言う超高齢化過疎集落だった。生きる知恵を老人達は我先にと、集落唯一の子供だった俺へと教えた訳。


って、それはどうでも良いか‥。いつも通り適当に仕事を終わらせた俺は、帰り道で適当にコンビニ弁当を買って家路に着く。


だが、扉を閉めた瞬間に俺の意識は真っ黒に染まり、目を覚ますと突然見知らぬ石の部屋に倒れていた。当然俺は、状況が一ミリも掴めずパニックに陥った。でも仕方無い事だと笑って許して欲しい。


取り敢えず現状を把握しようと石に囲まれた部屋を出たんだが、廊下も同じく石造り。しかも暗がりからはプニプニとサッカーボール位の大きさがある、ゲームで良く見るスライムが出て来た時には本気で絶叫し、逃げ回った。


そのせいで元居た部屋に帰る事が出来なくなった。でも、そのお陰で色々な場所に同じ様な部屋がある事が分かる。中にはスライムが犇めいた部屋もあるが、宝箱が置いてある部屋もあった。



「‥‥木の棒。はぁ‥」



宝箱は部屋の中央に置かれて如何にも怪しく、罠ですよと言わんばかりだと思う。開けたらミミックで噛み付かれたり、爆発しないか不安になってくる。


代わり映えの無い石造りに囲まれ、食料も無くいつ死ぬかも知れない状況だし、と非常に興味が惹かれた。すると中には60cm程の握り易い木の棒が入って居て、取り出して手に取ってみても只の木の棒。スライムでも倒せってか?


そんな考えに溜め息を吐き、心の底から帰りたいと願った瞬間。唐突に頭の中に声が響く。



【スキル情報更新】

《条件を満たした為、指輪1を習得致しました。条件を満たした為、打撃1を習得致しました。条件を満たした為、帰還を習得致しました》

【スキル発動】

《スキル帰還が発動されました。ホームに帰還します》



「‥‥は?」



考える暇も無く視界が歪み、気付けば石に囲まれた部屋に居た。しかも内装が随分様変りしている。


苔むした石造りが綺麗さっぱりとして居るし、天井付近には硝子に入った光の様な物で照明になって居る。んで何もなかった出入り口には木製?の扉が付き、先程は全く目を向けて居なかった看板には「ホーム」と書き込まれて居た。



「どうなってんだ?誰か説明してくれよ‥」



【情報開示請求→許可】

《貴方の情報開示請求が許可されました。指輪スキルレベルに合った情報が開示されます。詳しくは指輪を‥‥‥》



「‥‥‥指輪?あ、あれ?いつの間に着けて‥?」



頭の中に聞こえる声に疑問を持ち、指に意識を向けるといつの間にか指輪がはまって居た。俺はこう言う装飾品はしないし、此処へ来た時にはして居なかった。不思議過ぎる。


取り敢えず、頭の中に響く声に従って指輪を操作しようと思う。俺が生きて行くには、これをどうにか覚えたりしないと駄目な気がするから。


綺麗な石の部分を触ると、映像の様な物が映し出される。例えるなら、スマホとかのタッチパネルみたいな?触る部分が様々な箇所にあるけど、俺が今使えるのは【お知らせnew】【簡易ステータス表示】【経験pt⇔交換】か‥。後は黒くなり、何のコマンドかすら分からない。


「【経験pt⇔交換】が凄く気になるけど後にして、newが書いてある【お知らせ】を見てみるか‥」



呟いて【お知らせnew】タッチしてみると、箇条書きされた情報がずらりと並んでいた。これなら分かり易くて良いな、えーと要点を纏めてみると‥‥。


【お知らせ】

・ここは迷宮ダンジョンと呼ばれる場所で、ダンジョンクリアを目指すも良し、何処かにあると言われている秘宝で元の世界に戻るも良し、運命を悲観して自害するも良し。‥‥それってどうよ?

・この部屋は俺が住んで良いらしい。魔物避けされて居て、敵対している魔物は入室不可らしい。

・指輪は俺の生命線。指輪が無ければ俺は何も出来ずに餓死。だが、指輪は外れない仕組みで無くす心配は無い様子。様々な事が出来る見たいだけど、指輪レベルってのが足りなくて教えて貰えなかった。

・後は色々細かかったので、追々語るとしよう。



「んじゃ、取り敢えず【簡易ステータス】でも‥」



【簡易ステータス】

【個体】志津、23歳、♂

【種族】(ヒューマン)

【経験pt】23pt

【スキル】指輪1、打撃1、帰還

【装備】量販店の服一式、宿り木の棒、指輪

【眷族】なし



「まぁ、うん」



こんな物だとは想像付いたさ。スキルはそのままの意味で、敢えて言うならスキル発動の原理とかを教えて欲しい所かな!ふと経験ptに23pt入って居る事が気になり、調べてみる。


‥‥‥ふむふむ、成る程な。


つまり【経験pt⇔交換】を使うには経験ptが必要で、スライムみたいな魔物を倒せば手に入る。23ptあったのはお試しの様な物で、年齢に合わせて付与された様だ。


【経験pt⇔交換】には俺が生きる為に必要な、生活必需品から部屋をリフォームする項目もあり、中には噴水やら溶岩等どうすれば良いのか分からない物まで項目リストに並んで居る。



「1日1食でも23日しか持たない、か‥。勇気を出してスライム倒すしか無いよな、初心者向けだから大丈夫だろ多分。‥となれば」



やるしか無いと覚悟をしても、俺の心臓は早鐘の様に脈を打っている。でも訳も分からずに死ぬのは嫌だから、こんな場所でもせめて寿命で死にたい。でも、帰れるなら日本に帰りたい切実に。


良し、とタッチパネルを操作して部屋の内装を変えようと画面を眺める。こうなったら悠々自適に暮らせる様に改装してやる!


