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8話、太くて長く、凄く大きry


ぺちぺち、決して痛くは無いんだけど何かに頬を叩かれて居る感覚を感じた。くぁと欠伸をしながら伸び、目を開けると視界の中に青月、3姉妹が目に入る。



「おはよう青月、シルス、リリム、カリス。アクアも枕になってくれて有難う、良く寝れた」



挨拶し、今まで枕になってくれたアクアを撫でるとフルッと小さく震える。さて、ってあれ?シオが居ないけど何処に行ったんだ?俺の疑問に答えるかの様に、皆が同じ場所へ指を差す。


シオはベッドの下に落ちていた。凄い寝相だな、と言えば良いのかね。落ちても熟睡、お腹を上にして居るシオに笑いが込み上げる。



「良し、着替えて飯にするか。3姉妹もオヤツ食べる?」



皆をテーブルへ移動させ、指輪【収納】からスライムの核を取り出して3姉妹へ。3人でぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ姿に、スライムを見付けたらまたドロップさせて溜め込みたい。


アクアと青月にも何かしてあげたいが、食べ物とかは要らないしなぁ。そんな事を言っていたらピトッと寄り添われた。そんなんで良いの?


歯磨き、洗顔、着替えを済ませてテーブルへ。朝飯を食べる前には匂いに釣られたシオも起き出し、一緒に食べる。




「何時も通りだと思うけど、怪我しない様に頑張ろう。MP切れたら帰還し‥、あぁカリス、この2つに回復入れてくれるか?」



両手を合わせてご馳走様、食べ終わった食器類を消す。流石に食後直ぐ動くのは辛いので、お喋り。不意にそうだと思い出し【収納】から空の魔法石を取り出し頼む。


MP切れと不測の事態に備えて、だな。それが終わると魔法石を【収納】し、使った分のMPが回復するのを待って立ち上がる。


シオにお留守番を頼み、皆を引き連れて十六階層目。階段を上がる前から嫌な予感は犇々と伝わって来て居て、上がり切ると確信。



「真っ暗とか笑えない」



辺りは一切の光も許さない程、真っ暗な闇に包まれて居る。カリスの周囲を照らす魔法があるからまだ良いが、結構行動が制限されてしまうので探索にも時間が掛かりそうだ。


最近マッピングして無いよな、させない様にするのはダンジョン運営として基本何だろうか?往復するであろう道を何回も迷うのは頂けない‥。


とまぁ、のんびり事を構えて居ると何やら物音がした様子。3姉妹が身を寄せて震えてしまって居る。やっぱ、こんな真っ暗な階ならアレだよなぁ。


死霊系の魔物。死体やスケルトン、霊魂系、様々な物が居ると思う。それ等は生きて居ないのだから、明かりを必要としない。気配だけで生きて居る者を襲う、生者への猛襲。


からからからん。何か重い物を引き摺る様な鈍い音が、辺りに反響する。最初は小さく、どんどん近付くかの様に音は大きく。


それがカリスの光魔法の範囲内に入りやはり死霊系の魔物だと、俺は指輪【収納】からフランベルクを取り出し構えた。



「シルス、リリム、カリス、怖い所申し訳無いけど魔法で支援宜しくな。スケルトン、簡易ステータス標示」


【簡易ステータス】

【種族】(スケルトン)

【レベル】Lv17

【HP】387/387

【MP】0/0

【取得経験pt】21pt

【装備】鉄の剣、木の盾、革の鎧

【スキル】斬撃1、盾2、力任せ、生者への渇望

《死して尚、生にしがみつく白骨死体。生者へ見境無く攻撃する事から、厄介な相手だと位置付けされて居る》



新しくカリスが光の攻撃魔法を覚えたらしく、それが凄く有効で助かる。だけど俺への攻撃が激しく、受け止めるだけで精一杯な戦闘になった。スケルトンに囲まれる前には次の階層に行きたい。



何度かスケルトンに会ったが、6対1なら少し手こずるけど勝てる。頻繁にターゲットされるのが俺なら尚更、俺とアクアで攻撃を防いでる間に他の4人が敵を攻撃すれば良い。



「カリス、アクアに回復頼む」



然程広くなかった為、簡単に次への階段が見付かる。上がる前に指輪で皆のステータスを確認すると、アクアのHPが減って居たのでカリスに頼む。MPは‥、全く問題無し。


回復を見届け、次の十七階層へ。いつもと同じく石造りのダンジョン、マッピングをするのは諦めた。こうなりゃダーッと行ってpt貯めて「ホーム」移転だ。



「お、久々の宝箱」



敵も居らず、下の階と比べ物にならない程のんびり進んで居ると、行き止まりの横に部屋が伸び、部屋の中には久し振りと言っても良い宝箱が見えた。


中身は何が入って居るのか、嬉々とした表情になりながら宝箱へ手を伸ばす俺。前は罠を気にして居たけれど、全然そんな感じが無かったからそりゃあもう無防備に。


結果、罠に掛かりましたー。カチッて音に気付くも既に遅く、続いて後ろからドサドサッ、と大量に何かが落ちてくる音が聞こえる。



「ふ、振り向きたく無い‥」



低く呂律の回らない唸り声、距離があっても漂って来る饐えた臭い。ずりずり、ずりずり、と重い身体を引き摺りながら生者を死者側へ引き込もうと歩む音。


余り得意じゃ無いんだよな。某ゲームは友人のプレイを横から見てるだけで、やらなかったし。でも、そうも言って居られないか。



【簡易ステータス】

【種族】(ゾンビ)

【レベル】Lv1〜15

【HP】32〜361

【MP】0/0

【取得経験pt】1〜16pt

【装備】ボロ服一式

【スキル】噛み付き、引っ掻き、生者への渇望、無痛

《黒魔術に死体を使った結果がこれだよ!無痛なので怯まず攻撃して来る死体。火属性が有効》


「う、直視し難い光景。けど死ぬ訳にはいかない、頑張ろうっぷ」



覚悟を決めて振り返り、取り敢えず最初はステータスの確認。火属性が良いならフランベルクからヒートソードに持ち変えて‥、やっぱり普通の剣は重いな。


女の子である3姉妹も真剣な表情をして対峙して居ると言うのに、俺は最後の最後まで決まらん。でも吐いたりしないよ、本当。



「どっ、せいっ!」



背後を取られたりし無い様に個々で戦う。3姉妹はアクア、青月、俺の補助をやって貰ってるけど。


気合いを入れ、ヒートソードを両手で持ち振り抜く。避けると言う動作をし無いゾンビ、なので重さに振り回され気味の俺でも簡単に剣が当たる。



「首、刎ねても生きてるっ、とか‥、成仏、してくれっ!」



ヒートソードで斬ったら肉が焼けた様な、腐乱が進んだ様な何とも言えない臭いが饐えた臭いと混じり、俺は顔を歪める。血とかは出無いのにこんな所は本格嗜好かい!悪趣味な。


HPを削り切らないと消えないので、最後の最後までゾンビは此方を殺しに来る。アクアも青月も忙しなく動き、3姉妹も詠唱しっぱなしだ。


何度か精霊の舞で範囲魔法を発動して貰い、漸く綺麗さっぱり倒し終わる。HPもMPもまだ余裕があるって言うのに何この疲労感、半端無いっす。



「と、取り敢えず、廊下に出よう。臭いが‥‥」



ヒートソードを指輪に【収納】し、皆を連れて廊下へ出て壁に背を預け座る。漸く息が出来る気分。因みに宝箱の中身は空、盗賊が良く持ってる罠解除のスキルが切実に欲しくなる出来事だな。


んで、これからどうするか皆で作戦会議。精神的にキツかったりしたが、これ位で参ってたら先へ進めない。少し休憩を取り、探索開始する事に決定。



「皆Lv1上がってるな」



探索開始する前に指輪を弄り【お知らせnew】を開く、アレだけ倒して何も無かったらちょっと残念だよな。あぁ、でもアイテムドロップしなかったか。



【お知らせnew】

《タイプ3へ移行致します。

【個体】アクア

【レベル】Lv11→12

【HP】258→267

【MP】36→39


【個体】青月

【レベル】Lv8→9

【HP】121→125

【MP】148→154


【個体】シルス、リリム、カリス

【レベル】Lv4→5

【HP】143→149

【MP】251→266》



俺的に、文字だけよりは結構分かり易くなった感じがする。パネルを閉じて立ち上がり、皆も十分に休息出来た様で、今から探索。


1匹見付けたら30匹居ると思え。そんな感じで無限に思える程わらわら出て来るゾンビを時には倒し、時には全力でスルーして漸く見付けた階段を一目散に上る。


続いては十八階層目。ここは鬱蒼と暗色の木々が生い茂る森で、明らかに何か出て来ます!って雰囲気を醸し出して居た。



「骨の次はゾンビ、ゾンビの次は‥‥幽霊かっ!」



ゆるり、目の前を横切って行った半透明の霊魂、人の形をして居なくて幸いだ。



霊魂は近寄って来るも決して攻撃はして来ず、所々墓のオブジェクトと相俟って余計に不気味さを増して、3姉妹が俺の上着の中にinしてしまった。



【簡易ステータス】

【種族】死霊(ウィスプ)