【改装内訳】

6畳部屋→30畳部屋(5pt)

床、石→絨毯(1pt)

壁、石→木製(1pt)

ダブルベッド(2pt)

2人掛けテーブル(2pt)

室温自動調節機(2pt)

3点ユニット(2pt)

23pt−15pt=残り8pt


‥‥調子に乗って色々やっちゃった感が否めない。でも認証ボタンを押してしまったし、改装された新たな室内は中々な快適さを醸し出して居る。俺は料理が出来無いのでキッチンは無し。


あ、夕飯。なのでパネルから探すと、○○&サラダ&飲み物セットが1ptと良い感じなので頼む。



「明日からスライム狩りだな。ってか、反対に狩られない様に気を付け無いとな‥」



適当に頼んだ食事セットは、瞬間的にテーブルの上へと並べられて居た。しかもホカホカと美味しそうな湯気付き。先程の改装で俺は慣れたから慌てる事無く、椅子へと座る。


ぶつくさ文句を言いながら食事を食べていると、不意に壁へ立て掛けてある木の棒が気になる。なので、指輪へ詳細を求めてみた。



【宿り木の棒】

《装備すると自身の攻撃力が3up。何か小さな力が宿っている。無機生物に対して攻撃力+2up》



何か微妙だ。でも確か、スライムって無機生物だった様な気がするから少しだけラッキー‥かも?


「そいやっ!」



あの後フカフカなベッドで寝て起きた俺は、食事を済ませると唯一の武器である木の棒を手に取り石造りの廊下へと歩みを進めた。そして俺は今、スライムをひたすら叩き潰すと言う作業をして居る。


集団で襲われたら貧弱な俺は即死だろうから、一匹で居る所を殴り掛かる。俺の方がスライムの防御力より攻撃力が高い様で、一撃で倒せるのが良い感じ。まぁ、この木の棒には何かの力が宿って居るらしいからな。


そう言えば、木の棒に潰され倒されるとスライムはスゥッと消えてしまう。どんな原理なのか小一時間問い詰めたい、無理だけど。



「あぁ、そうだ。スライムの簡易ステータス表示、ついでに俺の簡易ステータスも」



【簡易ステータス】

【種族】無機生物(スライム)

【レベル】Lv1

【取得経験pt】2pt

【装備】なし

【スキル】なし


【簡易ステータス】

【個体】志津、23歳、♂

【種族】(ヒューマン)

【経験pt】22pt

【スキル】指輪1、打撃1、帰還

【装備】量販店の服一式、宿り木の棒、指輪

【眷族】なし



かなり時間が過ぎたかの様に思えたが、まだ8匹しか倒して無いのか‥。でも、これを続けて行けばどうにか人間らしい生活は出来そうだな、一応。


‥‥と言うのが2週間前の事。今は楽にスライムを倒せる様になり、多数と相対しても混乱せず対応出来る位には慣れたと思いたい。だが、慣れた頃が危ないのは分かってるので神経質位が丁度良い。


ほぼこのフロアは制覇したと言っても良いかも。でも次のフロアへ行く階段やら何やらが無く、どうした物かと少しばかり頭を悩ませて居る。



「んー‥?」



あれ?こんな場所合ったっけ?と疑問を持ちながら俺は首を捻る。行き止まりだった筈の場所には簡易な扉が付いた部屋があり、内心恐る恐るしながらも扉を開き入ってみる。


すると、その部屋の中は薄暗く中央には地面より若干盛り上がった場所に宝箱が一つポツンと置いてあり、スポットライトの様な光が当たっていた。



「レアアイテム、か?うーん、やっぱり怪しいけど開けてみるしか無いか‥」



孤独は人を多弁にさせる、と俺は思うんだ。最近俺は独り言が多過ぎで、やっぱりと言うべきか話し相手が居ないのは寂しいな。唯一喋るのは指輪だし、虚しい。


気合いを入れ直して宝箱の中身を確認してみると、その中には直径10cm位の淡く色付いた丸いガラス玉みたいな物が入って居た。


【お知らせnew】

《スライムを100匹討伐、階層内の何れかに階段が生成されます。レアアイテム【眷族(スライム)】を入手しました。特殊条件【宿り木の棒】を入手済み、それに伴い【眷族】が解放されました。指輪のスキルLvが2になりました、【眷族ステータス】【収納】の2項目が指輪に追加されました。打撃スキルLvが2になりました》



‥‥‥お知らせが多過ぎないか?まぁ、レアアイテムを手に入れるのが条件設定にされて居たなら仕方無い、妥当だとは思うけど。



「取り敢えず、帰ってから色々考えるか‥‥帰還」



【スキル発動】

《スキル帰還が発動されました。ホームに帰還します》



視界が歪み、あっと言う間に自分のホーム。少し三半規管を酔わせる時もあったけど、あれだけ使ってたら慣れるってヤツだな。スライムに囲まれた時、半泣きで逃げ帰ったのは良い思い出。


ベットに腰掛け指輪を触り、タッチパネルを呼び出すとnewの文字と【お知らせ】にあった通りの項目が追加されて居た。つまり‥。


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