【レベル】Lv1〜5

【HP】1〜5

【MP】0/0

【取得経験pt】2〜6pt

【装備】なし

【スキル】物理無効、属性軽減、死者の指先

《死せる霊の集合体。霊体の為、物理無効属性軽減等のスキルを持つ厄介な相手》



先ずはステータスを見て、結構厄介な相手だと分かる。物理無効か、ぽつり小さく呟けば物理攻撃しか出来ないアクアがペタンコになって落ち込んだ。



「痛っ‥、何だ?」



そんなアクアを元気付け、歩いて居ると不意に冷たい感覚と同時に痛みが走る。手の甲に軽い火傷の様な傷が出来て居て、俺は首を捻り悩む。


まぁ、数が増えてきたウィスプのせい何だろうけど。見慣れないスキル死者の指先、多分これが俺の傷の原因かね。丁度顔を覗かせたカリスに治して貰う。



「さっさと抜けるに限るな」



避けながら階段を探すのは骨が折れ、見付け出す頃には全身汗だくに。倒しても旨味が無いし、流石に不気味過ぎて丹念に探索する気分にならん。




「そう言えばすんなり此処まで来てるけど、何か‥、いや、フラグ建築になりそうだから止めよう」



階段上がって十九階層目。ふと思い付いた事に嫌な予感が犇々と伝わり、それを振り払う様に頭を振る。この階層は下と代わり映えが無く、慣れて来たらしい3姉妹も外に出て来た。



【簡易ステータス】

【種族】死霊(ゴースト)

【レベル】Lv10〜15

【HP】10〜15

【MP】0/0

【取得経験pt】4〜8pt

【装備】なし

【スキル】物理無効、属性軽減、光忌避、死者の指先、精神汚染

《亡き魔物達の魂が持つ怨念が集まり、具現化。光属性に極力弱く、他属性には耐性がある》



ふむ、魔物は変わったか。カリスが居るから怖く無いけど、物理攻撃しか持ち合わせて居なかったらと思うと逃げるしか無いんだろう。霊体は遮蔽物関係無しだし、逃げ切れるかな。


ゴーストのHPは低く、カリスの光魔法1撃。青月、シルス、リリムでも2撃で倒せるから無駄に消耗戦せずに助かる。



「次はボスかなー‥」



なのでサクサク探索が進められ、次の階段を見付けられた。死霊系魔物は何も落としちゃくれないんだな、まぁ持ってたらそれはそれで怖いけど。


そんなこんなで二十階層目。4、5、いや6ヶ月だったかな?短期間でこんなに来れたのは【眷族】達のお陰、本当感謝しないと。


ここは七階層目を彷彿とさせる迷路構造?でもこちらの通路は人が4〜5人寝そべる事が出来そうな位に広く取ってある。いつも通りの広間だと高を括って居た俺は、出鼻を挫かれた気分。



「楽が出来るなら、それに越した事は無いんだけどね」



経験ptが移転に必要なptの半分も貯まって居ない事は分かってる。だけど楽したくなっちゃうのは人間の性って奴で、ぼやきながら歩き出す。


真っ直ぐ行って、十字路を曲がって、行き止まりに差し掛かれば引き返して違う通路を選ぶ。全容が分からないのは何時も通りだが、細かく道が別れ頭の中がこんがらがりそうだ。


がらん、がららん、がらん。



「またスケルトン‥、っ!」



不意に、スケルトンが剣を引き摺って居た時の様に重くて鈍い音が聞こえて来る。俺は多分、ボスはスケルトンの上位種辺りだろうと楽観的に音が聞こえた方へ視線を向ける。


俺の腕程の太い柄、全長3メートルはあろう長い刀身。凄く大きくて立派な剣を持つ、決して生きて居ない血色の人間。


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